休みのたびに熱を出してしまう、頑張りやのあなたへ
仕事や家事育児や勉強、毎日それぞれの持ち場でおつかれさまです。
今日は春の嵐のせいかどんよりした体調なので、もっとどんよりした体調だった頃のことと、そこからの脱出劇を書いてみようと思う。
社会人になって何年かは、長期休暇のたびに高熱を出していた。
盆と正月にもらえる5日間程の貴重な連続休暇。休暇初日に新幹線で実家に帰り、久々に誰かの手料理を食べて、美味しい嬉しいと思うのも束の間、食事後すぐ気分が悪くなり、そのまま寝込む。というルーティーンだった。休暇最終日まで実家で寝込んでようやく熱が下がり、新幹線で帰宅。次の日から何事もなく出社。
せっかくの休みなのに、すべてを寝るために費やしてしまう。悲しかった。39度前後、大人だと生死をさまよう気分になるレベルの熱を、半年に1回出している自分は、何かがおかしいと思った。休日診療にかかったこともあるが、インフルエンザは陰性で、ただの疲れでしょうという診断だった。
まるで、強制的にリセットされているようだった。休みの日に高熱を出して体内を殺菌消毒して、また何かを身体の中に貯めて、の繰り返し。仕事に支障が出ないだけマシか、と考えていた自分は、なかなかの社畜だったと思う。
想像以上の負荷がかかっていることを、自分自身認識できていなかったのだ。おバカな脳みその代わりに、身体は正直で、その後も次々とSOSを出してくれていた。
繁忙期で電話が山のように鳴るのに相手の声が全然聞こえなくて、「電話、壊れてません?」って周りの人に尋ねたら、壊れていたのは自分の耳だった。片耳が聞こえなくなっていた。不便すぎて耳鼻科にかかったら、熊のような風貌の先生が心底同情するといった様子で、「お仕事大変でしょう。ほどほどにしてくださいね。」と言ってきた。ストレス性の突発性難聴だった。
本当に。常に気を張って仕事をして、誰かに頼るとか、倒れることも休むことも、許されないと思っていた。同僚がそんな状態だったら絶対に「お願いだから休んで」「もっと頼っていいよ」って言うのに。自分に対しては、そう思えなかった。
1ヶ月以上咳が止まらなかったこともあった。日に日に増していく咳のひどさにフラフラしていたら、同じチームの同僚に頭を下げられた。「お願いだから病院に行って。休んでください。その分俺が仕事するんで。」彼も同じように大変なはずなのに。自分自身は、他人にここまで言わせるほどの状態だったのか。正直びっくりしたし、申し訳なかったし、言ってくれてほっとする思いもあった。
早退して病院行って薬受け取った後、自宅近くのパンケーキ屋さんで遅いランチをした。大きな木製のシーリングファンが天井をゆっくりと回り、はちみつのねっとりとした香りが漂っていた。ハワイアンなウクレレの音楽、近くの学校からあふれてくる部活に励む声、窓の外をのんびりと通り過ぎる小豆色の電車、飾られた春色の花たち。パンケーキはフワフワで甘くて美味しかった。
久々に、五感を動かした。目の前に、これだけの景色が広がっているというのに。何にも感じていなかった自分に、初めて気が付いた。その瞬間、喉がすっと通って、久々に深く呼吸が出来た感じがした。
「つらい」とか「苦しい」とか「怖い」とか「嫌い」とか。感じてしまったら、もう、走れなくなってしまうから。見ないフリして、なかったことにしてきた。そうしたら、「気持ちいい」も「嬉しい」も「楽しい」も、よくわからなくなっていた。結果、自分がどんな状態にあるかも、気付けなくなってしまっていた。しょうがないじゃん、これが私の現状だ、って、ようやく受け入れられた。
その後は、「ランチのとき、本当に食べたいお店に行く」「コンビニで、飲みたいものを選ぶ」「お風呂につかって、気持ちいいなぁと感じる」みたいな、本当にささいな「心地よさ」を選ぶことを、リハビリのように地道に練習し続けた。
同時に、「怖いから、一緒にやってほしい」「つらくて苦しいから、助けてほしい」ということを、決死の覚悟で口にするようになった。思い通りにならないこともあったけれど、自分がそういう気持ちなんだと自覚するだけで、意外と心が軽くなるものだとわかった。
そうしているうちに、休みのたびに熱を出したり、突発的に謎の体調不良に襲われることが、少なくなっていった。
身体は正直だ。何か不調があるなら、それは立ち止まってみようというサインなんだと思う。自分が自分で思っているより弱くて使えない人間だとしても、結局はそれが現実で、現在地点を見つめない限りは、何度も振り出しに戻ってしまう。
毎日一生懸命頑張っていて、休みのたびにぐったりしてしまう、かつての私と同じような人へ。本当に本当に、頑張っているよ。立ち止まっても、誰かに助けを求めても、いいんだよ。自分が楽になる道を選んでも、いいんだよ。認めて受け入れて、心地よいものを選んでみてほしい。自分に優しくしてあげてほしい。思っているよりきっと、世界は優しいから。
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