無垢と経験

どんな子供も、
まるでミッキーマウス、
まるで鉄腕アトム、
まるでアテネやアフロディーテ、
まるでトロイの戦士。

どんな子供も、
まるでソクラテス、
洞窟の壁に映る影絵。
まるでスティーブン・ホーキング、
宇宙とワームホール。

どんな子供も、
まるで魔法使い、
呪文を唱え、手から光を生み出す。
たとえば、氷の矢を飛ばす魔法で、
悪人の舌を突き刺し、黙らせてしまう。
それから、透明になる魔法や、
あらゆるドアを開けてしまう魔法。
炎の上を歩く魔法に、
水中を自由に泳ぐ魔法。
けが人を治す魔法、
病人を癒す魔法、
あるいは、城に囚われた姫を救い出したり、
魔法があれば、いつでもヒーロー。
どんな子供も魔法を持っている、
どんな子供も魔法を持っている。

ところで君、狂人を見たかい、
市場でひとり叫んでいた、あの狂人を？
耳を貸さない群衆に対して、
汗をかき、必死に語りかけていた。
取り押さえに来た警官の1人に、
頭を殴られ、気を失うまで、
彼はずっと叫んでいたんだ、
聞かなかったかい、彼はこう言ったんだ、

「大人たちよ、思う存分泣くがいい！
無垢は死んだ、もう死んだのだ！」と。