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シーフ・イン・ザ・ナイト

私は、夜に生きていたーー
それが間違いか、正しいかなど考えもせず。
誰の耳にも聞かれぬよう、足音を消し、
何十年、何百年と潜んでいた。
多くの時間を無駄にし、
気づけば、境界線を越えていた。
それが間違いか、正しいかなど考えもせず、
私は、夜に生きていた。

多くの手下が、牢獄の中で死んだ。
彼らは私に手紙のひとつも寄こさなかった。
雷鳴と、通りを叩く雨音が、
彼らのシーツ越しに聴く唯一の子守り歌。
壁の外へと繋がる道を探して、
賢い者はモグラのように地中を這い、
そして、そのまま視力を失った。
私は、夜に生きていた。

朝日が、街の隅々を照らす頃、
私は疲れて帰り、ガウンを羽織る。
私は眠らず、したがって夢を見なかった。
見たとしても悪夢で、うなされたに違いない。
庭では、吠え狂う犬が鎖に繋がれている。
あいつは、けして列車には乗れないし、
噛む相手を、死ぬまで睨みつけるだろう。
私は、夜に生きていた。

屋根裏が、私の王国だった。 
その住人は孤独で、病んでいた。
彼らは心をタトゥーで埋め尽くし、
靴の中にまで、憂鬱を隠し持っている。
欲張り、血を流し、理由も分からず、
天窓からの月明かりを巡って争う。
彼らは渇き、永遠に満たされない。
私は、夜に生きていた。

地球の気温が上昇し、ピークに達するとき、
喋らない人間が必要になるに違いない。
揺りかごから墓場まで、干上がってゆくのだ、
だから奴隷には、奴隷の役目が与えられる。
私は唇で、笑顔の行方を探したが、
それはポルノにも、彼女の腰にもなかった。
むしろ彼女は泣いてるみたいだった。
私は、夜に生きていた。

さあ、レオニダスよ、戦場に連れて行ってくれ、
私の筋肉は強く、意見も簡潔だ。
けれどお前が私に、剣も盾も与えないのは、
私が老いて醜い、夜の盗賊だからだろう?
知識も、叡智へと繋がらなければ、
ただの無益な、時間の浪費にすぎないーー
それが間違いか、正しいかなど考えもせず、
私は、夜に生きていた。

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