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食糧支援が必要なのは、ガリガリの子だけではないんだ

国連食糧農業機関(FAO)の報告会に参加した。
タイトルは「世界の食糧安全保障と栄養の現状」。このテーマの最新データやSDGsのゴール2である「飢餓をなくす」に向けた進捗と課題を共有する場だった。

私の軸は教育にあるけれど、食糧にも関心を寄せている。どれだけよい教育を提供できても、子供がそれを十分に吸収できる状況にないと効果が発揮されないと思っているから。生命維持に必要な食糧・水・保健衛生が教育効果を上げるための重要要素ではないかと個人的に考えている。
今回参加したのはそういうわけである。

気になった話題はたくさんあるのだけれど、このnoteでは1点だけ取り上げたい。
過体重について。


食糧支援というと、食べるものがないやせ細った人たちへの支援を想像する人は少なくないだろう。私も、エチオピア飢饉(1984年)時のやせ細ってほぼ骨と皮だけなのに歩く子供の写真を見てショックを受けた一人である。

今もこういう食べるものがない人は、確かに存在する。
でも今の食糧支援は、食べ物が全くない人だけのためのものではない。
食べられればなんでもいいわけではなく、食べるものがあっても「健康な体を作るための栄養のあるもの」である必要があるからだ。

そこで問題になってくるものの1つが過体重。
過体重の定義としてFAOは世界保健機構(WHO)の「BMI値が25以上」を採用しているようだ。過体重は健康を脅かすものとして「中度の食糧危機(moderate food insecurity)」とされている。生活習慣で予防ができる非感染性疾患(Non-Communicable Diseases; がんや糖尿病など)の大きなリスク要因だからだ。
必要な栄養は足りていないのに、食べるもののカロリーは多くて過体重になる人がいる。


なんで私が過体重を気にしているかというと、これがまだ「食糧危機」と認識されていないのかもしれないと思った出来事があったからだ。二本松で派遣前訓練を受けている時だった。

二本松市のPRポスターを作成する活動で、菊祭りが開催される霞ヶ城公園に行ったとき。祭りに訪れていたおじいさんに話しかけられて、どんな脈絡だったか忘れたが青年海外協力隊の訓練生であると話した。その時のおじいさんの言葉が私には衝撃だった。

「よくテレビとか見ていると『貧しい子たちに寄付を』って流れてくるでしょう。あんなんでちっちゃい子供が泣いてるんだけど、その子を抱えるお母さんなんか見るとよく太ってるんだよね。ああいうの見ちゃぁ寄付する気にはなんないなぁ。」

確かに自己管理ができずに太る人もいるかもしれないけれど、
栄養のあるごはんって高いんだよな
ジャンクフードのほうが安いんだよな
太る=(栄養的に)十分に食べているではないんだよな…
などなどいろんな想いが駆け巡った。でも短く簡単には答えられなくて、もやもやしたままあれからもう2年経つ。
ハンス・ロスリング氏が『ファクトフルネス』に書いていたように、私たちの知識はアップデートが要る。


確かに過体重は扱いが難しそうだ。
金銭的余裕や選択肢があるのに本人の好みによって栄養があるものが選ばれなかった結果生じることも、少なからず考えられる。

でも広まってほしい。
今や食糧支援が必要なのは、ガリガリの子だけじゃないんです。


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