秋の訪れ/ワールドミッション(ジェイソン・ステイサムに)
寒い夜だった。
飲み屋街は嘘に疲れ、
店のトイレには夢のない眠りが落ちていた。
私は一瞬しらふに戻り、
その恋人たちを見つけ、
あやふやな自己紹介を交わした。
彼女の笑顔は優しく、輝きにあふれ、
それでいて悲しげだった。
彼氏の方は、まだ子供で、
野生のリスで、
何かが彼を怒らせているみたいだった。
私は聞いていた、
彼が彼女に、
星の数ほど穴の空いた未来を語るのを。
彼の前歯の隙間から、
もれてくる嘘を、
彼女は過去の砂場に隠していくみたいだった。
そして夜は曖昧な記憶を繋ぎ合わせ、
ビールの樽の底へと転がっていった。
彼女は泣いていたのか、
それとも笑っていたのか、
ジェーン・エアよりも辛辣なメロドラマに。
それから彼氏が眠りに操られ、
ジープみたいないびきをかき、
サファリパークの夢に消えてしまうと、
私は月と一緒に、
彼女を部屋に招き入れた、
彼女の足音を消してあげながら。
そのとき、私は手を差し伸べて、
彼女が靴を脱ぐのをそっと手助けした。
すると彼女は、
「あなたって優しいのね。
でも、それって本当かな?」とささやいた。
私は彼女の耳に、
「君を集めてあげるから、
側においで」と言うと、
彼女は頭を私の腕に乗せ、
糸の切れた真珠のように、
バラバラと床に散らばった。
その瞬間は永遠で、
私は生涯忘れないだろうと予感した。
それから私も眠りに落ちると、
朝がヒツジを捕まえ、
ポケットにしまい込んだ。
裏口から物音がした。
床には足跡が残り、
閉めていたはずの戸が開いていた。
私が石より硬いまぶたをこじ開けると、
彼女はもういなかった。
彼氏の元へと帰った後だった。
私はベランダへ出て、外を眺めると、
空からジャック・レモンがこちらを見ていたので、
尋ねた、「やぁ、友よ、
これで終わりかね?
オチに、ここから跳ぶべきかね?」と。
ジャック・レモンは返事をしなかったが、
私は目を閉じて、
空に身を預けた。
その日の空はとても澄んでいて、
空気中のダイヤモンドに、
街が映り込んでいた。
そして雲はどれも真っ白で、
チワワの尻尾やインディアンの羽、
中にはロナルド・コールマンの髭も浮かんでいた。
それから風ーーその日の風は冷たく、
若者や年寄りに吹きつけ、
体温や、時には魂まで奪っていった。
次に木ーー木は黙って立っていて、
時々、路上のパントマイムを、
風に向かって披露した。
その木々から落ちる葉は、
自分を黄色い雪だと主張し、
やがて公園全体を包んだ。
その公園では男と女がベンチに座り、
デタラメなフランス語で愛を語り、
ボクサーのクリンチで抱き合っていたーー
男は女に、ドアの絵を見せ、
「退屈でいっぱいの空白を覗いてごらん」
と微笑む。
女は男に、壁の歌を歌い、
「無限に広がる限界を飾ってあげるわ」
と誓う。
急にすべてがバカで下らないことに思え、
私はラム酒を青空のグラスに注ぎ、
二度と会わない恋人たちに乾杯したのだ。