「あなたは何者ですか」 大学を卒業し、会社を退職し、組織という看板をおろした時に、あらゆるひとからまず問われることでした。拙い自己紹介に、伝わったような、伝わっていないような、微妙な結果を繰り返して、私はほとほと困ってしまいました。 「わたしは何者か」 それは、一言で言えるものではないし、言葉で語り尽くせるものでもないし、昨日と今日では違うし、あなたとわたしの関係性によっても変わるものでしょう。 小さい頃から本を読むことは好きでしたが、感想を言うことは嫌いでした。言葉にす
引っ越しの多い人生だった。一番長く住んだ町で、7年。33年間で13の場所に住んでいるようだから、コマギレを通り越して粗めのミンチ。 小さい頃は引っ越しのたびに大泣きしてこの世の終わりのような日記を書いていたし、全校集会で転校生として紹介される時には気持ちがキュッとなるのをなっていないふうに歌舞くのがだんだんうまくなった。 地元、という感覚が分かりきらない。 「まちに帰る」「いつもまちに待たれている」「自分もそこに連なっている」という感覚は、ふとしたときの強いよりどころなのじ
気がづけばもう春ですね。 就職や進学や転職や出産など、「これから」の話をする機会が、この冬は不思議と何人かと重なった。大事な人たちであったので、真剣に応えたいと思いながら話したけれど、ひとり反省会が止まらない。 こと、人生の重要な局面において、求められていないのに、踏み込みすぎることは迷惑である。相手のことを凡そも分かっていないのに、足りない欠片を勝手に補完し語れば間違えそう。 つい、びびって、伝える言葉を控えてしまう。 しかし、自分自身の転機を振り返ると、他者の言葉に