ほうかご
自分の年齢に慣れないから意識して声に出して言っている。
通信だから学校はないのだけれど、でも、学校に行けなくて、ていうか、授業が受けられなくて、夜中に不安になってわーわー泣いた。
もう辞めちゃおうかな、と思ったけど辞めてしまったらまた動けなくなるので辞めないことにした。
動かなきゃいけない、生きていかなきゃいけない、と日記に書いた。
0か100しかなくて、0のときは布団から出ることもできずただ重力の言いなりになって1日を潰して、100のときは夜に眠ることもしないで課題を進めた。
毎日ちょっとずつができない。
私の生活は1日24時間じゃなくなった。
夜も昼もうまく来ない。
私はもっと自分を大切にした方がいいし、大切にしてもいいんだってことをちゃんと分からないと生活ができない。
生活をちゃんと続けていきたい。
私はずっと弱いふりをしていれば誰かが助けてくれると思っていた。
ずっとずっと誰かからの助けを待っていた。
だって私、大人たちからちゃんと助けてもらったことがなかった。
助けてほしかった。
助けてほしかったの、ずっと。
でももうだめで、そろそろ自分のことは自分で救わなきゃいけないってことも痛いほど分かってきて、もう守られてるだけの子どもじゃいられなくて、それでもやっぱり助けてほしくて、そういうのを全部全部全部抱えたまま、やっぱり私は私のことを救ってあげなくちゃいけない。
また精神科に通い始めた。
許される、っていうのがどういうことなのかまだちゃんと分かっていないけれど、許されたいとずっと思っている。
それはたぶん学校に行かないことも病院に行くとこもあんまり許されてこなかったからで、自分で自分のことを許してこなかったからで……。
だから病院に行くのもずっと迷っていた。
本当につらいの?病院に行くほど?本当に?みたいなことばかり考えていたし、そんなに簡単に許されてはいけないと思っていた。
だけど病院に行ったらあまりに簡単に許されてしまって、わたし、うまく受け取れなかった。
許され慣れていなかった。
優しさに触れるたび申し訳なくなる。
わたし、自分のこと嫌いなの。
優しくしてもらえるような人間だと思えないの。
なにも返せない。
返せるだけのものをわたしは持っていない。
でも、それでも、優しくしてくれる人がいて、わたしはまだうまく受け取ることができないけれど、いつかちゃんと受け取って、ちゃんと、ちゃんとね、全部お返ししたいの。
ゆっくりゆっくり待っててね。
夏がね、ほんとはずっとずっと苦しい。
重たい季節につぶされて、やらなきゃいけないことをやらずに気持ちだけ焦ってる。
私の大切な人たちはどんな夏を過ごしているのだろう。
手紙を書いたよ。
ちゃんと届いたかな。
この長い季節を一緒に生き抜いていけたらいいね。
また手紙を書くよ。
虚ろな目のままで少女は大人になる。
許すことも、許されることも、自分で決めてやっていかなきゃいけない。
虚ろな目のままで、わたしも。