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詩と現実

夏の眠れぬ夜、私はベッドを這い回り、
心を覆い尽くす影に、もがき苦しんでいた。
私は言葉をかき集め、「詩」を書いてきたが、
時々、たちの悪い深淵が、私の時間を奪うのだ。

 詩と現実ーー「希望」も「深淵」も、
 私の言葉から生まれた元々一つのもの。
 詩と現実ーー「希望」と「深淵」を、
 伝えるための「自由」を生む私のルール。

汗が枕を濡らし、夜は深くなってゆく。
明日など見えない、私は死んでいるのかも。
シーツから抜け出し、私は眠るのをあきらめる。
1時間も経ってない、一生を過ごした気分なのに。

私は、『老人と海』を思い浮かべたーー
言葉の海に浮かぶ、スペンサー・トレイシーの舟。
老いた漁師は、釣った魚を持ち帰れないでいる。
釣り糸が私の指に食い込む。鎖のように重たい。

私は玄関を出て、暗闇の包む街を歩き出す。
人も車もなく、物音は私のナイキの靴底だけ。
公園まで、誰にも出くわさなかったらラッキーだ、
静かに朝が来るのを眺めながら、バスを待つんだ。

他人の主張に従うか、自分の言葉に賭けるか、
運命とは、定まっていない未来の中にある。
朝日が車道を照らす、西へか、東へか、
バスがドアを開け、私の決断を促す。

明け方の街は、車と2、3台すれ違うだけで、
静まり返えった景色が、窓に現れては消えていく。
高速道路の料金所に、私そっくりな職員がいて、
私のバスがどこへ向かうのか、見つめていた。

ーー気づくと、
私はぐちゃぐちゃになったベッドで目覚めた。
開けっ放しの窓から、日の光が流れ込んでいた。
私は感情に潰されつつ、「現実」を生きるのだが、
時々、たちの悪い希望が、私に時間を返すのだ。

 詩と現実ーー「希望」も「深淵」も、
 私の言葉から生まれた元々一つのもの。
 詩と現実ーー「希望」と「深淵」を、
 伝えるための「自由」を生む私のルール。

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