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モンテ・クリスト伯感想 20

ネタバレ含みます。

昔語り。

エデが白く細い指先で触れる、日本製の茶碗。
この物語に「日本」という言葉が出てくることは嬉しい。
東洋的な物、異国の風情の一つとして日本の陶器が取り上げられている。
更に、エデがそれを気に入っている様子の描写。


デュマが生きた時代は、パリ万博の開催がジャポニズムを流行させ、日本の陶器に対する関心も高かった頃だ。デュマ自身も好きだったのだろうか。


幼い頃の思い出を聞かれたエデは、肉体の目で見たことは往々にして忘れるが、心の目で見たものは忘れないと答える。

この「肉体の目」と「心の目」はデュマが常に書き分けている重大なキーワードだ。

「肉体の目」に写る「現実の事象」と、その「内面に潜む事実」は時に、全く異なっている。

モンテ・クリスト伯は常に現実の事象を見つつ、その裏に隠された相手の真意であるとか、策略であるとか、焦り、恐怖などを的確に「心の目」で見ている。

「心の目」を持たなければ、「肉体の目」に左右され、正しい判断は出来ない。

常に闘争である人生においては、正しい認識が無ければ敗北を招く。

人生をお人好しで終わるのか。
相手の真意を見抜き、価値ある人生を勝ち取るのか。
この物語はその選択を迫っているようにも感じる。

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2,364字

モンテ・クリスト伯の感想です。 1巻から7巻まで、感想と個人的な思索をまとめました。

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