ベスハチとの出会い① 前身バンドとの出会い
【前回記事↓】ベスハチとの出会い以前④ 2000年代前後からはじまる邦楽ロック生活
前回、
Elizabeth.eight(エリザベス・エイト)こと
ベスハチ に出会う以前の、
わたしの音楽人生、はじまった!!!
な体験について書いた。
寄り道が多かったこのシリーズも、
いよいよ今回、ベスハチ!!
…の、前身バンドとの出会いについて書く。
今現在のベスハチとイコールの存在ではないが、
今のベスハチの土台となる重要な要素のひとつである。
今に至るまでの通過点であり、
わたしの原点となる。
如何にしてベスハチの音楽にたどり着いたか。
わたしの通ってきた道と少しでも道が重なるのであれば、
これからこれを読むあなたには、
ベスハチを好きになる素質や素養がある。
そう思う。
▼ あつめて まとめて、青春ロック
バンプにハマって以降のこと。
延々同じものを聴いていると、
バンプに対しても新鮮味が薄れてくるため、
ちょくちょく他のものも挟みながらのローテーションで聴く事になる。
箸休めという訳ではないが、
中でもよく聴いていたな、というのが下記のようなラインナップだった。
ポルノグラフィティ 『オレ、天使』
永井真人 『Eじゃん-Do You Feel Like I Feel』
大槻真希 『RUN! RUN! RUN!』
坂本真綾 『マメシバ』
林原めぐみ『灼熱の恋』
川本真琴 『月の缶』
奥井雅美 『Shuffle』
SURFACE 『その先にあるもの』
JUDY AND MARY 『Rainbow Devils Land』
くるり 『ブルース』
GRAPEVINE 『Our Song』
所謂『THE A面』な曲よりも、『B面』的な雰囲気の曲を聴き込むことが多かった。
そして基本的にオタクなので、
どうしてもアニソン中心になる。
アニソンの括りで聴くことのメリットとしては、音楽ジャンルをベースに選曲していない分、
先入観無しで あらゆるジャンルの音楽を味わえる事だ。
音楽番組が垂れ流されている環境なら、ラインナップもまた違っていたと思う。
この中でいうと くるり と GRAPEVINE に至っては2023年現在でも、途中のブランクを挟みながらもスタメンとして聴いているが、
当時はバンプ至上主義でもあったので、
そこまで強く刺さらなかったようであった。
(音楽経験値を上げてやっと良さに気付いた)
こういったものを挟みながら、
バンドもの(というかバンプ)を中心に聴いていると、
楽器隊として矢面に立つメンバー以外の音(音を聴いても何の楽器かわからない、楽器を鳴らしている感のない音)が 鳴っている事に、
自分の中で若干の違和感が出てくる事にも気付く。
カラオケ音源の情緒も何もない、無味無臭な音を聴いているような感覚。
(それらは大体がシンセサイザーだったりもするのだが、それに気がつくのはだいぶ後だった)
そんな形で、バンプで得た音楽体験を元に
バンドもの以外の音楽をなぞることで、
好みの傾向と、新たな発見や気付きが出てきた。
聞きたいのは、
やはり頭にガツンとくるようなロックだな、
とも思った。
その結果、ロックな楽曲×バンプのようなバンドサウンドを求めて自らが掲げたのが、
『青春ロック』。
青春ロックというカテゴライズに相当する音楽は今でこそ豊富にあるし、
それでいうなら GOING STEADY あたりは、時代的にもジャンル的にもど真ん中に位置するだろう。
(青春パンクという方が正しいか)
ただ、バンプのオタクだったわたしは、
メロコア(メロディック・ハードコア)周辺のバンドは一切目に入らずに突き進んでいたので、
ここでこの音楽と出会っていたら、また別の音楽人生を歩んでいた事と思う。
ではここで言う『青春ロック』とは。
バンプの音楽に浸りながらも、
自分の真に求めるロックをがむしゃらに追い続けて喰らっていこう、というようなハングリー精神とも言える、
自分の中の一本柱・スローガンのようなもの。
あくまでも自分の中でのものだし、
現在一般的に言われる『青春ロック』とはまた別物で、その言葉が使われるようになる前の話だ。いわゆる『アオハル』的なものとも違う。
この一本柱を掲げる事により、
まだまだ石橋を木の棒で叩きながら進み始めた音楽人生も、
ハンマーでフルスイングしてカチ割ってヒビ入れながら進んじゃってもいいじゃない。
そんなスタンスで楽しんで行けるようになった。
要は、
受け身でただTVから流れてくるものやヒットチャートからばかり摂取するのではなく、
自らの意思で捕りに行く。
そういう心持ちの自分ルールである。
▼ TVっ子、懲りずにドラマから履修する
バンプにハマったり、過去の音楽から気付きを得たりしてから、しばらくの事。
同年の秋頃、
久しぶりにハマるドラマに出会った。
滝沢秀明、椎名桔平、藤木直人 等が出演する、
『アンティーク 〜西洋骨董洋菓子店〜』。
劇中の音楽は全て Mr.Children の楽曲が使用されているという変わり種のドラマだ。
その頃ともなれば、
バンプによって男性ヴォーカルのバンドにもすっかり耳慣れており、
かつて観ていた音楽番組ではあれだけ敵視(?)していたミスチルであったにも関わらず、
すんなり受け入れている自分がいた。
【敵視していた頃の参考記事↓】
劇中の、色とりどりで趣向を凝らしたデザインのケーキの存在感に惚れ惚れしながらも、
絶妙なタイミングと選曲で使用されるミスチルの楽曲に舌鼓を打つような感覚だった。
ミスチルをバンプと共に聞きながら思ったのは、
やはりバンドサウンドが好きである、という事。
それも、特定のパートが突出して良し悪しがあるとか、個性の主張するようなものでもなく、
楽曲のために共に全てのパートが調和して、
全てのパートが同列に格好良いという音。
複数の人間が集まったバンドという形態でありながら、
全員がひとかたまりの存在というような。
もちろん わたしは昔から、
パートとしては人間の言語を発するヴォーカルの音に着目しがちなのだが、
それはヴォーカルありきという事ではなく、
楽曲全体をまとめるための重要なスパイスとしての役割がヴォーカルなのだ。
そういった意味でも、
バンプやミスチルのようなバンドは特に全体の調和が取れていて、非常に耳馴染みが良かった。
これは恐らく、母の胎教やサブリミナル的な形で母の聞く洋楽を摂取してきた事も影響しているように思える。
【↓参考記事】元パンクス母による音楽生活
このドラマ『アンティーク』の終盤頃、
ちょうどその頃の友人関係で色々あってセンシティブな時期でもあったので、
ドラマの内容と使用曲とが相まって、余計に自分の中に響いた。
しかし最終的には、
ドラマがあまりにも素晴らしかったので、
自分の中でもドラマとミスチルの楽曲が
一緒くたにパッキングされたような感覚になり、
ミスチルをそれ以上深堀りする事もなければ逐一楽曲のリリースを追うこともしない、
というところに落ち着いたのだった。
(※特定のゲーム音楽を聞きたい時はCDじゃなくゲームをプレイする、という感覚に近い。音楽を聞くだけでも良いが、音と映像とストーリーが合わさって初めて生まれる感動や感覚を噛み締めたいという気持ち)
▼ 生音の良さというもの
バンプやミスチルによってバンドの音の良さというものを実感していた頃。
友人と共に宇都宮へ買い物に行く機会があり、
かの有名なアーケード商店街であるオリオン通りを歩いていた時の事。
かつてそこにあったCDショップの新星堂の前を通りかかると、店の横のスペースに何やら人だかりができている。
何だろうかと友人と近づいてみると、
どうやらストリートライヴをやっているようだった。
背が高くすらりとした立ち姿の男性がひとり、ギターを抱えている。
特に予定らしい予定もなかったので、せっかくだから観ていこう、となった。
軽い気持ちで立ち寄ったが、
歌い始めた男性の、
オリオン通り中に響き渡るような圧倒的声量の良く通るやさしい声に、やさしいギターの音。
それはかつて、Bluem of Youth を武道館で初めて観た時の、全身に降り注ぐような音を浴びた体験を思い出させた。
【↓参考記事】ブルームの1曲を聞くために行った初武道館
とにかく圧巻のライヴだった。
素晴らしいストリートライヴを披露するその男性は、名を 千綿ヒデノリ といった。
彼はこの数年後に、
TVアニメ『金色のガッシュベル!!』の主題歌を歌う事で一気に知名度を上げた男性ソロアーティストである。
最初に聞いたものとはあまりにもイメージとかけ離れてるので、
起用されたと知った時は思わず爆笑してしまった。(すみません)
当時のこのストリートライヴというのが、
上記にも貼ったシングル『祈り』の発売記念のライヴだったらしい。
最高の音楽を聞かせてくれてありがとう…
の気持ちで、
わたしも友人もその場でシングルを購入し、
なんやかんやでちゃっかり握手までしてもらったのだった。
この時点で体験して覚えているライヴは、
・Bluem of Youth @武道館
・banana fish @後楽園遊園地(ストリート)
・千綿ヒデノリ @オリオン通り(ストリート)
という、
偶発的に観たような感じの よくわからないラインナップとなってしまっていたが、
(幼少時のポール・マッカートニーは覚えてないため、ここではノーカン)
総合的には、
生の音って、良いものだ。
という感想だった。
全身で生の音を感じるという感覚は、
大音量のCD音源を流すだけでは得難い体験であった。
この体験が、
さらに わたしの音楽人生を拓く事となる。
▼ 人の波に『それ』を見た
それは確か、
冬だったか、春先だったか。
当時 高校生だった わたしは、
普段の学校生活とは少し離れた界隈の人間関係で、やや問題を抱えていた。
周囲の人間よりほんの少し早い時期から続いていた、ネット漬け生活。
これの延長で付き合いのあった友人(以下友人H)がおり、
多感な時期の出会いだった事もあり、
様々な感情の入り交じる、凝縮された濃い時間を共に過ごした。
この友人Hと共によく出入りしていたチャットサイトでは、夜は賑わうが早朝は人もまばら。
ネットのしすぎで両親からも叱責される事が多かったわたしは、
やむ無く家族が寝静まっている早朝にチャット入りする事が多かった。
早朝でチャットルームに人が居ないのを良い事に
ひたすら好きな曲の歌詞を書き込むひとりカラオケ状態になるのが恒例だったが、
閲覧のみのROM状態なメンバーでも知っている曲だとわかれば即座にチャット入りして反応をくれたし、
その場にチャット相手が居なくとも、
わたし個人としてはタイピング練習の感覚で楽しく打ち込んでいた。
そんな中 書き込んでいた曲の歌詞のひとつが、
以前ストリートライヴを観ていた、
banana fish というインディーズバンドの曲。
【↓参考記事】後ろ楽しいガーデンで観たやつ
インディーズバンドなので、もちろん誰も知らない前提で書き込んでいたのだが、
どういう訳か、
これを見ていた友人Hが
banana fish を知っているというではないか。
ただ、同名タイトルの、
吉田秋生 原作の漫画『BANANA FISH』や
サリンジャーの小説『バナナフィッシュにうってつけの日』
等も あるため、
もしかしたら互いに勘違いしていた可能性も否めない。
なにせ、歌詞の中には『バナナフィッシュ』という単語が入っている。
ただ、当時のわたしの中の『バナナフィッシュ』というと、
インディーズバンドの『banana fish』か、
そのセルフタイトル曲の『バナナフィッシュ』
の2パターンのみだった。
実はあのストリートライヴ後かなり経ってから、
バンドのホームページを見た。
当時ネットを覚えたての わたしからすれば、
人様のホームページは
どこぞのホームページに張られたリンクを辿って閲覧するものであり、
ブックマークの存在すら知らずにいたので、
気に入ったホームページがあれば
URLを丸暗記するという、
デジタルなのにアナログな方法をとっていた。
今でこそググるというスラングが生まれて久しいが、
当時のわたしにとっては
ネット検索という概念も存在していなかった。
そんなわたしがバンドのホームページを見ることができたのは、
大事に大事にとっておいた、
当時のストリートライヴでもらったフライヤーにホームページのURLの記載があったためだ。
ここには、当時のライヴで聞いた曲の歌詞と音源が載せられていた。
当時 知人やその周辺のホームページばかり見ていた自分にとって、
ネット上で聞けるのはせいぜいオルゴール程度のシンプルな音データばかりだったので、
バンドの音が歌付きでネット試聴できるのが新鮮だった。
ただ、
このバンドにそれ以上踏み込めなかったのは、
音源を買うにはライヴ会場に行く必要があり、
かといってホームページから取得した音源を聞くには、PCを立ち上げている時に限られた。
ライヴ会場に行くという発想がなかった当時は、
ひとまずこの音源をPCで時折聴くに留まった。
そんな形でひっそりと聞いていた、
TVに出ている訳でも、
音源が全国流通している訳でもないこのバンドの名を、
知り合ったばかりの友人が知っている。
それだけで、
どこか運命めいたものを感じてしまった。
その友人Hとは幾度か流れの上で衝突する事があったが、
幾度目かの衝突の際、
『ああ、これはもう今後会うことは無いやつだ』
と思わされる事態に発展した。
(今にしてみれば、全然そんなことはなかったのだが)
ただ、それもよくある他愛もない言い合いの末での事で、
1年程の付き合いでは相手の性格を把握しきれない部分もあってか、事態を異様に重く捉えてしまい、
当時はそんな風に感じてしまった。
この後、
この友人Hとの関わりはパタリと途絶え、
しばらくの間は、
ぽっかりと穴の空いたような日々を過ごした。
そんな中でふと思い出したのが、
友人Hと出会って間もない頃にカギとなっていた
banana fish の存在である。
何年かぶりに、ギリギリ覚えていたbanana fishのホームページのURLを打ち込んでみた。
すると、
なんと閲覧できなくなっているではないか。
何年も見なかったうちに、バンド活動をやめてしまったんだろうか?
思った以上にショックであった。
考えた末。
『青春ロック』の精神でいくならば、
ここは開拓すべき時なんだろう。
という事で、
CDショップには行かずに、
インターネットで新規開拓をする事にした。
ネットを始めたての頃には知らなかった検索という技を駆使して、
さあ行こう、無限の彼方へ。
とはいえ、探すにあたっても何らかのとっかかりは必要である。
そこで、banana fish で失った穴を埋めるべく、
女性ヴォーカルのバンドを探す事にした。
必須条件としては、
ネット上で音源の試聴が可能であること。
ただ検索という技を覚えたからといって、
検索語句の組み合わせによって精度が上がるなんて事は、当時はもちろん知らない。
検索で入力した語句としては、
『バンド』『女性』『音源試聴』
等の、かなりざっくりとした単語のみ。
何の工夫も無しに、これだけで探し始めた。
検索結果としてはそれなりに出て来たが、
いざ覗いてみると、
ケータイサイト的な簡素な作りで必要最低限の情報すら得られなかったり、
試聴用音源が設置されていなかったり、
試聴できたとしても全く好みでなかったり、
素人目に見てもクオリティの低すぎるものだったりと、
中々 自分の琴線に触れるものは見つからなかった。
探索を続けるうち、
あるバンドのホームページが目に留まる。
the lovemachine(ザ・ラヴマシン)
という、紅一点女性ヴォーカルのバンド。
やや暗いイメージのサイトではあったが、
しっかりとした作りのホームページに、
試聴用音源も設置されている。
掲示板もそれなりに稼働している様子から、
バンド活動も活発なのだろう。
banana fish のホームページを最後に訪れた際も、
活動しているのかしていないのか等の状況のわかるものがなかったので、
そういう意味でも不安要素は見られなかった。
では、肝心な音楽の方はどうか…?
音源試聴ページのトップにあった、
『常夜灯』
という曲を早速再生してみる。
…衝撃だった。
まず、どのバンドサイトに設置されていた音源よりも音質が良い。
そこにまず驚いたが、
何よりも、
楽曲としてのクオリティが異常に高い。
えっ、これインディーズバンドだよね???
と、改めてホームページの隅々まで見て、
このバンドが確かにインディーズバンドである事を確認した。
ヴォーカルの女性の歌唱センス。
曲の構成。
郷愁も感じられるような全体の世界観。
詞から止めどなく溢れてくる情景イメージ。
それらを支える演奏の安定感。
全てが、もう。
完全に、出会ってしまった。
そう。
このバンドが2023年現在、
Elizabeth.eight(エリザベス・エイト)こと
ベスハチ となる以前の、
前身バンドである。
幸いにも、
音源の通販をしてくれるようだったので、
通販可能な音源を全て購入した。
ジャケットやレーベルのデザインも、
それぞれにきちんとこだわって作り込まれていた事に驚いた。
改めて全て聴いてみて、
メジャーバンドと見紛うような楽曲センスとクオリティに驚かされた。
当時としては、まだまだ大々的にネットを活用するバンドは少数派だったのかもしれないが、
とんでもない化け物が潜んでいたものだ。
ネットは広大だわ…。
▼ 発車のベル、準備もなく、人生の特急列車は
音源を購入してからというもの、
あれだけ聴きまくっていたバンプそっちのけで、
the lovemachine(通称 ラヴマ)を聴き込んだ。
ラヴマのヴォーカルの女性・美輪ユータ氏の歌は、どこか椎名林檎を彷彿とさせた。
椎名林檎 というと、
当時のウブな小娘のわたしには刺激が強すぎる、
といって敬遠していたものだったが、
ラヴマの曲は美輪ユータ氏による歌や詞の内容こそ女性的ではあったものの、
不思議と性的ないやらしさのようなものは感じられなかった。
椎名林檎を音楽的に敬遠していた訳ではないし、
かといってラヴマと椎名林檎を横並びにして比べてしまう意味も自分ではよくわからないが、
楽曲の世界観としても、
ラヴマの方がより自分にフィットしたのだった。
そうしてラヴマを聴き込んでいくうち、
ホームページもちょくちょく訪れるようになった。
ホームページ上の掲示板がそこそこ賑わっており、
ファンや知り合いとおぼしき書き込みのほか、
ホームページの管理人を名乗る人物が、
ラヴマの出演するライヴの出番が何バンド目であるか等を書き込んでいた。
しばらく掲示板で賑わう様子を見つつ、
学校でのテスト期間を挟み、
再びホームページを訪れた際。
テストが終わってやや早帰りのこの日、
タイミング良く、
管理人がライヴの出順を書き込んでいた。
『今日の出演順は3番目(●時●分~)』。
掲示板の様子をしばらく観察していると、
大抵は平日のライヴで、
出番も当日のギリギリの時間に発表されており、
場所も埼玉という事で、
書き込みのタイミング的にもトチギからでは間に合わないな、と思う事が多かった。
そもそも、ライヴに行く気があるのか?
自分でもよくわからなかったが、
この観察だけは続けていたのだ。
それが、
この書き込みの通りの時間になるなら、
めちゃくちゃ急いで行けば間に合う時間。
よく考えるより先に、体が動いた。
メールでその日のライヴの予約を済ませ、
(掲示板に書き込みしての予約だったかもしれない。遠い記憶すぎる)
バタバタと最低限のものだけ持って家を出た。
自転車に乗り、矢のようなスピードで最寄り駅へ向かう。
途中で、
かの友人Hと行動を共にしていた地元の友人Yと遭遇した。
「久しぶり!どこ行くの?」
「今からちょっとライヴ行ってくる!!!」
説明すると長くなるので手短にその場を後にし、
なんとかギリギリで電車に飛び乗った。
電車にゆられ、乗り換えを繰り返し、
辿り着いたのは自身の完全未踏の地、
埼玉は北浦和。
北浦和駅から真っ直ぐのびた広い道を進むと、
右手にミスタードーナツが見える。
そういえば、なにも食べてない。
いやしかしそんなこと言ってられない。
目的地はその先の交差点に建つ雑居ビル。
入り口、か…? と一瞬迷うほど、
看板も何もない、のっぺりとした壁面。
北浦和Ayers(エアーズ)だ。
初めてのライヴハウスでシステムが全くわからずまごつきながらも、なんとか会場入り。
階段を降りてホールに入ると、
よくある会社の事務室を彷彿させる白っぽい壁面は、防音大丈夫?と不安になるくらいに、こざっぱりとしている。
ステージの高さも異様に低い…。
全体的に、ぼんやりとイメージしていたライヴハウス感とは、やや異なっていた。
若干不安になりつつも、
少しの待ち時間を経て、すぐにラヴマのライヴが始まった。
ホームページ上の写真でも異彩を放っていた美輪ユータ氏は、
タイト目なパンツにTシャツを着た上から、朱色の柄が入った長襦袢のようなものを着て、黒い羽がフサフサしたストールを巻いている。
うわあ、本物だ…!
とドキドキするのも束の間、
ラヴマの楽曲の中でも最も聞き倒した
『常夜灯』が披露された。
他の事はもう覚えていない。
夢のような時間だった。
体の表面を隙間無く突き刺してくる、
生音の感覚。
音源で聴くのとは、
完全に一線を画すものだった。
こんなものを知ってしまったら、
もう普通に生活する事など無理だった。
そのくらい、わたしには衝撃の体験だった。
ライヴというものの良さに加えて、
あらゆる面で、
足りなかったピースがかち合ってしまった。
ここから、
ラヴマを追いかける日々が始まったのだった。
次回につづく。(まだゴールじゃないです)
変身をするたびにパワーがはるかに増す。
その変身をあと2回も残している。
そういうことなのだ。
まさにこの気分。
大好きな曲のひとつ。
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