自由な色彩 〜プロローグ 前半〜
そう広くないある広場で、ひとりの少女が小さな平筆を持ち、仁王立ちしている。次の瞬間目を開いた女の子は、力強く{炎|ほのお}の絵を描いて叫ぶ。
「フレイムッ」
うまいらくがきと言葉で発せられた炎は、茶色い前髪の前を熱くこがし、すぐに消える。彼女は何を思ったのか、同じ動きを何度も繰りかえしていた。
ここはどこかに存在するといわれている魔法の世界。筆と言葉で創りあげるそれは、決められた学科に入れば誰でもでき、とくに難しいものではない。もちろん攻撃魔法を使うマジシャンだけでは