キルヒアイスに未来が無い……〜銀河英雄伝説 Die Neue These (20)感想
最近キルヒアイスの作画に後光が差してる。あと何話で死ぬんだ。いっそ一思いに殺ってくれえええ(推しに対する発言とは思えない)
キルヒアイスがこのクールの最後で死ぬとしか知らないので、不治の病にでも罹るのかなと思っていたが、あと四話という段階になっても不調を訴える様子はないし、「未来が無い」というクソデカ死亡フラグが今回立ってしまった。
ヒヤヒヤする。
オーベルシュタインが全力で通信を切りそうなシーンから始まる。なんでオーベル先生いないの。有給消化だろうか
ラインハルトのキルヒアイスに対する発言がひやっとする。キルヒアイスを危険視してんのか。皇帝(?)になることを目標に頑張っている人間が、褒めるという意味で親友に王という言葉を使うだろうか。その言葉にキルヒアイスが笑顔で返したので「ラインハルトに謀反する気なのかな」って心臓ばくばくした
オーベル先生来てーーーーーーーーーッ!!!通信切って!
オーベルシュタインの苦労がすごく伝わってくる。
友達とか友情とかは不変なものでは無い。少しの刺激で関係が変化してしまうことも。でもラインハルトはまだ幼くてそれを知らない。純粋にキルヒアイスに依存して、ライナスの毛布みたいに握って離さない。ライナスの毛布だから自分のそばから離れないようにNo.2にし続ける。
例えばキルヒアイスを幼年学校の教官にしてしまったり(似合ってそう〜)、実戦には出さずに制服を脱いでもらい、官僚として働いてもらったりと、ラインハルトと完全に引き離してしまう手もある。けれど、伏兵役ができ、智略に優れたキルヒアイスの優秀さは欲しい。しかし、今まで通り副官として置いておけば、ラインハルトは1から10までキルヒアイスのいうことしか聞かない。なのでキルヒアイスをなるべくラインハルトから遠ざけ、将軍としてこき使うしか無い。
キルヒアイスは微笑んでいる。前も思ったけど、「政治」「保身」に本当に興味のない子なんだなぁ。純粋。危険。もうあかん。性格は落ち着いているけれど、その点に関してはまだ二十一歳の未熟な人間なんだなあ。まあ、もし「政治」「保身」に興味があれば宇宙艦隊副司令長官という職を拝命することはないだろう。
だってラインハルトに疑われたら、全く未来が無いから。
ラインハルトのこの言葉とキルヒアイスの表情の柔らかさ、あまりに幼すぎて泣けてしまう。二人の青年の人生を、銀河が生まれ変わるための生贄として、みんなで寄ってたかって潰している。
オーベルシュタインがもしこれを聞いてたら胃がバッキュンバッキュンドッキュンドッキュンしそうな会話だっただろう。キルヒアイスを潰すのは、彼自身とラインハルトの「幼さ」なんだ……
でもその「幼さ」は年齢を考えると絶対必要なんだよ……むしろその年で保身とか政治を考えていたらフレーゲル男爵みたいになっちゃうじゃん?
全盛期のキルヒアイス伝説
キルヒアイスとルッツ、ワーレンの三人組が出陣する。お互い敬語であり、ラグジュアリーでルクソスで非常に自律神経にいい。そういえば泣いちゃったビッテンフェルトを慰めてたりしてましたね。今まで、パワハラインハルトとか暴言と暴力の飛び交う救国軍事会議とかイかれたリップシュタット貴族連合とかそんなのばっかり見てたせいでものすごく良いトリオを見させていただいた感がある。
ただ、シュペリエルな帝国高級将校たちのせいかあんまりに折り目正しすぎてお上品で、どうしてもイゼルローンでのヤンさんたちのざっくばらんでフランクな関係と比べてしまう。
宇宙艦隊副司令長官でなければ、ルッツとワーレンはまだ若輩のキルヒアイスの髪の毛をぐしゃぐしゃ撫でながら先輩ヅラしてくれただろうか。
……キルヒアイスが全盛期すぎた。
・3戦5勝は当たり前、3戦8勝も
・キルヒアイスにとっての勝利は戦略の立てそこない
・ローエングラム元帥府全員重傷の状況から1人で逆転
・一回の出撃でバルバロッサが3隻に見える
・バルバロッサに乗るだけで相手貴族が泣いて謝った、心臓発作を起こす貴族も
・敵を一睨みしただけで要塞が一個潰れる
・戦闘の無い日でも2勝
・戦艦使わずに素手で戦ってたことも
おかげでルッツとワーレンの活躍がよくわかんない。活躍してるけどキルヒアイスがつよすぎる。
キルヒアイスの特技としてのほほんと突っ立ってるだけで敵が仲間割れを起こして滅びるというのがあるけど、今回もそれが遺憾なく発揮されていた。
たぶん、この人は心理戦がものすごく得意なんだと思う。
同じ知将でも、ヤンさんは「この人はこう動くだろう」という予測が得意なのだろう。だからラインハルトのいやらしい策謀も読み解くことができた。反面、キルヒアイスは「こういう風に人を動かすにはどうしたらいいか」という計算が得意なんだろう。だからラインハルトのパワハラもやめさせることができるのだろう。
こんな子を潰してはいけないですよ。ねえ!オーベルシュタイン先生!そう思うでしょお!
俺を肯定し続けてよ
焦土戦をやり核攻撃を見逃したクソ野郎が銀河の覇者になるのかよ
さすがに今回のラインハルトはひどすぎだと思う。この子、キルヒアイスがいないと自分の良識メーターが極端に低くなるんだな……逡巡はしているけれど、最終的にひどい献策を受け入れちゃうところがなあ……。
オーベルシュタイン先生自身もこれは悪手だとわかっているだろう。いつもドロンとした目が切羽詰まっているのが印象的だったから。
意外とリップシュタット貴族連合との戦いに苦戦してるのだろうか。悪手でも早く戦争を終わらせたいという思いが垣間見える。これ以上戦争が続けばラインハルトの立場もふとしたことがきっかけで危うくなる。
たぶん先生からすると、ブラウンシュバイク公が自身の所領のヴェスターラントを攻撃すればブラry公は補給どころか生活ができなくなり、自動的に破滅してくれるからだとは思うのだが……
でも戦争を早く終わらせたいという理由で核攻撃容認するとか、リベラル系のローエングラム元帥府でさえナチュラルに下層民への差別が見えるのが帝国キッツイ
ラインハルトは随分と変貌してしまった。もし1クール1話のラインハルトなら核攻撃見逃しを自身で判断することはなく、それこそキルヒアイスに電話一本入れて相談していただろう。そしてキルヒアイスは「それはだめです」といい、オーベルシュタインはボコボコにされて二度とラインハルトの前にくることは許されなかっただろう。
でもそれではダメだとわかる知恵がラインハルトについてしまった。キルヒアイスのように保身も「政治」も知らないまま、美しく清廉実直に生きることは自分には許されないのだと知ってしまった。だからオーベルシュタインを重用する。
ヤンは先ごろジェシカを失い青春と決別し、修羅の道を進んでいくことが示唆されたけれど、今回はラインハルトが少年である自分と決別しなければならなくなった。
でも、ラインハルト本人はそれを知らないところがエグい。ただ、キルヒアイスが青春の甘くやさしい瞬間を夢に見ている。アンネローゼと、ラインハルトとの。キルヒアイスはほんのりとアンネローゼに向かって頬を染めている。アンネローゼはキルヒアイスにだけ声をかけている。
銀河の覇権などどうでもよく、弟の健康や今日のケーキの出来具合、新しい家の様子など、身近なことに幸せを感じる優しいアンネローゼと、政治や保身を知らない清廉なキルヒアイス。
核攻撃を容認したラインハルトがこの夢を見ることはない。彼は清浄な二人がいる静かで穏やかで優しい、天国のような世界には夢でさえ立ち入ることができない、別の人種になっているということがキルヒアイス自身の夢から示唆されて心が痛い。
ヤンは自分の青春がなくなったことを自覚できたけど、ラインハルトは自覚できていない。ただ、キルヒアイスだけが知っている。そしてそのキルヒアイスは。
ラインハルトの真意を確かめるという今まで簡単にやってきた行為をあきらめようとするほど、ラインハルト自身と、彼の関係に絶望している。
オーベルシュタインの登場から、いままで積み上がってきた些細なズレが、気がついたら埋められない溝になっていた。
ラインハルトは内心ではなんとなく気づいているのに、その溝を見なかったことにしているから、冒頭の「辺境星域の王」という言葉を使った危険な会話でキルヒアイスを無意識に試しているんだろう。
大丈夫だよね、俺のこと嫌いになってないよね、俺のこと見てくれてるよね、ずっと俺の味方だよね、俺を肯定し続けてよ、お願いだよ、俺を守ってよ、でないと俺たち、終わっちゃうよ……と。
思えばラインハルトが核攻撃を悩みながらも容認したのは、「キルヒアイスが戻ってきて罪悪感まみれの俺を慰めてくれる」という甘えがあったのかもしれない。
まとめ
・つらい
・アンネローゼとキルヒアイス、ラインハルトとヒルデガルドや、ヤンさんとフレデリカ/ジェシカよりかなり激しめな恋愛なはずなのに全く描写されないの、息をひそめて観察してくれってことだね……?(あ~でも一番激しいのはヤンさんとジェシカかもな~)