冬に、走る、ココロ
日が暮れて冷気が足元に忍び寄る季節。
例年より今年は遅かったけど、そういう季節がやってきた。腰に不調を抱える我が身は、いつも以上に動きが緩慢になり、慎重になる。
ゆっくりと。しずかに。あせらずに。
立つ。歩く。振り向く。屈む。座る。寝る。
ひとつひとつの動作を丁寧に。それはひどく面倒なことではあるけど、自分という人間形態の生き物が如何にして動いているかを再確認する機会になってもいる。
動くことは生きることだ。
カラダでもココロでも。動かないカラダとココロはひどく不自然だし、何より哀しい。我が身を大切に動かしながらそんなことを考えてみると、美しくも機能的でもないカラダながら愛おしくなるのだから、ココロとは不思議なものだと思う。
夜は寒さに加えて闇も迫り、私の視界と世界を狭めようとする。しかし、冷気と闇の底で仰ぎ見れば、何千年何万年前から人のココロを動かしつづける、ヒカリがこちらを見下ろしているのだ。
ゆっくりとカラダを動かしながら、ココロはロケットのような猛スピードで走り出している。この冷気と闇の向こうにいる、同じくココロ走らせる人に手を伸ばすように。ココロは、走り出している。
夜の空で私たちを待つ、無数のヒカリが最も美しい季節。冬が今年もやってきた。
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