で、やるの?やらないの?
れんちゃんに問われた瞬間、心臓がドクンと跳ねた。その言葉は血液にのって全身を巡り、体の隅々に行き渡って、今でもふとしたときに声がする。〝で、やるの?やらないの?″
いつものドラマーさんがいない日。ドラム叩いたほうがいいかなぁ、でも自信ないなぁって思って、結局叩かなかった。そんな練習後、れんちゃんに、あおいちゃんはドラム叩かないの?と聞かれた。やっぱりそう思う?なんて生温い返事をしたら、で、やるの?やらないの?って返された。
誰が何を言うかなんて関係ないよ。あんたはどう思ってるのさ?ってつきつけられたみたいで、言葉に詰まった。話題はさらりと流れて、結局答えを返すことはなかったのだけれど、ぐさっとささったれんちゃんの問いは、ずっと心を離れずにいた。
本当は、やりたい。
その気持ちを、認めるのが怖かった。言葉にするのも怖かった。みんなに迷惑かけちゃうかもしれないし、音楽崩れちゃうかもしれないし、下手だって思われたくないし、やれる人がやればいいし、なんて、全部言い訳だ。下手でもいいから楽しくやろうよ、チャレンジしようよ、って、人には言えるけど、自分には言えない。だって自分の評価が目に見えちゃうのは怖い。しょうもないことやってるななんて、思われるのも怖い。
でも、やりたいんだよ。本当は。やってみたい。
思い切って、スタジオ予約して、練習を始めた。スタジオに自分ひとり、なのに、最初は音を出すのも怖かった。スタジオの外に聞こえるかな、下手と思われるかな、使い方間違ってないかな。誰に何を言われたわけでもないのに、不安な声が聞こえる。一番の敵は、結局自分だった。
これが、私のやりたいことだ。
って、胸を張って思っていい。口にしていい。一歩踏み出していい。やってみてもいい。私の歩む姿を見ててって、言ってもいい。
怖くても、進め!
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