離職のドミノ
サンクコストの誤謬の記事で書いたように白いブラック企業では一度始めた仕事は途中でやめることは許されない。それは離職者が出ても同じであり、もちろん離職者の補充もされず残った人間に勝手に割り振られるのである。離職者が出たこと自体には蓋をして、そもそもの管理側・上司側の問題や職場の問題であることがほとんどであるが、そんなことは封印されて表に出ることはない。何もなかったかのように通り過ぎていく。と言うのも、生きて離職した場合、離職した本人も、もはや離脱する職場(会社)がどうなろうと知ったことではないし、変なことを言い残して遺恨などを残したいくない。もしも変なことを言い残して後でどんな嫌がらせや仕打ちをされるかと思うとゾッとする。気心の知れた同僚にはこっそり打ち明けることはあっても、表向きは「自分のやりたいことにチャレンジしたいので」などと前向きな建前的な理由を残すだけで、本当の理由が会社側に伝わることはない。最近では転職サイトの匿名の口コミで散々なことを書かれているから、せいぜいはそういったところで最後のお礼参りをするくらいであろう。
問題職場の腐れ管理職にとってメンタル不調者や離職者が出ることは計算済みである。自分の責任にならないようにロビー活動に手を抜くことはない。普通に考えればメンタル不調者や離職者が出たら責任を取らされるだろうが、うまいこと責任を誰かに押し付けるのである。そして自分のその職場での任期が終わるまで凌げばよいのである。仕事が進もうと進まなからろうと関係ない。次の寄生先へ移ったら知ったことではないのである。自分は働きたくないし責任も取りたくないクソな管理職がいる職場はこのように最悪である。
何度も言うように離職者が出ようとも仕事が変わることはない。離職者が持っていた仕事は「今だけ」「ちょっとだけ」などと言って一回でも引き受けたらそのまま正規の担当としていっちょあがりである。あとは強制的に割り当てた担当がやれたらラッキー、やれなくてもその担当の責任にすればよいのだ。できないからと言って腐れ管理職が責任を取らされることはない。全部他人のせいなのだ。
だから離職者が出ると部下たちの負担が増える。増えてもフォロー体制はない。会社はフォロー体制があると言うだろうが、それこそ形式的なものばかりで機能していない。形式的なものを用意さえすれば万一のことがあったときに訴えられないためだ。何かあっても誰かがトカゲの尻尾として責任を取らされるだけ。本丸は傷つくことはない。
そうして末端社員たちは責任と負担を乗せられまくって、追い詰められて離職の道を選ぶしかなくなるのである。一人が辞めれば、残った人間お負担が増え、さらに離職者が増える。そしてさらに仕事が積まれ、ドンドン倒れていく。こうして白いブラック企業は離職者がドミノのように連鎖していくのである。
それでは、どうしたらいいのか?
残念ながら、一度この状況(スパイラル)に陥ると回復は難しい。管理職側を変えたとしても、下が現状のマインドから簡単には抜けられない。周囲の支援組織(組合や産業医、総務部門など)もたとえ正しいお達しが出たとしても裏読みをして「そうは言っても実際は現状維持しないと自分が痛い目を見るだろう」と思い変わらない。みな変わらないのである。大きい組織ほど変わらないし変えられないのだ。
もし本気で改革をやるつもりなら、一気に全部を変えるようなことは考えない方がよい。まともな人間を見極めて小さい聖域を作って正しく育てることだろう。そこで小さい成功体験を積み重ねながら、徐々に大きくして育て、置き換えるしかない。大きく膨れ上がった白いブラック企業はもはや全部を一気に変えることなどできないのである。