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長男の胎前・胎内記憶

長男が生まれたばかりのころなんとなく、この子はおなかの中のことを覚えているかもしれない、と思っていた。妊娠中読んだ胎内記憶の本には、3歳くらいまでで記憶は消えてしまうと書いてあったので、彼が言葉を覚えてから4歳になる前まで、わたしは何度か聞いた。「ママのおなかの中にいたときのこと、覚えてる?」いつも遊びに夢中になりながら「しらなぁい」という返事が返ってきた。だめなのかなぁ。ちょっと期待してたんだけどな……。

4歳も終わりかけのころ、戦争のアニメを一緒に観た後で、亡くなったひいおばあちゃんの話をしたら「○○、そのおばあちゃん知ってるよ」と彼が言った。「知らないと思うなぁ。だってひいおばあちゃんは、○○がママのおなかにきてすぐに亡くなったんだよ」「うん。でも、○○はそのおばあちゃんの声を聴いてたの。ママのおなかの中で、家族の声を聴いて、≪すきだな≫って思ってたの」心のなかで、えーっ!と思った。これって、胎内記憶なんじゃ……。心が躍ったけれど、わたしはできるだけ落ち着いて長男に聞いた。「ママのおなかの中は、気持ちよかった?」「うん。暗くてね、お水がいっぱいあってね、○○はそのなかで自由にしてたの。みかんみたいなジュースみたいなにおいがしてて、ママがお口を開けると外の世界の音が聞こえたの。ママはよく歌を歌ってたんだね」「ママがおいしいもの食べたら、○○にもいっぱい降ってきた?」「降ってくるとかじゃなくてね、まわりからじわじわってきたの。それで○○は、ママがご飯食べたんだなってわかったの」ああ、そっか。胃袋じゃなくって子宮なんだった。おなかの赤ちゃんには毛細血管から栄養が届くって保健師さんが言ってたっけ。そしたら長男は自分から続けた。「○○はね、ママの笑ったお顔が好きになったの。それでママのおなかにはいったの」そうなんだ……。だからあなたは、「ママ、笑って?」ってよく言ってたんだね。

それからしばらく、また何度か聞いてみたりしたけど、彼はそういう話すら忘れているふうだった。

その次の時には5歳も半ばになっていた。遊んでいて、突然話し始めた。「○○がママを選んだのはね、ママの笑ったお顔が好きになったからだけじゃなくって、このママだったら○○のこと大切にしてくれるってわかったからなの。だから○○はママのとこにきたの」そうだったんだ……。≪ああ、ごめんね。ちゃんと大切にできてなかったね。心が大切に想ってるみたいに大切にできたらよかったのに。これからは、そうしたいな≫そんなふうに、選んでもらった誇らしさと、それに応えられていなかった申し訳なさが輻輳した。ちなみにその時、「パパのこともえらんだの?」と聞いたら、「ううん、えらんでない。このママに決めたら、このパパだったの」と言われて、思ってもみなかった言葉につい笑ってしまった。パパごめんね。きっとショックだったよね。

それ以降彼はこのことに関してもう口にすることはなくなった。きっと、わたしが子育てを乗り切れるように、自分に自信が持てるように、記憶を伝えてくれたんだ。彼の記憶は、なにかのチャンネルがピタッとあわさったときだけ思い出させれるみたいだった。

それから、彼がおなかの中でひいおばあちゃんの声を聴いたというのは、妊娠5週にも満たないころのこと。赤ちゃんの耳すら出来上がっていない時期なはずだから、そういうことではなく、魂の記憶なのかなとわたしは思った。

貴重な貴重な体験を記録しておきたくて、それからここのみなさんとシェアしたくて、今日はこのことを書きました。

ああ、子どもたちと会ってぎゅってしたいな!熱よさがれ~♬

2020.4.15

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小絵

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森宮雨
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