5月
雨の日が多くなってきて、本格的に季節が変わろうとしているのを感じる。
この季節がとても好きだ。
私が生まれた季節。
心も体もバランスを崩しやすい季節だが、その不安定さやこの鬱々とした空気からどんよりとした微睡みまでもが愛おしかった。
眠くて眠くて1日中眠りこけて、その全てを低気圧のせいにした。
猫が時々やってきて、私の布団に潜ったかと思えば数分もしないうちに出ていった。
やらなきゃいけないことがずっと頭の片隅に居座っている。
時折ふっと思い出しては逃げるように布団に潜った。
それでも布団は世界から私を守ってはくれなかった。
不安で仕方ないけれど何が不安なのかもわからない。
ずっと許されたいと思っている。
言ってることが全てじゃなくて、思ってることすら全てではなくて、そんな色々なことが全部ないみたいになって「大丈夫そうですね」とか言われちゃったら私、もうなにもかもを諦めてしまいそう。
夜に眠れないのも昼に起きていられないのも、いつもちゃんと絶望する。
せめてもう少しだけでも人の形を保っていたい。
もう大丈夫だと思っていたことがまだ大丈夫じゃなかった。
色々思い出してちょっとだけ泣いた。
ずっと大人から見捨てられるのが怖かった。
学校の先生から、塾の先生から、親から。
あの狭い世界が私の全てで、そこから逃げ出す方法も知らなかった。
小学校のチャイムはアマリリスだったのだけれど、中学に上がったら普通のチャイムになったの、なんか嫌だった。
小学校のテストでは問題文が「〜を求めましょう」だったのに中学では「〜を求めなさい」になったのも嫌だった。
大人に好かれる可愛い子どもになれない自分がなにより嫌だった。
許されないと思っている。
それでも許されたいと思っている。
今思えば可愛くなれない私だって可愛かった。
それを大人が分からなかっただけだった。
そして分かってくれる大人もいると知った。
私はどんな大人になりたいか。
小さい頃の私を救えるような大人になれるだろうか。
20歳になったらちょっとだけ大人のふりをして。