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国道16号線の思い出に

彼女の青いジープが
よそ見しながら交差点に入ってくる。
絵の具の町まで歩く子供たちは、
綿菓子の脳みそを買いに行く。
デニーズで居眠りの老人が、
アホウドリの夢にうなされている間に、
彼女はハンドルを切り損ね、
野宿の詩人とぶつかったのだ。

足を痛めたランナーが、
静まり返ったゴールに帰ってきた。
ゴールに観客は一人もいない。
日没だけがゆっくりと深まっていく。
彼がボロボロの靴を脱ぎ、
満足した表情で汗を拭いたのは、
スタートから百年も経った後だった。
両親ですらすっかり忘れていた。

成長をやめてしまった町、そこは
酔っぱらいたちのレッドカーペット。
駆け出しのギャンブラーが、
良い兆候を見落とした不吉な椅子。
都内を追い出されたホステスは、
気弱な画家を運搬用の家畜に使い、
まだあどけない恋人たちの見上げる月は、
若鶏の唐揚げに似ていた。

今日も無数のトラックが、
この巨大な川を上っていく。
騒音と排気ガスがアスファルトを揺らし、
鉄の肝臓から新しい血を抜いていく。
マウンテンバイクが小川を泳ぎ、
受取人に小包を届けている頃、
主婦たちは釣った魚を持ってホテルに行き、
ミニバーで酔い潰れていた。

午後に仕事を抜け出して、
本に宿った女神に会いに行こう。
ひらめいたアイディアは一瞬で、
ボタンかけの隙間から出て行ってしまう。
失くしたら最後、
隅まで探しても見つかりはしない。
だから昼寝をするときでさえ、
用心してまぶたを閉じるのだ。

権力にしがみつくゾンビたちと、
通りにあふれる吸血鬼たち。
思い通りに行かない世界で善人たちが、
紙切れと一緒に命を捨ててゆく。
そしてすべての夢想家たちは、
自分の心臓の鼓動で眠れずにいる。
賢いうちにこんな町からは出て行けよ、
足のある一人の生きた人間として。

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