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私の深淵

暗闇を共有する2つの顔を通し、
私と君は見つめ合う、
それぞれの絶望と痛みを持ち寄って。
そして私たちは、
雨に濡れる街の陰で、
互いの憐れみを取引する。
「自由」は今にも、
堕落した生活の中で、滅びようとしている。
2人は、谷底で生き延びるか、
丘の上で死ぬか、選ばなければならない。
私たちは、私の深淵で出会うーー
そしてハグをし、キスを交わす。
そう、私の深淵で。

君は鉄の仔犬か、あるいは、
氷の仔猫を手懐けるために、
詩の一節を引用するーー
洪水の前で踊る、
感傷的な言葉によって恍惚状態の、
少女の冷たい血で書かれた、
暗示的な詩からの一節を。
「人生の転機から、
ユーモアのセンスを学ぶこと、それは、
サイコパスがナイフを捨てるのを、
期待することと等しい」と。
私たちは、私の深淵で会話するーー
だが、すぐにそれに飽きてしまう。
いつだって、私の深淵では。

私たちは歩き続け、
森羅万象の置いてある、
「ほとんどブルー」のカーテンで、
飾られた部屋を通り過ぎる。
死より生まれた私たちの兄弟に、
遠い声が言い放つ、
「よくもあんな仕打ちができたな」と。
彼は、死んだ馬に乗り、
白紙の地図を広げて、
北へと向かう。ーーが、もちろん、
彼自身、すでに死んでいるのだ。
私たちは、私の深淵を歩くーー
失ったものを追い求めながら。
ずっと、私の深淵を。

自然界の書物が、
巨大な鯨の力強い尾鰭で、
海を引き裂くかの如く、
世界の始まりを語る。
君の、幽霊船に囚われた魂は、
マーメイドたちの唇の、
淫らな感情によって、
吸い込まれつつある。
君はこの世の終わりまで、
『最後の晩餐』を続ける。
君はすべての仔羊を、
すべての虎を殺そうとするが、
変わらず、私の友達なのだ。
私たちは、私の深淵で眠るーー
アルテミスの死を夢で見ながら。
ああ、私の深淵。

私はガザの通りに並べられた、
何体もの死体を見たーー
善と悪とが、夢のない夜を、
寝床を共にして、過ごしている。
カクテル、カーペット、テレビ、
スマートフォン、ファストフード、ドローン、
テイラー・スウィフト、もしくは「無」、
それらが、君の目の中にあるすべて。
ラップ・シンガーが、
購入した高価な家具について歌っている。
そしてサラ・コナーの落書きが、
「NO FUTURE」とせせら笑っている。
私たちは、私の深淵で別れるーー
お別れのキスを交わしたあとで。
さよなら、私の深淵よ。

君は何も言わず、待つこともなく、
その足は引き返すことなく、
破滅の道を真っ直ぐに進む。
私はもう君の顔を思い出せない。
私は酔いつぶれ、
床に横たわり、
マネキンに話しかけている。
これが私の深淵、
私の不幸の正体。
誰にも明かすことのない、
私の秘密。
もう一度、私の深淵で会うことがあってもーー
私たちは古い友人の振りさえしないだろう。
そう、私の深淵では。

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