まさか、神様を「アンタ」と呼ぶなんて
エチオピアには語学フォローアップ(FU)制度がある。着任半年~1年くらいの隊員を対象に5000ブル(約15000円)を上限とした現地語訓練費と、地方隊員であれば必要に応じて交通費・宿泊費をサポートしてもらえる。
私たちの事前訓練は英語、現地訓練ではアルファベットでアムハラ語を6週間やったら赴任であった。街にあふれているのはアムハラ語固有の文字:フィダルだし、英語を話せる人が多くないのでありがたい。
フィダルでアムハラ語をやりたくて、私も受けることにした。お役所で見る書類、全部フィダルなんですもの。
先生は自分で全部手配する必要がある。
さて、いい先生は…?と思っていたら、現地語訓練のとき別クラスを担当していた先生がやってくれることになって助かった。
JICAを知ってる人、というだけで楽である。
制度を使うにはFUを始める前に見積書・日程表・申請書を出して承認される必要がある。1週間くらいかかるのだが、お金が絡むとせっかちでシビアになりがちな人たち相手に見積書の必要性やら時間がかかることやらを説明すると地味に労力がかかるのです。
先生はアディスアベバ大学で教鞭もとる上品なおじさま。敬虔なキリスト教徒。車の運転中でも教会の前を通ると目礼して十字を切る。それは怖いからやめてほしい。。
がっつり学者肌の人で、新隊員には受けが良くなかったそうだが私はやりやすい。フィダルでやりたい、といったら喜んでくれた。
とても都合のいいことに、多分私たちが最初にやった事柄を細かくは覚えていないようで、何をしても手放しで褒めてくれる。
そんな先生から聞いた授業中に聞いた話が今日のタイトル。
アムハラ語の文法をじっくりやるのも楽しいけれど、現地語を通して文化を学ぶのもとても面白い。
前回のレッスンでは呼びかけの言葉の話をした。
年上の男性には?同年代の人には?女性には?
アムハラ語には敬語がある。英語なら2人称は全てyouだけど、普通の「あなた」と丁寧な「あなた」がある。フランス語のtuとvousのようなものだ。
「女性に対して敬語(目上の人に使う言葉)で呼びかけると『私がそんなに年寄りに見えるっていうの!?』と相手を怒らせるから注意しなさい。たとえ明らかに年上の人であっても。」とアドバイス頂いたので、この現象は結構いろんな国で起こるものなのね。
驚いたのは、神様に対しては尊敬の意味が入らない「あなた」を使うということ。
え、皆あんなに敬虔な人たちなのに?
さらにアムハラ語の男性に対する「あなた」はአንተと書いて「アンタ」と読む。つい日本語のそれを思い出してしまって、そっか…神様はアンタって呼ばれるのか…と2重の驚きだった。
そういえばエジプト隊員がエジプトでも男性2人称はアンタって言っていたから、エジプトでも起こる現象かも知らん。
これだから語学は面白い。
トップ画はだんだんこなれてきた私のフィダルと、読むのに苦戦する先生のフィダル。
最後が読めん。