苔
苔
友人は、執筆が終わると、
夕方庭でお茶を飲んで息を吐き、
頬杖をついて空を見ていた。
隣近所の人たちとの関係は
とても良好でしたが、
誰も話し掛けませんでした。
それは、
ほっとしているのが
分かっているからです。
友人の想いの一つに、
こうゆうものがありました。
「この庭の石々に、苔が美しく付けば、
おじいさんやおばあさんたちは、
ここで休んでいって下さるかなあ」
いろいろお話を
聞かせて頂きたいと思いました。
「詩とは、
近付いてみて見渡してみて」
「どら焼きを半分食べて」
「私たちが機械を精密と言うのなら」
「背もたれに寄り掛かり伸びをして」
いろんなお話を聞かせて頂きたい。
おばあさんは、
友人のどてらの当て布に触れて、
「丁寧な仕事をしていますね」
と微笑みました。
良い文章を作れるように、 作るために、 大切に使わせて頂きたいと思います。