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国立新美術館で楽しむ、名建築が魅せる光とアートが描く光
去年の夏、六本木にある国立新美術館へ訪れた。この日は美術館の建築や、絵画が描く様々な光を楽しんできました。
前半では、国立新美術館という名建築と光について。
後半では、テート美術館展の「光」をテーマにした18世紀~現代までのアートについてご紹介します。
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フィルムで撮る建築・国立新美術館と光
国立新美術館は、日本を代表する建築家・黒川紀章が設計したもの。
黒川紀章はいくつか美術館を設計しましたが、生前に完成した最後の美術館となりました。
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「森の中の美術館」をコンセプトに設計された建物で、波のようにうねるガラスの壁面が美しい曲線を描く。
お昼と夕方とでは、光の色や強さがかなり違うようです。
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壁面にはガラスがずらりと並び、ストライプ模様の影が差し込む。
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今回撮影したのは、フィルムの一眼レフカメラ PENTAX SP。
光と影が美しい、国立新美術館を撮るにはフィルムがとてもよく合うなあと思います。
テート美術館展 光 レポート
今回訪れたのは、イギリス・テート美術館のコレクションより「光」をテーマに作品を厳選した世界巡回展。
異なる時代と地域の様々なアーティストたちが、どのように光の特性とその輝きを描こうとしたのか、見ることができるようです。
気になった作品をいくつか写真でご紹介していきます。
1.ターナーの溢れ出す黄色い光
移りゆく自然の光のきらめきを瞬間的にとらえ、いかに芸術作品で表現するか。この難解なテーマへの挑戦に多くの画家たちは魅せられてきました。
「光の画家」と呼ばれるウィリアム・ターナー。
ターナーは光と色彩で自然の畏怖を表現しようとしており、印象派の先駆けとも呼ばれています。
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左下に筆でちょんと点で描かれた夕日から、黄色や赤色に染まった空と湖で光のきらめきが描かれている。
その一方で、光の生み出す影を隅に描くことで、絵がしっかり引き締まって見えます。
2.海に降りそそぐ光
本展覧会の看板となるのが、ジョン・ブレットの海を描いた作品。私もこの海につられて、今回展示にやってきました。
澄み切った青い空に、雲の隙間から柔らかな光。
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スポットライトのように照らされた海がなんとも幻想的。
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海は波に光があたってきらきらと揺らめく様子も細かく描かれていて、見ていて飽きない絵でした。
3.部屋に差しこむ光
都市の近代化がさらに進んだ19世紀末からは、室内というプライベート空間をどう描くかにアーティストたちの関心は広がりました。
窓から入ってくる光の効果などを作品に取り入れることで、人同士の心のつながりや、個人の内面を鮮やかに映し出そうとする試みが相次ぎました。
デンマークの画家・ハマスホイは自分が住んでいた部屋を描き続けた画家。
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どの絵もほんのり薄暗く影が落ちており、見ているこちらを少し不安にさせる。
だからこそ、窓から差す光のやさしさがより一層際立っている。
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北欧らしい静けさと淡さ、どことなく不穏な空気感が漂う作品が多くて、好きな画家のひとりです。
こちらの本では、ハマスホイの絵と一緒に分かりやすく解説されていておすすめです。
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ハマスホイの絵の後にこちらの温かい光を見ると、なんだかほっとする。
4.現代アートが描き出す光
ここからはぐっと現代に近づき、絵画だけではなく、他の物や人工的な光(照明)を使った光にまつわるアートが展示されていました。
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こちらは様々な色の四角形や線を規則的に配置することで、鑑賞者に錯覚をもたらす作品。
じっと見ていると目がちかちかするけど、薄目でぼんやり見ると薄い黄色の部分に、木漏れ日のような光を感じます。
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リヒターの作品もしっかりありました。
黒と赤で暗くて重く塗りつぶされているけど、所どころに入っている白色が強く光っているよう。
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ジェームズ・タレルの作品は、暗い部屋の中に入って目の前の壁に《レイマ―、ブルー》が現れる。
写真で見る以上に、視界一面に広がる力強く美しいブルーに圧倒されました。
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照明がタワーのように積み重なった作品。ふんわり光に照らされた床が美しい。
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プロジェクターの前に立つと、影絵のように壁に映し出されるという仕組み。日常でも見たことがある風景ですね。
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今回の光をテーマにした展示は、光と影が美しい国立新美術館という建築ととても相性が良い展示でした。
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