リトル・ボーイ・ファウンド
「『怒り』ーーそれは微笑みを浮かべ、
メタリックに輝くパープルの鎧を纏い、
一層激しくなる」
ジミ・ヘンドリックス
1
「さよならマテリアル・ワールド、
さよならミニーマウス。
44マグナムを手に、
ハリー・キャラハンがやって来て、
売人のアジトをメチャクチャにしていったっけ。
さよならマテリアル・ワールド、
さよならミス・ユニバース。
アトミック・ボムが頭上の空から、
『君は誰を愛してるの?』
(おお、私の「ボ・ディドリー」よ)と、
地上を目指している。
さよならマテリアル・ワールド、
『キス・マイ・アス・ホール』。
ジェラシーに紛れ込んで、
誰にも見えないディグニティー。
さよならアンディ・ウォホール。
さよなら淀川先生、
さよなら、さよなら、、、さよなら」ーー
2
友人たちに別れを告げた私が、
持ってきたのは服と本だけだった。
みんなは私が嘘をついているという。
しかし、ここには良質な泉があるのだ。
私は今まで、街を覆う空に、
翼を広げる「ミューズ」を探していた。
しかし今は、地面に視線を下ろし、
この良質な泉を覗いている。
働き通しの手の中の
新しい土地の土は、
雪のように冷たい。
暗くなるまで、
働く人たちが見える。
近づいていって、彼らに挨拶しよう。
市民たちや、株主のために、
私は作物を育てていこう。
今日も小さな波が寄せては返す、
この良質な泉の上を。
3
シャツのように涼しく、
ストールのように暖かく、
魂を犠牲に、
心を保護していく。
ダイヤモンドのように硬く、
オーガニック・ソープの泡のように柔らかく、
私は、家庭的なシーンに挑む
ジェームズ・ボンドの気分ーー
イオンのカップ麺とヨーカドーの牛乳を積み、
小さな日産を運転する。
見ろよ、敵のアジトが燃える、
だが、ダッシュボードにピストルはない。
ジーンズのようにきつく、
スエットのようにゆるく、
ベッドの中でいびきをかく妻の横で、
彼女の夫が淫らな夢を見ている。
ーー何かが私のドアを叩く。
ん?
幽霊の仕業?
はて、聴き慣れた声だ。
行方知れずだった少年が訪ねてきたのだ。
4
その時、
鐘が聴こえた、
イメージした光景の中から。
鐘の音が響く、
パジャマの下の私の脳味噌に。
鐘は鳥の軽やかな羽根に乗せ、
言葉を運んでくる。
私はそれを拾い、デッキに置く、
「溺死したフェニキア人」の描かれたカードの横に。
鐘の音は、私の
訪れるべき場所から響く。
鐘の音がする、
外が雨だろうと、雷だろうと。
「ミューズ」よ、この言葉は
地獄から鳴り響くの?
それとも天国から?
どちらにせよ、私に心地良い。
5
午前2時、まだ月は高く、
空気は凍りつき、野良猫が鳴き声を上げる。
群れからはぐれた羊を狙うコヨーテの牙が、
冷たい水面にギラリと光る。
目が覚めたとき、私はペンを握り締め、
長く行方不明だった少年とともにいた。
町にある古い本屋の辺りを、少年は
うろついていたと、目撃者が証言した。
少年は私の本を探し、曇った窓を覗いたが、
あったのは壊れた虹だけだった。
私の失われた想像力が再び膨らみ始める、
長く行方不明だった少年の出現によって。
6
私は
実在する、
広く開かれた地球の上に、
実在する、
潮流に囲まれた島の上に。
現代の人々が暮らす国で、
古代の人々が紡いだ歴史の中に、
ゴーストの眠る墓ではなく、
家で、トーストを食べながら、実在する、
しかし、消えていたーー
消えていたのだ、
狭く閉じられた地球の上から、
消えていた、
明日の見えない島の上から。
現代の人々が自殺する国で、
古代の人々が殺された歴史の中から、
町から、そして家からも、
姿を消して、夜明けを待っていた。
そして今、見つかったのだーー
私は。
7
よろしくマテリアル・ワールド、
よろしく「ミューズ」たちよ。
さあ、ジェームズ・キャグニーよ、
『民衆の敵』を演じてくれ!
フレディ・キングよ、弾いてくれ、
私の「ウォーリード・ライフ・ブルース」を!
8
いつでも向こう側、
イメージは、思考の。
言葉も時々無色透明、だから、
君の「知性」に見てもらえるよう試みて、
私は「色」を添える、私の絵にーー
黒に、青に、メタル・グルーのお菓子に、
茶色と白を加え、ペイル・ブルー・アイの町で、
私は詩を書き、投稿する(すべて、君のために)。
赤も、緑も、それから「嫉妬の女王」の死体も、
ピンクに、紫、橙、ブラウン・シュガーに映える、
「明日はどうなるかわからない」を、
イエロー・サブマリンのボディーに塗りたがる。
いつでも向こう側、
「無垢」は、「経験」の。ーーでも、
詩は沈黙することじゃない、だから、
君の「理性」にも感じてもらえるよう試みて、
私は「名前」を並べる、私の詩に。