ひとりのピルグリム
1
一人のピルグリムが風船売りの少年に会った。
少年は、高貴な香水のような恋人について、
こう自慢する、「彼女は部屋を飾るんだ、
『信仰』でね」と。
一人のピルグリムは他人行儀な兄弟にも会った。
彼らは紛争地帯のカフェでお茶をし、
ゴミ漁りする父親の懐に施していたのだ、
「信仰」を。
彼の「巡礼」の旅は、地下鉄のトイレから、
灰皿工場の更衣室まで、あらゆる場所を巡る。
田舎の宿で騙され、都会の海で流され、
同情を引くような顔で切り抜けたこともあった。
彼は窓越しに、またはドア越しに、
あるいは壁の裏を、床の下を、
もしくはご婦人がいびきをかく寝室で、
「信仰」を探した。
2
ピルグリムは揺れる船で、水夫に会った。
場末のキャバクラで、ぶ厚い唇の娼婦にも会った。
痩せこけた尻をした踊り子にも会ったが、
誰も「信仰」など持っていなかった。
また、彼は大金を掴んだギャンブラーに会った。
浮気娘に貢ぐ、憐れなプレイボーイにも会った。
デザイナー志望の女子大生のくれたTシャツには、
「『信仰』って?」と書かれていた。
彼女の接着剤のような面影が、
彼の青いフードからハートを奪っていった。
「愛は時には天使に、時には悪魔になる」と、
彼女の丘の上の家から逃げ出す時、彼は叫んだ。
手品師のありふれた手品のタネのよう、
脚本家の描くタイタニックの沈没のよう、
映画評論家のパニック映画への辛口な批評のよう、
「信仰」とはーー。
3
猟犬が裏庭を掘り、骨を探すときも、
山猫が居間の柱を、爪で引っ掻く間も、
コヨーテが最初の石を投げ入れた後も、
一人のピルグリムは「信仰」を探した。
偽物の正義を振りかざす警官に捕まり、
毒入りケーキを作るパティシエに恨まれ、
湖畔でジェイソン・ボーヒーズに脅かされても、
彼は「信仰」を探すーー
『無垢』とは、子供であり、
自然の力で書かれた荒野の詩であり、
それは『先験的』で、『経験』を超えていて、
沈黙でしか語りえないもの。
それだからこそ、ポケットの中や、靴の中、
帽子の中や、タトゥーの中に、あるいは、
スープや、シャンプーの中にさえ、人は、
『信仰』を見い出さなければ、と。
4
ピルグリムは、詩の中で詩人に、
また、聖地へと向かう、同じ巡礼者との間に、
さらには、宝石を奪った略奪者にさえ、
「信仰」を見てとった。
彼が、もしもガンマンだったら銃を撃ち、
既婚者だったら妻の手を取り、
コメディアンだったらその舌を使い、
自らの「信仰」を語ることだろう。
さて、
彼が旅を始めたのは何百年前だったか?
彼の家は朽ち果て、雪のように消えた。
旅先で、これが最後の食事、これが最後の酒、
そう呟きながら、ついに、
考える時間はなくなっていってーー
一人のピルグリムが地図を丸めて片付けた。
長い旅路で、無口になった彼は時々考える、
これは罠師の仕掛けた罠だったのかとーー
「信仰」という名の。