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たかが結婚式、されど結婚式

「どこで結婚式あげたい?」と聞くと、「砂漠」って答えが返ってきた。砂漠はなかなか難しいけど、砂丘なら行ける!

新郎から電話がかかってきたのは、確か、お正月休みだったように記憶している。だいぶ前のことなので、間違っているかもしれません。「鳥取砂丘で結婚式ってできますか?」っていう電話だった。「挙げることはできますが、国立公園なので、許可がいると思うんです。お休みが明けたら確認してみます」とお応えして、実際、休み明け早々に、関係各所に連絡してみた。環境省、鳥取県、鳥取市。結果はというと、個人のためには許可は出せないというものだった。

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以前、「世界の中心で愛を叫ぶ」を意識して、砂丘の活性化の一環で、鳥取砂丘を愛の聖地にしようということで、鳥取砂丘の中心で愛を叫ぶ」というイベントの実行委員長をしていたので、実際には、イベントなら、第二種特別保護地区(中で何区、手前側)であれば、実際に砂丘でのキリスト教式を実行したことはあった。砂丘の中心は、第一種特別保護地区といって、富士山の頂上なみの特区だ。

お問い合わせがあった時、実は、特区だけど、あそこならちょうどいい、結婚式にピッタリの場所だと思う場所がすでにイメージできていた。施工側はちょっと大変だけど、砂丘の真ん中での結婚式、それはいいアイディアだと思ったし、このたび簡単に許可がもらえたら、多くの方に提案することができるとウキッてしたのですが、実際は、そんな簡単ではなかった。

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確か、スマップの慎吾くんが主人公の西遊記のロケもNGだったので、どうかなとは思っていましたが、予感は悪い方に当たった。砂丘の結婚式といえば、都市伝説で、松田優作と熊谷真実が砂丘で結婚式をしたとか、樹木希林と内田裕也も砂丘で挙げたとか、耳にしたことがあるが、もちろん本当かどうかは知らない。

ただ、以前の経験から、オルガン一つ弾くにしても、その音の響き方、雄大な砂丘の向こうに、砂丘と、遥かに日本海を臨みながらの結婚式は、素足にサラサラ気持ちいい砂の感覚と共に、本当に素晴らしいものだったことは記憶に残っていた。

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「立ったままおやりになったらどうですか?」

と、半ば、せせら笑うような感じで、担当のどなたかが言われたので、設置物の許可さえ取らなければ、

たとえドレスやタキシードを着ていても、一般の観光局と同じなので、確かにそうだと、ピンと来て、

早々に、「ありがとうございました」とその場をさっさと後にした。

子供を二人連れて関東方面から電車と飛行機を乗り継いで来られるのは、さぞ、大変だったことでしょう。おまけに、鳥取に来られる前日に、子供さんが熱を出されたとか、あとで伺った。ご苦労様でした。空港まで車で迎えに行き、まずは衣装を選んだ。

衣装は、彼は、とにかく彼女の一番好きなものを着せたいと心から願っていたから、イタリアのオートクチュールを選ばれると、必然的に新郎もイタリアのタキシードになった。ヘアメイク打ち合わせや、簡単に段取りを確認して、明日に備えた。

心配事がいくつかあった。

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今年は、コロナの影響で全ての鳥取砂丘の駐車場を封鎖する羽目になってしまって、本当に残念だが、5月の連休というと、渋滞でとってもとっても混雑する鳥取砂丘、人が多くないだろうか?それに、前日、お会いした、新郎のお父様が、なぜ鳥取砂丘みたいなところまで、九州から、わざわざ来なければならないのかと、決して、ご機嫌がいいとは言えない状況だったのだ。

新婦のご両親の列席が叶わないというだけでも、気分は十分にブルーなはず。心中は穏やかではなかったのでしょうね、わかる!けど、辛いって感じでした。

子供ができてからの結婚を当時、快しと思っておられなかった新婦のご両親が結婚に反対だったので、

列席者は、新郎両親と兄弟の4人に、二人の子供たちのみだった

結婚式当日は、晴れたが、しかし、また、いつになく、砂丘は強風だった。設置物には許可がいるので、挙式台は、設置していないと心で言い訳し、台を持っているということで、スタッフに支えてもらい、スピーカーとの一体型のアンプも、持っているという体裁で、スタッフが手を添えているようにした。音楽がなくて寂しくないようにと、携帯用のピアノを膝の上で弾いてもらいながら、聖歌隊と音楽隊を編成して、全て生演奏で行った。

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お嬢ちゃんはまだ小さかったので、二人が抱っこしたまま挙式を行うことになった。

スタッフ総勢22名全員が、円陣を組んで、二人を取り囲むようにして、結婚式は行われた。事前に渋滞を避ける時間帯に、新郎のご家族や、新郎新婦を無事に砂丘の家レイガーデンにお連れすることに成功したし、リハーサルも無事に済んだ。

秘密の小道を進んで砂丘に向かうと、私たちの秘密の場所は、案の定、観光客の姿はなく、そこだけ劇場のようにフラットになっていて、風紋も美しかった。

スタッフ全員が結婚の承認とな理、結婚証明書にサインした。

挙式の途中で、イタリアのドレスと共のベールが強風で、ビリビリに破れたが、式は滞りなく終わり、新郎のご両親と、ご兄弟は、電車の時間があるからということで、すぐお帰りなり、新郎新婦はお子様と二人で、砂丘での写真撮影の後、着替えてから、レイガーデンのカフェで、ランチを食べてお帰りになった。

新郎のお父様は、リハーサルから泣いておられましたが、砂丘での挙式の最中に大粒の涙を流し、鳥取砂丘のファンになりましたと言われた。

今までは、メインは披露宴で、式は、どちらかというと、添え物のように思っていましたが、本当に感動的で今でも忘れることのできない挙式の一つだ後日、二人に結婚式が終わった後の印象を尋ねるとこんな答えが返ってきた。

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新郎は「家族が和やかになりました」と言い、新婦は、「家族が一つになりました」と。

このニュアンスの違いに、思わず、笑ってしましましたが、二人の和やかな生活が垣間見れたようで、砂丘での結婚式がお手伝いできて本当に良かったと思う。そうか、挙式って、家族が一つになるために行うものなんだ。挙式の目的って、本当はそうかもしれないと、改めて思ったことでした。

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結婚式は、たかが結婚式、されど結婚式なんだとね。

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