見出し画像

800字日記/20221202fri/146「自分の闇を変換する作業」

目覚める。七時。体調がわるくまた寝る。途中、ネコにいく度か叩かれたりするが、起きられず。バイブ音で携帯を手にとる。上諏訪のM不動産からだ。自分の事情を斯く斯く然々とはなす。煙たがられる。この問題は九州での賃貸契約ではまったく問題なかったが。これって偏見と差別だよね。と思って凹む。ぼくの問題か提出する書類の問題か、あるいは谷あいや盆地や部落などの閉鎖的なものなのか? 長野の県民性か? ここで考えても仕方がない。この問題を描くならば現地に実際に住まなければ書けない。中上健次が「路地」と路地に生きる人々を鮮やかに描けたのは自らが被差別部落出身でそこに住んでいたからだ。

昼の時報で起きる。

ふゆ晴れだ。ひと月ぶりにネコのトイレそうじをする。ネコは部屋をはしゃぎまわる。ソファに腰をおろしてパソコンを開ける。また不動産屋からのメールの山だ。執筆をしたいので後回しにする。ネコが遊んでくれと叫ぶように鳴く。無視をすると膝にあがる。

九五○二五字。四百字詰め原稿用紙換算で二八七枚。九月に書き始めて三ヶ月で序章(上陸前)の直前だ。のこり九章(とエピローグ)、ピッチをあげてまず初稿を上げねば。

村上春樹さんは半年で「海辺のカフカ」の第一稿が千八百枚(最終稿まで二年をかけているが、それは置いておき)。一回目の書き直しで矛盾を直し、食い違いを調整、ある部分を膨らませ削る作業、二回目の書き直しで風景描写などを細かく書きこむ。一読して分かりにくい部分をわかりやすく修正し、話の流れをより円滑にする。一服を入れて、三回目の書き直し。その後ひと月かふた月休んで作品を寝かせる。

これは日本の代表的な長編作家の水準としてぼくの頭に入れておく。その通りにはいかないのだから。

自分の経歴を売ろうか、ふと頭に過る。が押し留める。自分の内側でうごめく闇を、まったく別のフォーマットに変換せねば。やはり物語を書こう。筆を走らせる。
(796文字)



よろしければサポートおねがいします サポーターにはnoteにて還元をいたします