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#FE名古屋 2019-2020シーズン振り返りHC&代表インタビュー④シーズン後半戦~閉幕

(前回)

4.シーズン後半戦振り返り ①ベン離脱

― そんなチームの上昇機運の中でベンの怪我(※左肩脱臼)というアクシデントに見舞われました。現場としても運営としても相当なバタバタがあったと推測していますが、実際のところはどうだったのでしょうか。

坂口代表(以下、坂)
 実はベンジャミン・ローソン(以下、ベン)の怪我の診断結果は最初は3週間程度の離脱だった。それが2週間経っても痛みが治まってこないということで再度診断を受けたところ、当初の見立てよりも重く、手術が必要だということになってしまった。

 そのため、ベンが戻ってこれないことが本決まりになった年末あたりにようやく代わりの選手を探し始めている。その段階だともう就労ビザの面で外から持ってくるには間に合わないので、国内で使われていない選手を探すしかない。ただ、使われていないということはそれだけの理由があるわけでなかなかチーム状況にマッチしない選手も多い。

 そんな中1番近いチームである三河にクリス・オトゥーレ(以下、クリス)がいて、三河が貸し出しにOK を出してくれたのが助かった。ただ、クリスはクリスで三河でほとんど使われていない状態だったのでコンディションが全く整っていなかった。

川辺HC(以下、川)
 使えるコンディションになるのに2〜3週間かかりましたね。怪我してすぐに代わりが欲しかったのは正直なところですが、診断が変わるとはなかなか読めないから仕方ないですよね。

― このベンもクリスもいない時期は上位相手の連敗だけでなく下の順位のチームにも星を落とすなど苦しい戦いが続きました。


 この時期は選手たちのモチベーションを保つのが非常に大変でした。ずっとon1で自分たちはやっていくのか、やれるのかという不安が強かったんでしょう。それでもやっていくんだというメッセージは出していたんですが、なかなか難しかったです。

― そういう意味では善戦しつつ敗れた仙台戦どちらかは取っておきたかった。


 勝てそうな手応えがあっただけに惜しかった試合ですね。勝負所でティルマンに続けてやられました。いい時間帯は間違いなくあったけど、相手に一つ二つ良い形で続けてやられると、そこから崩れていくのを止められなかったです。

②クリス・オトゥーレ加入と戦術の再構成

― そういう苦しい戦いが続く中、クリスの加入で戦術の再構成を図ることになりました。当然のことながらベンとクリスでは選手としての特性が全く異なりますが、この辺りはどのように調整を行なっていったのでしょうか。


 まずもともと、ベンについては、獲得したときにはもう少し攻守共にインサイドでプレーできるイメージをもっていたんですよ。それが、チームに加入してみるとどうも様子が違うと。

 身体をぶつけあったりインサイドで闘うのは苦手だったし、フリースローも本当に良くなかった。恐らくあまりしっかりとした指導を受けていなかったようで、フリースローやフックは教えたらだいぶ良くなったんですけど。

 ただ、例えば信州のようにピック中心の戦い方をしているチームも、何本か外を外したらペイントで点を取るということをやってくるわけです。うちは前半戦はそれができなかったので、ピックをやり続けるしかなかったんです。クローズアウトシチュエーションで良いショットを作るにしても、最終的に打つシュートの中と外の比率を50%50%にして欲しいという思いはあったけど、なかなかそうはならなかった。

― 以前のFEのようにインサイドに入れて落ち着かせる、という選択肢が持てなかったわけですね。そして、怪我によりこのポジションがクリスに入れ替わります。


 クリスに入れ替わって驚いたのは、FG%が70%もある。これは凄いなと。ベンほど機敏に飛び込んだりはできないけど、そこでクローズアウトシチュエーションを作るには十分で、かつ中と外をバランスよく使えるようになりました。

― クリスが加入した後は、ピックのスクリーナーはジョシュが務めることが増えましたね。


 そうですね、ジョシュをスクリーナーに置いて、クリスはリングに近いところでダックイン(※ゴールに近いところで潜り込むように相手の前のポジションをとるプレー。パワーが求められる)を狙う形が増えました。

 その流れでジョシュのスクリーン後の動きもダイブ(※スクリーンをかけた後にリングに向かって動くこと)ではなくて中の様子を確認しながらのショートロール(※ダイブのように勢いよくリングに向かうのでなく少しだけリング方向に動いてボールをもらう動き)が増えて、判断も技術も良くなってました。若干ワンパターンではありましたけど(笑)、シューター陣も恩恵を受けていたと思います。

 それから、クリスがものすごく頭がいいんですね。ゲームIQ、アジャスト能力が高くて、素晴らしい選手でした。


 クリスは頭が良いだけではなく性格がメチャクチャ良くて、真面目というかバスケ大好きで練習熱心。チームにもあっという間に溶け込んだよね。

― FEが連れてくる選手は性格が良くて真面目というイメージがあります。


 今回は完全に緊急事態だったので、たまたまだけどね(笑)

― 話は戻りますが、クリス加入後、彼のインサイドポストの攻めも大きく増えました。これは意図的に増やしたということなのか、元々50%50%と言っていたようにやりたいバランスに近付いたのか、どちらなのでしょうか。


 これは元々やりたい形、バランスに近付いたというイメージですね。ただ、50%50%以上に増えてる部分もあり、それは実際にコートにいるガード陣の判断とか、嗜好の範疇と言えるかもしれません。

― また、中からパスが出てくることにより外のシュートの精度が上がっていたことも見逃せないと思います。


 そうですね、データでも中からのパスは横で回すパスからのシュートより5%ほど高い確率になるとは言われていて、シューターの選手はその恩恵を受けていたと思います。序盤怪我に苦しんだ飛田も、治癒とクリスの加入が合わさって非常に生き生きと良いプレーを見せていました。

③松山加入について

― さて、クリスのコンディションと溶け込み具合も上がってくる中ではありましたが、一方で山本エドワード(以下、エド)のコンディション不良が深刻な状況だったようです。シーズン途中、レンタルで獲得した松山駿(以下、松山)はやはりそういう意味合いが強かったのでしょうか。


 やはりエドのコンディションが悪く「これ以上はプレーさせられない」という状態になりました(※手術後、回復は順調で現在は問題ないとのこと)。そうするとポイントガードが木村啓太郎1人では厳しい、ということです。

― そこでレンタルという手段だったわけですが、そこに至った経緯はどのようなものなのでしょうか。


 松山くんについては実は学生時代から注目していたんですね。富山大学という中央からは目の届きにくいところに居たけど、これは良いじゃないかと。

 ただ当然地元の富山も目をつけてて、そっちへ入ることになった。でもどうやらチームの戦術と合わないみたいで、ずっと13人目(=ベンチに入れない)だった。ウチはそれも知っていたから、この事態になったときにすぐに富山さんに声をかけさせてもらって、条件でもチーム本人ともに承諾してくれて、レンタル移籍が実現した。

― 少ない試合しか見られていませんが、B1から声がかかるだけのポテンシャルを持った選手だと感じました。プレー面について、川辺HCはどのように見てらっしゃいましたか。


 攻撃面は良いけど守備面に課題、特に粘り強く守ることが苦手なように映ったので、とにかく基本的な守備のステップをひたすらやらせました。


 彼は本当に身体能力が凄くて、あの身長でダンクするくらい。なので大学までは運動神経だけで守備もやれてしまっていた。でもプロになると運動神経だけで守ることはできなくて、ちゃんとしたステップを踏む、相手を研究してシミュレーションして臨む、などの準備が必要。それが彼も分かったのではないかと。

― 馬を競走馬にしていくような道のりですね(笑)。一方で攻撃力は素晴らしい。


 シュート力が素晴らしいですし、視野も広く遠くも見られて球離れもいい。若いしこれからが楽しみな選手です。

④シーズン中断と再開準備と中止

― こういった動きでチームが上り調子になったところでシーズンが終了する形になってしまいました。こういう風に話を聞いていると、ポストシーズンでなら信州や広島にも面白い試合ができていたのではないか、と感じます。


 信州にしろ広島にしろシーズン中1つは勝っていて、なおかつ負けたゲームのやられ方はマーシャル(信州)エチェニケ(広島)のダックインが止められないところから守備を崩されたところが大きいんですね。終盤はクリスの加入でそこを互角にやる目処はついていました。

 また信州は攻撃についてコーチの考え方が非常にはっきり出ているタイプのチームなので、そこへの対策はたくさん考えていました。広島についてはどちらかと言うとタレント豊富で、ここぞというところでコーチの意思だけじゃなくてコート上の選手の意思が出てくる、才能あふれるチーム。

 それぞれ違う強さを持っているチームではありますが、そこにたいしてうちがどれだけできるか試してみたかったですね。

― 結局今季、一度も勝てなかったチームはon1状態の仙台の時だけでした。何もできずに負けてしまうような試合もほとんどなかったなど、闘うことはできていたシーズンと言えるのではないでしょうか。そういう意味で、プレーオフ、やりたかったですね。


 シーズンは中断されてましたけど、他の競技で感染者が出た報道の日まではプレーオフの開催を信じて疑わずにひたすら準備していました。その結果が見られなかったのは残念でしたね。

(つづく)

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