夫は家の中でカニ歩きをしています⑥ -次の一歩はどちらに進む?
婚約をオフィシャルにしようとした両家実家訪問の旅で、逆に婚約が白紙に戻るという事態に陥った私たち。
まずは、方向性を決めていかないといけません。立て直すのか、更地にするのか。一緒に生きていくための努力をするか、すべてを放り出すか。大きな年になりました。
<このシリーズでは、強迫性障害のリアルを一人でも多くの方に知ってもらうべく、夫との日々について語っています。過去記事をお読みでない方は連載スタートの記事から読んでいただけるととっても嬉しいです。>
私の本心?
もう正直ね、かなり面倒くさくなっていました。
私は0-100な考え方で生きてきたところがあるので、物事を極端に考えがちです。いつものようにバッサリといくなら、別れた方が楽でした。別れてしまえば、私は両親とも仲良くできて、彼を+アルファで精神的に支える必要もないのです。
彼の異質さをカバーするために気を遣うことのない人生を歩めるし、「あおいちゃん、彼を支えてよく頑張ってるね」という励ましなのか、同情なのか、憐みなのかよくわからない言葉をかけられずに済みます。
さらに言えば、言語の違いもなく、意思の疎通がもう少し簡単にできて、もっと顔も体型もタイプな(笑)新しい彼氏が見つかるかもしれないんです。
それはそれで一つの判断だったと思います。
一方で、彼と過ごしてきた時間もあるわけです。
初めてできた親友のような大切な人を切り離していいんだろうか。強迫性障害は彼の一部ではあるけれど、彼本体ではないし、治らない病気でもない。両親は大切だけど、私の人生は私が責任を持たなければいけない。
ただの情だったかもしれないし、哀れみだったのかもしれないし、気の迷いだったのかもしれないです。
でも、やっぱり彼と一緒にいる人生が欲しいと思いました。
別れるって言ったり、一緒に生きていきたい、って言ったり、まぁ面倒な女です(笑)。でも女ってこんなもん、じゃないですか?
ありがたいことに彼も、立て直したい、と思ってくれていました。
じゃあ、そのためにはどうしたらいいのか。私と両親という問題もありましたが、私と彼は強迫性障害への向き合い方を決めないと、です。
強迫性障害を治すための努力を見せてほしい
もちろん、強迫性障害は治ります。でも、薬を飲んでしっかり休めばOK、というレベルではありません。簡単じゃないんです。
治すためには”治療”が必要です。
彼は強迫性障害を持っていることを認めてはいましたが、完全に自己流で対応していました。
彼は、オタク気質なので、気になったことはとことん調べ上げるんです。強迫性障害についての知識は専門家レベルにありますし、どんな治療が効果的なのかをすでに知っています。そして、自分がやってみる価値がある、と思ったものには自分なりに手を出していました。
でも、それって、わたしからしたら、ただただ自分の好き嫌いで治療法を判断しているようにしか思えず、先が見えなかったんです。今もちょっとそう思っています。
確かに、精神的な不安に対処する際に、本人が納得している治療法であることは非常に重要な要素です。周りが強制してもいい結果は出ませんから。
私の気がかりは、当時の彼は一度も自分の強迫性障害を専門家に診てもらっていなかったことでした。「結果的に自己流になることは構わないけれど、一度も客観的に専門家に見てもらったことがないのは適切な対応ではない」と考えていました。これは今も変わりません。
もしかすると、彼の問題は強迫性障害だけではないかも知れないとも思っていました。強いこだわりや対人関係のスキルなどを見て、ASDなどスペクトラム系も兼ね備えているのではないかと疑っていたんです。
また、彼が勝手に選択した治療法が彼にとって適切なものかどうかは自己判断ではわかりません。それを適切に実践できているのかを指導するのが専門家の役割だと私は信じています。
ついでに言うと、人って目に見えるもので判断しやすいので、病院に行く、とかカウンセリングを受ける、とかいうわかりやすい行動をしてくれていれば、私の安心につながるとも思ったんですよね。
それで、彼には専門家にかかってもらうようにお願いし、彼は承諾してくれました。
私もカウンセリングに通い始めた
私と親との関係はまた別の非常に大きな要素でした。話が逸れてしまうので、このシリーズで詳しくは書きませんが、両親と自分との間にある問題に対処するために私もカウンセリングに通い始めました。彼も、それはとてもいいと思う、と積極的に勧めてくれました。
今でもカウンセリングは続けています。
カウンセリングは、私が私になる上で、私が彼を支える上で、彼が私を支える上で、とても重要な役割を果たしてきたと思います。
もちろん、自分の課題に取り組むのが主な目的ですが、彼を支えるのが苦しいときにはカウンセリングで吐き出しています。知識とともにわかってくれる人がいるのは大きいです。
ありきたりですが、苦しいときは頼れるものを頼った方がいいんです。そして、頼れるものを事前に準備しておくのも大切だと思います。苦しいときには頼るものを探すエネルギーもありませんから。