ベスハチとの出会い⑦ ロックで殉死!ライヴ現場の世界・中編その5
【前回記事↓】百戦錬磨なベスハチの多種多様な企画ここに極まる
前回、
Elizabeth.eight(エリザベス・エイト)こと
ベスハチ が、
アイディア満載の企画の数々によって
ライヴの現場をさらに盛り上げてゆく様と、
ザ・ハンズインポケッツと共同でインディーズバンド業界に宣戦布告をしたという話を書いた。
今回は
そのベスハチとハンズインの
インディーズバンド業界をざわつかせたツーマンライヴについてと、
同時並行の自身の音楽体験を書いていく。
如何にしてベスハチの音楽にたどり着いたか。
わたしの通ってきた道と少しでも道が重なるのであれば、
これからこれを読むあなたには、
ベスハチを好きになる素質や素養がある。
そう思う。
▼ デスマッチツーマン
完全無所属のインディーズバンドである
エリザベス・エイト
ザ・ハンズインポケッツ
の2バンドが
2010年12月
渋谷AXでのツーマンを行う
という衝撃の告知がされる中。
そこに至るまでに、
『狂犬VS女王蜂 デスマッチツーマン』
と銘打ったタイトルで
定期的に新宿MARZにて
ツーマンライヴイベントが敢行されることとなった。
そのツーマンというのも、
『あの』ベスハチという企画の怪物によるイベント。
ただのライヴイベントとは訳が違った。
そのイベントは
ステージではなく観客用のフロアに
2バンド分の楽器をセッティングし、
ベスハチ・ハンズインが転換無しで
1曲ずつ交互に演奏するという
銃撃戦の如きデスマッチ形式で行われ、
それに付帯して
ファッションデザイナーのSICK_FUCK氏による
ベスハチとハンズインのメンバーをモデルに
綿密に練り上げられた物語が展開してゆく、
観客体験型シネマティック形式の
斬新なスタイルのライヴ。
フロアライヴであったり、
転換無しで切れ目なく進行するライヴ、
ストーリーに沿って展開される演劇的な形式など、
これまで行われてきた数々のベスハチ企画の
集大成のようなイベントであった。
内容としては、
ライヴハウスMARZのある
新宿・歌舞伎町を舞台に
ベスハチのミワユータ総帥こと女王蜂、
ハンズインのフジタ興奮氏こと狂犬、
互いを殺すよう命じられた
凄腕の殺し屋という設定で、
各バンドの曲や
曲間のバンド同士の掛け合い等と
連動しながら物語が進んでいくというもの。
また、
この物語上で彼らを拾ったという暗黒街のボスと、
殺し屋組織の幹部構成員クロコダイルの2役を
劇団ザ♂グレイトフルモンキーズの
リーダーYAMATO氏
(ベスハチ主催イベント常連の 現 劇団GuReM♂♀Nの釈迦堂ヤマト氏)
が演じた。
このイベントはライヴ会場で、
観客の入場時に
複数ある職業カードを選んで
物語の役割を与えられるほか、
各公演自体に留まらず、
特設サイトで
物語の世界観や人物の設定、
各場面の掛け合い等の読み物が公開されていたり、
観客が物語の中の登場人物の一人として参加できる
承認制SNSのようなものも存在し、
渋谷AXのツーマンライヴの宣伝活動を担うレジスタンスという立場で物語に介入することができたりと、
様々な角度から楽しめる
全く新しいエンターテイメントだった。
以下は各公演の様子である。
第1回公演
[EPISODE:0]
の当時のセットリストのメモ、順不同で
・アンデッドマンのテーマ
・エヴリデイ・ダイ・デイ
・エレベーターガール
・シェパードのジミー
・はきちがえんな。
・君に会えた
・トランジスタシス
・ジェットコースター・ドライブ
・pm11:45
・銃声に鳴る彼のタンバリン
・ミッドナイトロデオガール
・ジャンパピン
・クックドゥールブギー
・他新曲2曲
・ケダモノギア(アンコール)
物語のプロローグとして、
狂犬と女王蜂が初めて遭遇して殺し合いをするという内容。
この前年にリリースされた楽曲をメインに、
既存の曲をも複雑に絡ませながら物語が進行していった。
第2回公演
[EPISODE:01 The Murderer Of Murderers]
当時のセットリストメモ、順不同で
・アンデッドマン
・エレベーターガール
・シェパードのジミー
・NOREADY号
・現実逃避ラヴィ
・新曲(タイトル不明)
・嘘とバスタブ(新曲)
・ジャンパピン
・ゾンビーナ
・クックドゥールブギー
・銃声に鳴る彼のタンバリン
・ミッドナイトロデオガール
・ジェットコースター・ドライブ
・つがい
・ケダモノギア(アンコール)
劇団グレモンのYAMATO氏によるヴォイス・シネマパートが光っていた回。
女王蜂を見逃した狂犬が組織の裏切り者として、
組織の殺し屋クロコダイルに命を狙われるという内容。
この掛け合いは音声のみで行われ、
YAMATO氏のあまりの演技力の高さに感服するばかりであった。
この回についてはセットリストのメモが残っていなかったが、
入口で配られる職業選択のカードを使用し、
空き時間中には観客参加型の裏切り者を探しのイベント等もあり、
本編以外の要素でも楽しめたようだった。
また、
この回もクロコダイルの演技が印象的だった模様。
当時のわたしのメモに、
「このドラマCDが販売される機会があったら欲しい」
と書かれている程だった。
第4回公演
[EPISODE:03 Everyday Die Day]
以下は当時のセットリストメモ、順不同で
・エヴリデイ・ダイデイ
・はきちがえんな。
・ジェットコースタードライブ
・ゾンビーナ
・つがい
・嘘とバスタブ
・エレベーターガール
・銃声に鳴る彼のタンバリン
・ミッドナイトロデオガール
・ロッキンコインランドリー(アンコール)
ベスハチの楽曲『エヴリデイ・ダイ・デイ』がタイトルとなっていた回。
本編としてはこちらが最終回という形に。
この回はベスハチとハンズインツーマンではなく、
番外編として
8バンド出演の転換なしフロアライヴ4セット、
というイベントに。
赤コーナー=ベスハチ、
青コーナー=ハンズイン と、
それぞれ3バンドずつ味方をつけ、
VS形式でライヴが進行された。
もちろん、
それぞれのバンドにも物語上の役があり、
狂犬VS女王蜂の物語の重みを増す要素となった。
基本は各バンドの楽曲演奏と
MCでの狂犬と女王蜂の掛け合いを
交互に行うスタイルで進行し、
ツーマンでもほぼ休憩無しで、
トータルの公演時間は2~3時間に及んだ。
まさに現場に来なくては味わえないライヴで、
音楽ライヴの枠を超えたミュージカルのようでもあった。
ベスハチの前身バンド時代、
演劇的な演出で進行するライヴをやっていたことは知っていたが
わたしがライヴに行き始める頃には
既にそのようなライヴは行っておらず、
そんなに面白そうなものがありながら観られなかったことを
当時から大変悔しく思っていたものだったが、
これらの公演により、
当時の悔しさは浄化されたように思う。
この各公演を経て、
物語上の最後
ボスの待ち受ける決戦の地として
アックス・ヒルと名付けられた
SHIBUYA-AX という場へ誘われるのだった。
▼ ライヴ or 創作活動 or DIE
ベスハチとハンズインの
デスマッチツーマンが行われていた
2010年以降、
わたしの方は
絵本や絵の出展活動が本格化し、
月1程のペースで
何かしらのイベントや展示会への出展の予定を詰め込んでいた。
月に数度観ていたベスハチも
イベント出展日程との被りであったり
出展準備で時間を要してくるようになり、
毎月ライヴを観ることは叶わなくなってきていた。
これだけ音楽を浴びてきてインプットしながらも
自分の中にあるものをアウトプットせずにいるとは何事か、
という強い衝動でもあり、
つくづく、
何か予定を詰め込まずにはいられない性格であるがゆえのものだった。
ただ、
この目まぐるしい活動が高じて
以前からベスハチを観てきたライヴハウス、
渋谷ラママから数10メートル圏内にあるギャラリーカフェでの展示会に出る機会も得られ、
勝手に熱い気持ちになったりもしつつ、
実りのある年にはなった。
創作活動、出展活動、準備期間、
その合間をぬってのベスハチライヴとその他のバンドのライヴだったが、
作業中のおともであったり
イベントで観ていたものを中心に、
今回もまた同時期に音楽体験したものを貼っていく。
例によって
興味のない方は次の章まで飛ばしていただき、
興味のある方は、
当時の空気感と共に音楽で追体験してもらえると嬉しい。
MONICA URANGLASS(モニカ ウラングラス)
Open Reel Ensemble(オープンリールアンサンブル)
太平洋不知火楽団(たいへいようしらぬいがくだん)
不完全密室殺人(ふかんぜんみっしつさつじん)
ザ・フロイト
SEXY-SYNTHESIZER(セクシーシンセサイザー)
monokuro(モノクロ)
SCOOBIE DO(スクービードゥー)
ザ・ビートモーターズ
andymori(アンディモリ)
この頃は特に、
特定のバンドのワンマン以外でライヴを観ようと思うと、
移動時間や予定の兼ね合いで中々難しいこともあり、
イベントやフェスで観たいものが数組出演するタイミングで
音楽仲間との集まりを兼ねて一緒くたに観てしまう、
ということが多かった。
ただ、
活動の合間をぬって観ていたということもあり、
この付近の年では
狂犬 VS 女王蜂 デスマッチツーマンが
最も鮮烈で、
最も強く印象に残っていたライヴであった。
今でもなお、
「あの時のような体験が出来たら」
という思いがずっとある程に、
わたしにとっては強烈な体験となっていた。
▼ 革命の日
2010年12月14日。
いよいよ運命の日。
ベスハチとハンズイン、
完全無所属インディーズバンドである彼らの
SHIBUYA-AXでのツーマンライヴ。
待ちに待った日であり、
当然 楽しみではあったが、
何より
AX以前に経るであろう規模の箱を
完全にすっ飛ばしたような形であり、
2バンド合わせても
普段の箱の何倍分ものキャパシティの箱である。
それが埋まる程の人が集まるのか、
という不安もあった。
そして
わたし個人の活動としても、
この日はAXと同じ渋谷で
ラママ近くのギャラリーカフェで行われる展示会の初日でもあり、
当時から活躍していたイラストレーターさんやアーティストさん方の中に混じっての参加で、
正直言って
場違いな空気すらも感じられる展示会だったため、
二重三重にも緊張していた。
そして、
実際のSHIBUYA-AXでは。
AX入りしてからは、
ベスハチとハンズインのメンバーによる
公演の諸注意的な場内アナウンスがあり、
これからツーマンだというのに、
緊張感のないフリートークぶりに
こちらもやや緊張が解される思いだった。
ステージ上にセッティングされた、
2バンド分の楽器セット。
ただでさえだだっ広いAXで、
高いステージを見上げながら、
ベスハチとハンズインの2バンドが観られる。
感無量、だけでは足りなかった。
わたしは普段のメジャーバンドのライヴではまず来られないような、
ステージど真ん前の
どセンターに位置取りした。
スタートまでの約1時間半、
過去に観てきた数100バンドの中でも
わたし自身、
生涯絶対に追い抜くことの出来ない回数のライヴを観てきたベスハチが、
このAXという場所でライヴをすることについて
思いを馳せるのに費やした。
来るスタートの19時。
開場から開演まで
ここまで長い時間待つのも初めてだったが、
その間にも、
わたしの背後では
10人や20人の会話が聞き取れるレベルではない、
確実に『群衆』となった人々の騒めきに変わっていた。
ライヴも始まる前から、
既に感極まってしまっていた。
色々な感情が入り混じるライヴでもあり、
細かく覚えていないことが悔やまれるが、
狂犬 VS 女王蜂 の物語は
狂犬と女王蜂の2人に
殺し合いをさせようと画策した組織のボスと
SHIBUY-AXことアックスヒルで決戦する
というものだったが、
物語の要所要所で登場していた
殺し屋組織の幹部構成員である
クロコダイルの正体が
暗黒街のボス
という衝撃の展開となった。
劇団グレモンのYAMATO氏による2役の演じ分けもあり、
完全に別の人間という認識のもと展開されるストーリーでもあったので、
当時は会場の観客も
「まさか!!」
という思いで観ていたことと思う。
ライヴとしては
デスマッチ形式は維持しつつも、
AXという場所で
ベスハチの『銃声に鳴る彼のタンバリン』が聴けたこと。
フロア中観客でいっぱいだったおかげで、
AXという場所で
ベスハチの曲でモッシュできたこと。
ずっと、ずっと、
夢見ていたことだった。
それがとうとう、叶ったのだ。
ハンズインのみだが、
当時のAXの映像がまだ残っていた。
たくさんの人が詰めかけたAXのフロアを観て欲しい。
こんなにも、
楽しい以上の感情の沸くライヴも、
過去に類を見ないものだった。
最後に
ベスハチの『つがい』演奏の際、
ミワユータ総帥の背後からスポットライトが当たり、
わたしの位置からは
ちょうど後光がさしているように見え、
ああ、
あなたがロックの神だったのか、
と思った。
その後ろでハンズインのフジタ興奮氏が泣く姿が見え、
もらい泣きしそうになるも、
最後まで目撃せねばの思いで、
泣くのをぐっとこらえた。
完全無所属インディーズバンドによる
AXでの前代未聞のツーマンライヴではあったが、
両バンド共に素晴らしいライヴを見せてくれ、
革命の夜は、
誰もが『大成功』の文字を頭に浮かべ
愛、歓喜、期待、不安、希望、畏怖、嫉妬、驚嘆…
あらゆる感情が入り乱れ、
全身に強く刻まれるものとなったのだった。
▼ 溶けゆき加速する時間
2011年に入り、
ベスハチとハンズインの
AXでのツーマンライヴを終えてからというもの。
わたしは展示会やイベントで忙しく、
ベスハチのライヴともタイミングが合わずにいるうち、
3月11日
東日本大震災が起きた。
その日は、
普段お世話になっていたギャラリーカフェに
知人の作家さんの個展を観に行っていた。
古い住宅の密集する地域で
狭い路地に瓦屋根が散乱している状態で、
電車も止まっていたこともあり、
安全を優先してギャラリーカフェで一夜を過ごさせてもらった。
それから暫くは自粛ムードで
展示活動も控えていたのだが、
チケット確保済みのライヴで
中止にならなかったものだけは足を運んだほか、
逆に自粛ムードの反動で
音楽仲間が大元のゲーム仲間と、
毎週のように集まったりしていた。
そんな中
同年5月には、
ベスハチの恒例イベントである
『女王誕生祭。を主にシカトする祭り』は
例年通り開催された。
また、この日はベスハチの新譜のレコ発イベントでもあった。
兼ねてよりライヴで披露されていた曲が収録された
1st Maxi シングル
『Zombiena』
である。
わたしとしては、
ベスハチが観られたのも約半年ぶりであった。
シカト祭りのシステム上
1バンドあたり3曲程度しかライヴを観ることはできないが、
たった3曲でも、
久しぶりにベスハチが観られたことに歓喜し、
おおいに踊り、楽しんだ。
その後の6月、
シカト祭りにも出演していたバンディッツと
ベスハチの2バンドによるツーマンライヴと、
10回目の開催となるナノベス企画。
ナノベス企画の日は、
ちょうどベスハチのギターマン こふじ氏の誕生日だったこともあり、
何故かこふじ氏のコスプレをした人間で溢れていて、
相乗効果でお祭りムードの楽しい日でもあった。
同年の11月には、
渋谷O-Crestでのベスハチワンマンも開催された。
どのライヴでも、
男女分けモッシュが発生する程に盛り上がり、
もみくちゃになり、
跳ね踊り暴れ、
存分にロックンロールを浴びた。
驚いたのが、
2023年から始まったベスハチのファンクラブ的生配信
『のぞき穴』で
最近 披露されていた
『サイコビリーカウボーイ』が
このワンマンで初披露されていたようだった。
↓普段は有料の会員制になるが、こちらは無料回。
のぞき穴で披露され、
好きな曲のひとつになったこの曲だが、
何故こんなにもかっこいい曲の存在を覚えていなかったのか。
というのも。
展示活動もそれなりに忙しく、
その合間をぬって、
ベスハチの重要イベントには足を運ぶ。
そんな日々が続いたある日。
突然、
10年近く続けてきたライヴ生活を
終了せざるを得ない時がやって来た。
これに他ならないからであった。
次回へ つづく。
この頃にやっていた曲で特に好きだった曲。
『ゾンビーナ』と迷ったが、
より自分の好みに従った結果こちらを。
2023年現在でも、
演奏される度に痺れる曲だ。
【↓次の記事へ】
【↓前の記事に戻って読む】
【↓最初から読む】