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my sweetest one

父さんの部屋。
別に立ち入り禁止ってわけじゃなかったけど、こっそりと忍び込むのが楽しかった。

難しそうな本が並ぶ書棚。ゆったりとした古い皮の1人がけソファ。スタンドに立てかけられたアコースティックギター。部屋の端にぶら下がった金色に光るランタン。壁にかかった写真たち。

そして部屋の隅の小さな箪笥の上に鎮座するレコードプレイヤーと、たくさんのレコードたち。ひとつひとつが放つ目に見えない小さな光が集まって、部屋全体が夜の街に浮かび上がるサーカスのように、私の心を躍らせてくれた。

あるのは古い洋楽のレコードばかり。
休みの日になれば、父さんは背表紙に指を滑らせてその日の一冊を抜き出し、小さなハミングと共にレコードを選び、針をゆっくり下ろす。そしてソファに座ると、サイドテーブルに置かれたマグカップに手を伸ばし、家族の誰かが声をかけるまで贅沢なひと時を過ごすのだ。

小さなころは私も、お気に入りの絵本を持ち込んで床に座り込み、あるいは寝転んで一緒に静かな時間を楽しんだ。そんな私を父さんは眩しそうに見つめて、微笑んでいたのを思い出す。
あの時読んだ本も、聴いた曲も、感じた空気も。どれもが宝物であり、今の私の原点だ。

楽しいこと、嬉しいことがたくさんあった。
悲しいこと、苦しいこともたくさんあった。

それでも今日、今夜。今の私のすべてで歌い、声と想いを届けられるのは…
あの日の私とあの部屋があったから。

大切なものが、こんなにも増えた今日。
一人ひとりの大切な「あなた」へ。
少し恥ずかしいけど、シンプルな言葉を贈るよ。

今までありがとう。これからも、ずっと。


from Aimer/my sweetest one
アルバム『broKen NIGHT/ holLow wORlD』収録 2014年

10周年を終えて、11周年を迎えるAimerさん。僭越ながら、そのお気持ちを少し推しはかりながら書いてみました。

音楽が隣にある喜びと安らぎ。歌う直前のためらいと気恥ずかしさ。それでも届けると決めた決意。それらを感じて、聴きながらココロ弾む大好きな曲です。音楽が好きなすべての人に聴いてほしいです。

Aimerさん。おめでとう。
これからもよろしくお願いします。

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