プロローグ
2020年6月3日午前5時
昨夜は興奮して寝付けなかったというのに、なぜか目が覚めた。
そしてふと、文字を綴りたいと思った。
のだが、何を書こうかなと考えているうちに3日が経った。
うまくまとめようなんていう考えは捨てて、気の向くままに日々を綴ることにする。
世界がこんな状況になって、私は2ヶ月休業している。
そもそも、3ヶ月前に修行のために上京したばかり、だというのに。
落ちたり浮いたり憂いたり酔っ払ったり突然やってくる不安に押しつぶされそうになったり支払いに怯えたりを繰り返しながら、なんとか、暮らしているのは、遠くで見守ってくれる友達や先輩、家族の力が大きい。そして、今の環境。
古い一軒家に、オーストラリア人とシンガポール人、それに2人のアメリカ人の5人で住んでいる。ほぼ全員がステイホーム中でしょっちゅう顔をあわせるので、この2ヶ月で随分と距離が縮んだ。親友のような家族のような、ただの他人。スープが冷めない距離どころか、日々の献立を把握してるほど近くにいる(今夜はあまり料理をしないオーストラリア人が夜ご飯にフレンチトーストを作っていた)。全く顔を合わせない日もあれば、朝方まで一緒にいる日もある。とにかく、気が楽、みんな日本人じゃないからかもしれない。たまたま、気が合うのかもしれない。議論になることもあるけど、お互いの意見を尊重しつつ、程よいところで着地するのが心地良い。ばかみたいなことを言って笑わせてくるから気が緩んで丁度いい。
昨夜は、料理が好きなアメリカ人が「アメリカの朝食」を夜ご飯に作ってくれた。ぎょっとするほどバターを入れてたけど、見て見ぬふり。唸るほど美味しくて、これは罪の味だわ…と思っていると、隣でオーストラリア人が Consensual murder! と言った。ん?と思い聞いてみると、美味しすぎて殺されてもいい!というジョークらしい。ジョークを説明させて悪かったけど、ちゃんと説明してくれたから面白かった。私のshitな英語力が彼らのおかげで少しづつ向上している。いい加減に英語コンプレックスから解放されたいので、必死に話してどんなにくだらない話も真剣に聞いている。
そういえば今日、久しぶりにビデオ通話した2歳の甥が「一旦切るね」と言った。一旦切るね。完璧なタイミングで、完璧な日本語で、そう言った。
最後に会った日にはまだ、言えなかったはずなのに。彼のようなスピードで、私もぐんぐん成長したい。
隣の部屋からシンガポール人の笑い声が聞こえる。人の笑い声は笑いを誘う。よくあるけど、聞こえるたびに笑ってしまう。何が起きたんだろう。
久しぶりに文章を書いたら疲れた、シャワーを浴びて寝ることにする。