心音・心雑音についてすこしずつまとめてみる part1 (心音編)
循環器を勉強する上で、単純なようで難しいのが心音です。
Ⅰ音・Ⅱ音・Ⅲ音・Ⅳ音だけでなく、各弁における狭窄音、逆流音などいろいろあります。
疾患ごとにどういう心音・心雑音が聞こえるのかを試験で問われるのですが、正直1番苦手な分野でした。
ただ、いろいろ血行動態を理解するとだんだんとわかってきます。
自分がつまずいたところ、覚えにくかったところなどまとめてみます。
前提として、心臓において知っておかないといけないこと
1の補足:弁が開いたり、閉じたりするのは勝手に弁が動いているのではなく、あくまで心筋が収縮拡張して、それに引っ張られて弁が開閉します。
2の補足:物理の概念がわかっていれば大丈夫です。窮屈(圧が高い、狭い)ところから広いところに液体は流れます。心臓内においては重力は無視して結構です。
3の補足:小さな川を勢いよく流れるときに川の音が大きく聞こえるのをイメージしてもらえれば心臓内の音もイメージがつきやすいです。あるいは摩擦音が聞こえる感じでしょうか。
上記を頭に入れたうえで次へ続きます。
心臓に関係する音は大きく分けて
1 弁が閉鎖する音
2 血液が弁を通るときに聞こえる音
3 心室壁の振動音
です。
このうち、正常で聞こえるのが1の「弁が閉鎖する音」です。
なんで弁が開く音が聞こえないの?の理由が「3 心臓内の音は、「圧が高い」、「血流が早い」、「狭いところを血液が通る」際に聴取される。」にあります。
弁が閉鎖する音の代表が1音ですが、これは僧帽弁・三尖弁が閉鎖する音です。正確には、「心房から心室に血液が流れた後、心室が収縮を始め、圧が急激に高まった際に、僧帽弁・三尖弁がその圧に押されて急激に閉鎖する音」、がⅠ音です。
下記左側の僧帽弁閉鎖と描かれているところ、赤色の「左室圧」と緑色の「左房圧」の急激な圧力差で僧帽弁が閉鎖するので莫大な音が聞こえます。
一方で、右側の僧帽弁開放のところをみてもらうと、「左室圧と左房圧がほぼ同等の圧になることで弁が押されなくなり、僧帽弁は開放」します。なので自然と緩やかに弁が開放するイメージです。なので音は聞こえません。
例外はもちろんあり、僧帽弁狭窄症などのような弁が動きにくい状態だと無理矢理、弁が開放することによる開放音が聞こえたりすることはありますが、ここではいったんスルーします。
僧帽弁の続きは大動脈弁ですが、今度はイラストの右上です。
大動脈と左室の圧がほぼ同等だったものが、心室の収縮が終わったことで急激に左室圧が減少し、大動脈圧>左室圧となることで、大動脈弁が急激に閉鎖をします。
一件、大動脈弁が開放する音がうるさいイメージがあるかもしれませんが、これも左上のイラストのとおり、あくまで左室圧が大動脈圧と同じまで上昇することにより、圧格差がなくなることで弁は開放されます。
ここはなかなか良いたとえが思い浮かばないですが、同じ圧同士での弁の開閉は音がならないと理解してもらうしかないかもしれません。
大動脈弁が開くとき音が聞こえてる!という場合は、それは実は弁ではありません。
「2 血液が弁を通るときに聞こえる音」です。
心臓内の急激に高まった血液が、「狭い」大動脈弁を「勢いよく」通ることで聞こえることがあります。これがいわゆる心雑音です。
心雑音はまた次の章でまとめます。
残った最後の心臓の音が
3 心室壁の振動音
となります。これは血液が思いっきり心室の壁にぶつかったときに心室が震えることで聞こえる音で、3音と4音が該当します。
したがって心音は1-4音と言われていますが、3・4音は性質も原因も大きく異なる音です。
さきほど、思いっきりぶつかった音といいましたが、左心房から左室に入るときの血液は圧としてはたいした物ではありません。
僧帽弁開放が起きた後の血圧が低い段階で、どうして左心室が振動する(音が鳴る)のか、ということが重要になってきます。
それは以下の2つの段階に分けられます。
3 僧帽弁が開いた直後に血液が左心室に流入する
4 左室が硬く広がりにくい状態で無理矢理左房が収縮し、血液が流入する
勢いがたいしたことなくても「血液が多い」、あるいは「左室が小さい・広がりにくい」、と心臓がぶるぶる震えることで音が鳴ります。振動音なので弁の音と異なり、低音で非常に聞こえにくいです。
聴診器を押しつけるのではなく、そっと添えるだけ、そして聞こえると思い込んで聞くと聞こえてきます。
上記の3が3音、4が4音です。
3音は僧帽弁が空いた直後に、左房から左室にどっと血液が流れ込んできたときに壁にぶつかって聞こえる音ですが、
4音は左房にたまっている血液を全部左室に入れたいけれども、「心室が硬くて広がらずに十分な血液が入り切れていない」ときに左房が無理矢理血液を押し出して心室内に届けたときに心室が震えて聞こえる音です。
したがって、下の通り、1→2→3→4という順番で音が聞こえます。
3音、4音を勉強しているときにどっちが正常でも起こりうる?どれが心不全?とか迷うときがあると思います。
あらためて
3音は僧帽弁が空いた直後に、左房から左室にどっと血液が流れ込んできたときに聞こえる音です。
なので、1つは血液量が多いと聞こえます。ほかには左室の壁が固いときに血液が心室にぶつかって聞こえます。心室がやわらかい場合は大して音は鳴りません。
血液量が多い、というのがうっ血性心不全もそうですし、僧帽弁逆流のように、心室の血液が左房に戻ってくるせいで、左房内の血液が大量にある場合も該当します。
また、若くて元気な人(スポーツ心臓)や妊娠中(赤ちゃんのぶんも血液が流れる)の人も元気いっぱいの心臓で大量の血液を運搬できるのでこれに該当するわけです。
一方、硬い心室に血液がぶつかるというのが拡張機能障害があるという時です。拡張機能障害を簡単に言うと、心筋が硬く柔軟性が落ち、うまく広がらない状態。心肥大、老化や心筋梗塞後などなど。
イメージとしては3音は超元気な心臓の人、あるいは心臓が弱り、心不全になっている人です。重症であればあるほど大きな音が聞こえます。
そして次の4音です。
4音は左房にたまっている血液を全部左室に入れたいけれども「心室が硬くて広がらずに十分な血液が入り切れていない」ときに左房が無理矢理血液を押し出して心室内に届けたときに心室が震えて聞こえる音です。
硬い心臓というところは少し3音と似ていますが、血液流入の時期が違います。拡張期の最後のほうで無理矢理左心房が血液を押し出して、心室が震えるのが4音です。
したがって、拡張機能障害が基本的にはこちらに該当します。
よく注意点で挙げられるのは、左心房による押し込みの血液流入ですので、心房細動のように左房が収縮していない病態では4音は聴取されません。
そしてここでは血液の量ではなく、心筋の柔軟性が問題とされます。
したがって、4音は心筋に異常がある人だけが聴取される心音です。ただし、必ずしも重症心不全の人から聞こえるわけでもありません。あくまで拡張障害がある人から聞こえるので、単に老化心臓や心肥大でも聞こえます。
逆を言えば4音だけ聞こえた場合は心不全になる前の前段階の心臓と判定することも可能です。
3音は正直2音の分裂やopening snapなど近傍にあり、個人的にはよほどはっきり聞こえない限り聴取が難しいことも多いのですが、4音は1音の前で単独で聴取可能です。
もうすこし簡単にわかりやすくまとめたかったのですが、いろいろかいていると長くなってしまいました。
以前から少しずつ描いていた心音、心内圧、心電図などをまとめたグラフを最後に載せますので参考にしてください。
心雑音については次の章でまとめます。
続きはこちら。
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