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酔っぱらいの朝食

午前6時50分。アラームが鳴った、止めた。
隣の部屋のシンガポール人のTのアラームで再び目を覚ます。7時半。もうちょっと寝たいけどTのアラームが延々となり続けているので起きた。ひとしきりベッドの上でうだうだしたあと、下に降りて日課であるキッチンの掃除に取り掛かる。

「Morning.」
素面のときは口数の少ないアメリカ人のGがいつもの落ち着いた口調で一言。水筒に水を入れて、お弁当を持って、出勤して行った。

キッチンの掃除を終えて、洗濯機をまわしていると、アメリカ人のBとオーストラリア人のKがテンション高めにBの部屋から出てきた。
「ヘイ!アオイ!モーニング!」
「ドリンキングゲームしてた!ずっと起きてた!めっちゃ酔っぱらってる!」ぎゅうぎゅうとハグしてくる。いいね、楽しそう、ハグを返す。
「アオイもゲームしたい?」とハグを強めるのでふらつきながら、また今度ね、と返した。

Kが千鳥足でぬらりぬらりと歩きながら「I need some tea!」と叫んだかと思えば、ちらりとこちらを見て「珈琲飲みたい?」と言った。teaはどこに行った?と思いつつ、うん、と答えた。
Kは某コーヒーメーカーで働いているのだが、どんなに酔っぱらっていても、どんなに足がおぼつかなくても、なぜか手だけはしっかりとしていて完璧なハンドドリップコーヒー(今朝はフレンチプレスだった)を淹れてくれる。

珈琲を淹れてもらったのと、酔っぱらいに絡まれたのとで、ヨガのプラクティスモードが完全に消え去ってしまった。気持ちを切り替えて朝ごはんを作ることにする。冷凍してあるイングリッシュマフィンを解凍してトースターへ入れる。目玉焼きを作ろうと冷蔵庫を開けると、ない。思わず「あ、卵がない!」と小さく叫ぶと、ふたりが間髪入れずに「卵あるよ!」と大きく叫び、Kが我先にと卵を差し出した。陽気で寛大な酔っぱらいは、いい。

鉄のフライパンにお気に入りのオリーブ油をたらり、Kがくれた卵を割り入れる。終始強火で水も入れず、蓋もしないで、ふちがカリカリになるまで焼くのが好きだ。

「ねぇ、他に必要なものはない?」
Bが何度も聞いてくるので、ベーコンかな?と呟くと、残り少ないベーコンを全て持ってきてくれたので遠慮して1枚だけ貰った。
「Are you sure?」と聞かれて一瞬迷ったけど、イエス、と答えた。
ちなみに、チーズとホットソースも準備してくれた。私が作ろうとしている朝食はBのレシピなので、酔っ払いと言えど全てお見通しだ。陽気で寛大で世話好きな酔っぱらいは、いい。

卵のふちにチーズをかけて、さらにカリカリにする。半分は黄身の上に乗せてフレッシュさを保つ。と、横でBが指示してくる。
「Perfect! Looks fuckin good!」
美味しそうすぎて見ていられないからもう行くね、おやすみ、と部屋に戻っていった。

そんなこんなで、きょうはハイカロリーなアメリカンブレックファスト。
Kの珈琲はやっぱりおいしかったし、B直伝の朝食は罪の味(褒めてる)がした。

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