Bのこと
しばらく頭を抱えている問題がある。どうしようもないことに巻き込まれてもうずっと困っていて、憤っていて、哀しんでいる。ひとりで抱えられずに世界一信頼している弟に相談すると、私以上に怒って「君は悪くないけど、おせっかいかもしれないけど」と前置きした上でアドバイスをくれた。
その「お節介」とは私がずっと求めていた愛のある理解で、泣いた。
何か(や誰か)を理解することは愛なしにはとてもできないと知った。
その夜はどうにも落ち着かず、不安定のまま眠りについた。
翌朝もなんとなく元気が出ない。そんな些細な変化にすぐに気が付くのが同居人のBである。「What's going on? What's wrong with you?」
元気じゃないアオイは見たくないよ、と悲しそうに言うので、大丈夫だよ、とだけ答えた。実際はあまり大丈夫じゃないけど、それが漏れてしまってごめん、と思っていた。
清々しいほど晴天の中、Bと共に歩いて30分ほどのスーパーへ買い出しへ出かけた。お互いに初めて行くので、Googleマップを片手にマップの彼女(音声)に従い歩く。汗っかきの私は歩き始めてすぐに汗だく。涼しげなBを羨ましく思いつつ、この道はいいね、あの木が好きだな、と言いあいながら延々と続く川沿いを歩いた。
店内で買い物をしているとふと、Bがくるりと振り向いた。
「内緒にしてたけど、みんなにアメリカのビールを買ったよ。前に飲んでアオイも好きって言ってたやつ」とニヤリ。
やったぁ!ありがとう!と、両手を上げると、
「本当は明日まで内緒にしようと思っていたけど、元気がないからアオイだけに先に教えた。みんなにはまだ秘密だよ、元気出た?」
ビールも、Bの気遣いも嬉しくて店の中だというのにクルクル回って喜んだ。いつもアホかエロのBだけど彼はすごく、思いやりがある(知ってたけど、改めて思った)。
帰り道、暑すぎるね、私もう汗だくだよとダラダラ汗をかきながら言うと、
「俺はそんなに汗かいてない」と爽やかな顔をしている。
「そんな、こんなに暑いのに?」
「普段からあまり汗をかかないんだよね。」
「えー本当に?実は私家を出てすぐに汗かいてたよ。」
「マジ?」
「マジ」
聞いてもないのに「脇もサラサラ」だと自慢げにつけ加えた。私は背中から汗がつたうのを感じるほど、首も腕もしっとりするほど、汗をかいていたので、絶対に私に触らないで、とだけ伝えた。
帰宅して、何かのタイミングで私の肩に手を置いたBが、その置いた手を見ながら「Ohhh...」と言った瞬間、ひどい!触らないでって言ったのに!と猛烈に抗議すると「冗談だよ、肩、全然汗かいてないよ、はーおかしい〜」と大笑いしている。あまりにも楽しそうにヒィヒィ笑っているから私もすっかりおかしくなって、一緒に笑った。そのあと光速でシャワーを浴びた。
シャワーをサクッと浴びてスッキリしたら、朝起きた時のもやっとした気持ちはどこかへ消えていた。
「いつだって乳首を探してる」みたいなことばかり言っているし、(私が入っている)トイレのドアを開けようとしたりするし、しょっちゅう大きなげっぷを(わざと?)する。でも、なかなか繊細で気配り上手で世話好きですごく、優しい。あと、よく掃除を手伝ってくれるし、英語を間違えていたらちゃんと修正してくれるからやっぱり、優しい。
こうして綴ってみると、Bがしてくれたことを改めて思い出した。想像以上にたくさんある。なんだかお礼が言いたくなったので、いつもありがとうね、とLINEを送った。