モンテ・クリスト伯感想 7
※ネタバレ含みます。
脱獄
「ダンテス君、だらけてはだめだぞ、逃げようとするとき、力がしっかり鍛えられていないと、あなたは溺れてしまうからな。」※1 p.35
波が吠える荒海の中で、ファリア司祭の言葉が響く。
無為な牢獄の時間。
人生においての不遇の時代。
そんな時こそ、だらけてはダメだ。
なすべき事を厳選し力を付けなければ。
多忙になってからでは遅い。
来るべき時を迎える為に万全をつくし、時を自ら作る。
人は忙しい時ほど、あれもしたい、これもしたいと思いが巡る。
寸暇を惜しんで本を読み、行動する。
あふれるほど時間があると、かえって目的を見失ってしまうのは何故だろう。
心には緊張感が必要だ。
それには想像力も必要だ。
こんな時にはこんな力が必要になる、だから、今はこのことを身につけておこう、そう考える。
自分が今いかに不幸な状況に置かれていたとしても、嘆く必要はない。
不幸は、自分の秘められた宝を掘り起こす道具だ。
絶望するな。必要ない。
年齢も関係ない。
何かを始めるのに、年齢は障害にはならない。
人生をやり直すのに年齢は関係ない。
なぜなら、今、「よし!」と希望を胸に輝かすのなら、その瞬間に不幸は消え去るからだ。
心に希望を燃やす者の前に不幸は無い。
ただ、開くべき扉、打ち壊す為の壁、超えるべき峰があるに過ぎない。
不幸は乗り越えるための目標に過ぎない。
希望だ。希望だ。希望だ。
苦しむ必要はない。
苦しもうとしなくていい。
希望を持ち、喜びに満ちていい。
希望を持ち、期待に胸を膨らませていい。
今日できる事はある。
一つでもいい。
「だらけてはだめだぞ、」
ファリア司祭の言葉には力がある。
その言葉通り行動したダンテスは、牢獄で体力を失うことなく荒海に挑むことが出来た。彼は泳ぎきり、無人の島へ辿り着く。
嵐を乗り越え、岩肌に立ち上がり、昇りゆく朝日を迎える。
「波は躍っていた。と見る一条の光は、波の頂きを走ると見るまに、泡だちかえる波がしらを、たちまち黄金のたてがみに変えてしまった。」※2 p.39
光。自由。風。
辺りを見回すダンテスの姿が印象的だ。
世界へつながる海の只中に立ち尽くす。
その後、ダンテスは助け上げられた密輸入船で、今日が何年何月何日なのかを知る。
囚われてから14年後だった。
自分が苦しみの淵に落ち込み、そして、再びこの世界へ戻るのに14年かかった。
14年が過ぎていた。
私もまた、今日までにどれほどの年月を無駄にしてきたことか。
愚かだった、正直でありすぎた、人を信じ過ぎた、人を疑い過ぎた。
また、浅はかな自分の選択を信じ過ぎていた。
もっと選択は多く有り、もっと良い選択もあった。
手を伸ばせば届く場所に、知るべき情報もあった。
見ようとしていなかった、考えようとしていなかった。
絶望が目隠しをしていた、怠惰が足かせだった。
悪事に対する、客観的怒りが必用だった。
自分に価値が無いと思うことは、愚かさの証明だった。
私はダンテスのように蘇生しなければならない。
牢獄から、世界へ生還しなければならない。
私は自分自身に言い聞かせると共に、
今、引きこもる人々にも伝えたい。
あなたはこの世界の宝だ。
貴方の力を埋もれたままにしてはいけない。
掘り起こし、活用し、そして、世界へ生還するのだ。
なすべき事を成す。
喜び勇んで。
なすべきことは君が決める。
君が最も好きで、最もやりがいを感じる事を選べばいいだけだ。
それが君の、この世に生まれた理由。
この人生を楽しむために、苦難さえも楽しみ乗り越えるためにあるのだと、
気づくべきなのだ。
ここから先は
モンテ・クリスト伯感想
モンテ・クリスト伯の感想です。 1巻から7巻まで、感想と個人的な思索をまとめました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?