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夫は家の中でカニ歩きをしています④-喧嘩の理由

彼が”普通”とは少し違うことに気が付いたけど、彼をわかってあげられる私、彼に受け入れられる私、という脳内お花畑に浸って突っ走っていたあの頃。

付き合って約3年経って、結婚する方向に進もうか、と2人の中では動き始めていました。結婚するんだったら、まだ会ってない彼のご両親やお兄さん夫婦にも会ってみたいし、彼にもちゃんとうちの家族に挨拶してほしい。

ということで、ちょっと長めのお休みを作って、二人で彼の実家と私の実家を訪ねる旅を計画しました。

相手のふるさとを知るって楽しいイベントだと思っていたし、私の中では、ここでじっくり話をして、今後について決める予定だったんですけど…

このシリーズでは、強迫性障害を一人でも多くの方に知ってもらうべく、夫との日々について語っています。過去記事をお読みでない方はぜひ読んでいただけると嬉しいです。

彼のご家族

実は、彼、この計画にもともと賛成ではなかったんです。

彼はアメリカの西海岸に住んでいますが、ご両親は東寄りに住んでいます。彼と両親は頻繁に連絡を取っていましたし、仲が悪いわけではありません。でも、実際にご両親と長い時間を過ごすのは約15年前に家を出て以来。

さらに、彼の家族はそれぞれ各種不安障害をもっています。特に、お兄さんはルールに対する強迫性障害なので、こうあるべき!ということにかなり厳しい。

だから、彼は家族といると、自由な動きが取れなくなることがわかっていたんですね。

私としては彼の家族が保守的な人たちとは聞いていたけれど、お兄さんの奥さんは柔らかい人だと聞いていたし、彼には地元の友達も他にいるはずだし、どうにかなるでしょう、と思っていたんです。

で、フタを開けてみたら

本当に身動きが取れない。
・冬の時期に行ってしまったので、外は寒すぎ+足元が悪すぎてちょっと二人で散歩に、なんて行けない。
・仕事をしていないので足になってもらえる、と期待していたお兄さんの奥さんはひどい風邪をこじらせてしまって、一緒に行動できない。
・彼の地元の友達も私を泊めてくれた夫婦しか頼れるところがない。
というわけで、旅程の約2週間のほとんどを彼の実家の中で過ごすことに。

ご両親はとてもやさしくて、人当たりが良く、お話ししやすい方たちです。お兄さんは少し不思議な人だけど、地元のおいしいアイスクリームを買ってきてくれたりして本当に優しい。お兄さんの奥さんもよくお兄さんを支えておられることがわかりました。

それでも、私は文化も違いますし、英語も通じたり通じなかったりですし、緊張しますし、気も使います。

彼の方にも強迫性障害の部分で大きな刺激がありました。

 彼と私が来て嬉しくなっちゃったお父さんが、私たちを親戚中に連れて回ったんです。病床におられる方とか、退院したばかりの方も何人かいらっしゃいました。彼は、親戚の家で触れたであろう細菌におびえて半日ソファに寝そべってダウン。放置される私。
 確かにダウンタイムは強迫性障害の症状から回復するために仕方がないんだけど、放置した私へのケアはなかったんですよね。「待っててくれてありがとう」や「待たせてごめんね」がなかった。とても悲しかったです。
 ある時、友達夫婦の提案で、彼らの友達とボーリングをしよう、と彼と私を連れ出してくれました。
 彼は私が行きたいなら行く、とついてきましたが、そこのタバコのにおいに非常に敏感に反応し、文句を言い続け、ボウリングの玉も誰が指を突っ込んだかわからないものには触りたくない、とゲームをせず、そこら辺をふらふらしていました。
 「じゃあ、来るなよ!みんなのテンション下げるなよ!」という思いでいっぱいになり、恥ずかしながら怒りに震えて彼の友達の前で泣いてしまいました。(このセリフは吐いてません。ただただ悔し泣きをしただけです。)

でも、この悲しさを伝えて話し合う2人の時間もなかったんですよね。常に周りにご両親がいるので、目の前で喧嘩とかできない…。

彼と2人で話す時間がない。彼は私がいるのに自分のことにばっかり夢中に見える。ご両親との会話のネタもなくなってきた。日光が入らず、1日中暗い電気で過ごすアメリカの家にも嫌気がさす。

そろそろ限界です。

出立の前日に怒り爆発

ご両親は近くにおられましたが、こうなったらリビングで怒り爆発です。とはいっても彼の実家で声を荒げるわけにはいかなかったので、こういう理由で苦しいんです、という内容をメールに打ち込んで二人で静かに読むという方法を取りました(笑)

このまま別れたい、と伝えました。そのくらい苦しかったんです。

当時の怒り、まだ鮮明に覚えています。

怒りの原因を分析

強迫性障害以外の部分でも、私がとても悲しい、と感じた彼の行動もありました。普通のカップルですから。でも、今回から強迫性障害が私の行動に影響するようになり、喧嘩の理由の一つになったんです。

特に悲しかったことは、周りのみんなと一緒のレベルで物事を楽しめなかったことです。ご飯を食べに行くにしても、ちょっと遠出するにしても、彼の対応や行動で自分のできることが制限されることや、恥ずかしい思いをすることがあったので、気をまわしてその状況を避けるようにする。結果、非常に疲れる。

強迫性障害が発症すれば、みんなと同じイベントには二人で参加できない。一人ぽつんと参加はさみしい。二人でどうにか参加できても彼の様子をうかがいながら、心配しながら参加するので、楽しくない。

それに、彼と一緒にいると文句を聞く機会が増えるんですよ。あれ、誰かがあんな風に触った、いやだ。とか、あの部屋には届いたばかりの荷物があるから入りたくない、とか、そこごみ箱があるから気を付けて、とか。

彼はこれを誰彼構わずするわけじゃないんです。本当に心を開いた人、一緒に行動したい人、つまり私にだけ。でも正直、こんな特別扱いはいらんのです。イライラを増幅するだけです。

そして、これは個人的な見解ですが、観察していると、強迫性障害は、自分の保身をまず確保する、はたから見れば自己中心的な行動を取る傾向を高めるんです。

つまり、周りの状況がどうであれ、自分が汚れないことが先にくるので、周りの人を放置する傾向があるんです。

さらに、"汚染"された現場を離れた後もずっと強迫的に"汚れ"について考え続けるので、放置した人へのアフターケアまで気が回らないんです。そうしたいわけではないみたいなんですけどね、結果そうなってしまうので、自己中に見えるんです。

喧嘩の結末は、

別れませんでした。

正直どうやってこの喧嘩を収めたか、記録が残ってないし、覚えてもないです。

たぶん、彼の嫌だ、別れたくない、申し訳なかった、ハグしよう、に押されて、脳内お花畑が手伝ったんだと思います。ちょろいなぁ、私。

最初から彼の言うことを聞いて、さらっとご両親に挨拶してシアトルに戻ってきて楽しくデートすればよかったんですけどね、勝手に理想形を作って意固地になったわたしも悪い。

というわけで、このまま二人で日本の私の両親のもとへ飛び立ちます。びゅ~ん!

(2021/4/9 大幅修正しました。)

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