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古事記の神話 #032(藤沢 衛彦)
三十二 火の御子
其後、木之花之佐久夜比売は、邇々芸命の御許においでなされて、
「私は、ただならぬ身となりまして、臨月になりました。天神の御子でごさいまするから、内内生むべきものではございませぬ。それで申上げます」
と申された。邇々芸命は、
「佐久夜比売よ、一夜のちぎりで妊娠することがあらうか、それはわが子ではなくて、必ず国神の子であらう」
と仰せられたから、比売は、
「私の腹の子が、若し国神のたねでございますれば、無事には生れますまい。また天神の御子で御座いますれば、無事に生れませう」
と申して、戸のない御殿をつくり、その中にお入りなされ、土にて塗りふさぎ、いよいよ御出産の時その御殿に火をつけて、お生みなされた。その火の熾んに燃えあがつたときに、お生みなされた御子が、火照命、即ち隼人、阿多君の御先祖、その次にお生れになつた御子は、火須勢理命、その次にお生れなされた御子は、火遠理命、御一名は、天津日高日子穂々手見命であらせられる。
#033 へ続く(👈リンクあり)