夫は家の中でカニ歩きをしています⑤ -私の家族の反応
彼の実家で別れ話まで切り出したにも関わらず、どうにか次の旅程に進むことになった私たち。
向かうは日本、私の実家です。今度は私のフィールドになるので、ちょっとは気が楽になると思ったのですが…。
〈このシリーズでは、強迫性障害を一人でも多くの方に知ってもらうべく、夫との日々について語っています。過去記事をお読みでない方はスタートのところから読んでいただけるととっても嬉しいです。〉
私の家族
私の両親は礼儀や日本文化的な立ち振る舞い、他の人にどう見られるか、郷に入っては郷に従え、といったことを重んじているタイプです。
さらに言えば、自分たちだけがそれをしていれば満足するのではなく、相手にも求めるタイプです。
基本的に私の両親は私たちの交際・結婚に反対していました。アメリカ人だから、というわけではないのですが、こちらの不手際などちょっといろいろありまして。
それでも少しずつ軟化して、私の決めた人ならしょうがないか、というところにまで来ていました。だからこそ、実家訪問の旅を決めたわけです。
文化的な誤解
結果から言うと、私の両親を再度、しかも初期よりも強く反対させる結果になってしまいました。それには主に文化的な誤解と強迫症状の影響という二つの理由があったんじゃないかと思っています。
失敗したなぁ、と思うのは、彼に「私の両親が立ち振る舞いにうるさい人である」というのをわかってもらえるように説明していなかったこと、また、それに基づいて求められる、日本的な立ち振る舞いについて正確に教えていなかったことです。
彼は日本語を6割方話せるし、日本のドラマも見てるし、ネット上で日本についての記事も読んでるし、わかってるでしょ、と思っちゃったんですよね。
でも、人間って自分の興味のあるものやその時に理解できるものしか触ろうとしないし、吸収しない生き物だということを忘れていました。
一般的な生活や旅行とかだったら付け焼き刃的な理解やできるところまででも全然問題ないですし、ちょっと失敗しちゃったりしてもただの経験です。
だけど、相手に気に入られなければならない状況では、自分だけの理解じゃなくて、現地人の客観的な意見が絶対に必要です。私はそれを軽視していました。
ちょっと抽象的でごめんなさい。ここら辺の話はまた国際恋愛コラムかなんかでやろうと思います。
とにかく、彼が文化を誤解していたためにしてしまった言動が私の両親をがっかり+イライラさせたことは間違いありません。
強迫症状が目立つ
彼が示す強迫症状は、日本の中では異質なものに見えます。”みんなと同じ”行動が”みんなと同じ”スピード感でできないからです。
今回、彼は私と一緒に実家に泊ったので、洗濯の仕方、トイレの使い方、シャワーの浴び方など、”普通”とはかなり違う彼なりのルールが観察しやすい環境でした。
客観的に見たときに、この人と生活するのは大変だろうなぁ、とすぐにわかります。私の両親が「私のことを心配して」再反対をするのには十分な材料でした。
婚約は振出しに戻る
上記の二つの理由だけがすべてではありません。根本的に私の両親が精神的な障害を軽視、もうちょっと強い言い方をすれば見下していたのも理由の一つだと思いますし、私と両親との関係、私と彼との間に起ったこと、友達との間に起ったこと、彼が私に感じたこと、などなど他にも小さな要因はたくさんあります。
その中でも、今まで大切に育ててくれた両親が私のためを思って反対しているというのは私にとってとても大きな要因でした。確かに彼の言動には違和感を感じます。
文化的な違いに加えて、強迫症状のためにおかしなことになっている生活の仕方を彼の隣で一生見続けることができるでしょうか?
アメリカという相手の言動に寛容な国に住んで、彼の友達や仕事仲間はそれを受け入れることができたとしても、生活を共にするのは私です。「一時的だから」や「他人だから」で済ませることはできません。
対応できるでしょうか。わかりませんでした。「はい」「絶対大丈夫」と言い切る自信がありませんでした。
それでも、彼本体のことは大好きだし、一緒にいたい。彼の素敵なところもたくさん知っていました。彼はとても親切で、寛容な人です。忍耐強く、穏やかな人です。知識にあふれ、ユーモアのセンスがある人です。私が人生の中で初めて自分のすべてを開けることのできる人です。
本当にどうしたらいいのかわかりませんでした。
結果として私と両親の間には大きな亀裂が入り、私と彼との土台はグラグラに揺れ、婚約は振出しに戻りました。