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失われた心を求めて~銀河英雄伝説 Die Neue These (31)感想

 *しずかなインターネットに掲載しているものの加筆修正です。
 *私は残念ながら原作は三巻まで(アニメで放映されている範囲)しか知りませんので、先の展開は分かりません。

 ラインハルトとヒルデガルドの感情が深まっているなと思った31話でした。

 ヒルデガルドには従弟がいました。キュンメル男爵。
 彼は病弱で、ラインハルトが現れる前までは、ヒルデガルドの愛を一身に受けた存在だったのだろうと思います。
 個人的にヒルデガルドはキルヒアイスと真逆で、他者への感情の理解が乏しいように見えます。友達がいる描写もありませんし、言葉の端々から奇妙な冷たさを感じます(犬に対する扱いとかな!)。
 ですが、彼女が唯一といっていいほどに愛情を注いだ存在がキュンメル男爵だったのではないかなあ、と思いました。

 一方で、ヒルデガルドはどうしようもなく一人の男性に惹かれています。ラインハルトです。まさか、アンネローゼとブリュンヒルトに次ぐヒロインが、これほどまでにラインハルトを愛しているとは個人的に思いませんでした。

 ヒルデガルドのしようとしている(ラインハルトの心を取り戻す)ことはお節介だし、他者の領域を侵害しています。でも、キルヒアイスの魂ごとヴァルハラに連れていかれたラインハルトの感情と良識を取り戻そうとするヒルデガルド……ヒルダは、童話「雪の女王」のゲルダの如く、氷に閉ざされているラインハルトの心を溶かそうとします。
 これからの帝国の物語は、さまざまな政治劇があるでしょうけれども、骨幹のところは、ヒルダがラインハルトの失われた「心」を取り戻すまでの物語なのではないでしょうか。

 ラインハルトのほうも、ヒルダとは「言葉」を交わします。ローエングラム元帥府の部下たちとは言葉らしい言葉を交わさないのに(それゆえにロイエンタールとミッターマイヤーはラインハルトの真意をうかがい、他の提督たちはラインハルトに心酔し、オーベルシュタインは真意などないほうが楽だと思っているのですが)。
 ただ、この「言葉」の応酬がひやりとします。ヒルダはラインハルトの人間性を取り戻すため、非人間的なことも言ってのけるからです。

「国家、組織、団体、どういってもよいのですけど、人間の集団が結束するには、どうしても必要なものがあります」
「ほう、それは?」
「敵ですわ」

 ヒルダの微細な表情から、これがラインハルトから「幼帝は殺さない」という「心を取り戻すための」言質を取るためのブラフだったのではなかろうかと思います。

 さらにヒルダは、おそらく不慣れだというのに、ラインハルトの心に踏み込んでいきます。そして、彼女は真実に近いある仮定に辿り着きます。

 ――もしかしたら、閣下の御心にはまだ、キルヒアイス提督が生きていて、目も耳も、そのお心のうちの提督に向けられているのではないだろうか。

 こんなにラインハルトにしっとりとした愛のこもった言葉がかけられたのがひさしぶりで……。

 ラインハルト自身も「貴女(ヒルダ)と話すのは楽しい」と話しています。おそらく彼も彼女との「言葉」のやりとりに、希望とまではいかなくとも、「何か」を見出しているのでしょう。

 ですが、ガイエスブルグ要塞に立ち入ったとき、ラインハルトはヒルダに対して「誰も入ってきてはならん」と扉を閉めます。ヒルダは、ここにおいてラインハルトの傷がなみなみならないほど深いことを知ります。

 オーベルシュタインが完全には理解できず引き裂いてしまった「ラインハルトとキルヒアイス」という関係を、ヒルダは正面で受けることになったのですが……オーベルシュタインとヒルダが対比されている描写が目立つなかで、ここはかなりのターニングポイントだと感じました。ヒルダは「ラインハルトとキルヒアイス」という関係を理解するヒントを与えられたのです。

 彼女と彼がどういう道を歩んでいくのか。
 果たしていつ「アレクサンデルくん」は誕生するのか。相変わらずローエングラム元帥府の裏庭にパイナップルみたいに生えてくるのをラインハルトとヒルダで収穫するものだと信じています、が。
 なんとなくマイケル・ナイマンの美しいピアノが印象的な「The Piano」とかアベル・コジェニオウスキの「W/E」のなかの「Dance for me Wallis」が似合いそうな二人になってきている予感がするので、保健の教科書で習った内容で生まれるかもしれませんね。

でさ。

 あぁぁぁぁあああああああああんなカッコイイワープシーンありえますかあああああああああああああああああああああああああああ ガイエスブルグ要塞ワープ実験最高にかっこよかtったああああああああああああああああ

 このために銀英伝DNTを見ているってえええええ……もうかっこよすぎるってえええええ。

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