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〜京都の山奥で〜ヴィパッサナー瞑想修行記

朝4時半 ゴーンと鐘の音
まだ暗くシーンとした部屋で多くの人が座って瞑想している。
終わりの鐘がなり朝ごはんを食べた後も瞑想、瞑想、瞑想...

11/9-11/18の10日間、私は京都の山奥にあるダンマバーヌという施設で、ヴィパッサナー瞑想コースを受けてきた。

受けようと思ったのは、2020年にタイでヴィパサナー瞑想を体験できるお寺にたまたま訪れたことがきっかけ。
ネットでどこに行こうか色々調べてたら、何だか面白そうな場所がある、しかもドネーション(寄付)で滞在できる、ご飯もついてる!そんな安易な考えから、ヴィパッサナー瞑想のことも全く知らないままそのお寺へ行った。
朝の托鉢から座る瞑想、歩く瞑想、掃除、他の参加者との交流などヴィパサナー瞑想に触れながら幅広く緩くそこでの体験を楽しんだ。
そこにたまたま居合わせた日本人の方から、日本にもヴィパッサナー瞑想できる施設があると教えてもらい、いつかは行こうと思った。
そして今回ようやくタイミング良く受講することができた。

朝の4時半から夜の9時まで、休憩時間を除きひたすらに瞑想する10日間。
さらにこのコースには、瞑想に最大限集中するために、人と話してはダメ、スマホはお預け、読書やメモ禁止、1日2食(+ティータイム)などいくつかルールがある。
タイで体験したものとは打って変わり、かなりストイックな瞑想修行。
10日間にどんなことが起きるのかというワクワク感と最後までやり遂げるかという少しの不安と共にこのコースが始まった。
(ちなみにここも参加費はドネーション制で全てボランティアの人たちで運営されている。)

京都ダンマバーヌ
森に囲まれた過ごしやすい環境

瞑想を通して自身を観察していく。
最初は雑念が入り混じり、瞑想に全く集中できなかった。
しかし座って瞑想をすることにだんだん慣れてゆき、3日目くらいから瞑想に集中できる時間が増えていった。

コース6日目からは、1日に3回行われる1時間のグループ瞑想の間、足や手を動かすことが禁止された。
これが本当に大変だった。
足の痺れや痛みに苦しんだ。
『こんなに1時間って長かった?』と何度思ったことか。

だけれど瞑想して7日目の昼、変化が起きた。
1時間のグループ瞑想の間、いつも以上にかなり集中することができたのだった。
全身に自分の意識を巡らし続け、ビリビリした感覚が常に流れていた。
長いと感じていた1時間があっという間に過ぎ、不思議と足の痛みも全く感じなかった。

だけれどその回以降、この全身に流れる感覚が頭から離れず、この感覚が欲しい!と思いながら瞑想していた。
この結果、呼吸を整えようとすればするほど呼吸が荒くなり、徐々に足の痛みも感じ、自分の気持ちも『あれ?いつもと違う』と動揺し続けていた。
瞑想指導者の方にこのことを相談したら、『以前のあの感覚が欲しいという思いが先走っているのですね。落ち着いて今の自分を観察するだけで大丈夫ですよ。』とアドバイスをいただいた。
何かを感じても感じなくても、ありのままの自分をただ観察するだけでいいのだと安心した。
そのことを念頭に残りの数日間修行した。
うまく瞑想できている私、痛みを感じている私、眠い私、周りの音を気にしている私、色んな私が次々と現れては消え、現れていった。

瞑想してない休み時間の時は、主にご飯を食べたり、散歩したり、仮眠したりして過ごした。
ご飯は朝と昼の2食。
ご飯、穀物パン、野菜たっぷりのお味噌汁、ビビンバ、五目うどん、米粉のレモンケーキなど毎日日替わりの手の込んだ美味しい菜食ご飯が提供された。
また私は休憩のたびに外へ出た。
ずっと部屋の中で瞑想していると、足も疲れ、気も曇る。
自然と足が外へ向かっていった。
ゆっくり歩いて外の空気を吸う。
最初の方は、11月とは信じられないような暖かい空気を感じつつ、日に日に空気が冷たくなっているのを感じた。
毎日同じ場所を歩き、時間帯や日ごとに植物や空の雰囲気が変わっていることも感じた。
時間がたくさんある時は、地面にねっ転がって休んだ。
草の上がふかふかしていて気持ちよかった。
10日間の瞑想修行、ご飯と散歩が良い気分転換や楽しみになっていた。

そして長く感じた1日1日があっという間に過ぎていき、10日間の瞑想修行を終えた。

瞑想修行を終えてみて感じたことは、
意外に、ひたすらに瞑想する10日間がそこまで苦行ではなかったこと。
人と話さず、スマホを見ず、やったこともない瞑想法をし続けるのは初めての経験。
スケジュールがかっちり決まってることもあってだんだんその習慣に慣れていき、いつの間にか次はどんな感覚がでるかな?どんな気持ちになるかな?など、日々の変化を楽しんでいる自分がいた。

また、自分の行動や気持ちに常に気づきを持っていたいという気持ちが増した。
このコース期間、必要なものは与えられた環境下のおかげもあり、自分が"今"何をしているのか?何を思っているのか?、意識を向けることが自然と多くなった。
未来の自分でも過去の自分でもなく、"今"に集中する。
瞑想してる時、ご飯を食べる時、歩く時、空を見る時、歯を磨いてる時。
"この瞬間"に立ち戻ると、ひとつひとつの行動をより味わうとともに心が穏やかになった感じがした。
また気持ちに関しても、一旦今の自分を観察することが大事だと瞑想を通して改めて気づいた。
普段の生活では、情報も多く、自身あれやらなきゃこれやらなきゃという状態が続いたり、自分の気持ちが先走ったりすることが多いが、今ある"現在"に意識を向けていきたいと思った。

そして、学びや気づきは自分の外側だけでなく内側にもあるということに気づいた。
これまで私は、人との出会いや、読書、異世界へ飛び込むことなど、自分の外側での経験を通して多くのことを学び、そして新たな自分にも出会ってゆくと強く思っていた。
その感覚がとても刺激的で面白く、今までも実践していた。
一方自分の内側を通して学びや気づきを得るということに、これまでほとんど意識を向けていなかった。
しかし、この瞑想修行を通して今の自分、身の回りの環境、行動、さまざまな今あるものに目を向けると、多くの気づきや変化があることを実感し始めた。

この瞑想修行は私にとって、とても新鮮でいい機会であった。
実践したのはたったの10日間。
コース終了後も、まずはやってみる!を大切に、この瞑想を試していきたいと思う。

〜余談〜
コース最終日は、瞑想で疲れた心を癒す日と称し、瞑想時間以外は参加者同士と話すことが許可された。
私も色々な人と話す。
中には、愛知県出身で新卒で建設会社に勤めていたものの数年で辞めてこれから世界一周に出るという、私と同じ境遇の同年代の子にも出会った。
出会いは面白い!世間は狭い!と改めて感じた。久々に聞く人の声、久々に見る人の表情、喜びの雰囲気に満ちていた最終日であった。

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