わたしの根っこをつくったもの - シャッツキステ閉店と聞いて殴り書きした -
シャッツキステが閉店する。
出勤途中にTwitterで知り、目の前が真っ暗になった。
コロナが原因とのこと。
こんなに直接的にコロナで悲しい思いしたの、初めてかもしれない。
知らない人のために少しご紹介すると、シャッツキステは秋葉原の外れにあるメイドカフェで、2006年にオープンしたので14年も続く老舗にあたる。
メイドカフェ好きなら知らない人はいない、かつ、根強いファンのいるお店だ。
メイドをアイドル化したお店や、キャバクラとあまり変わらないお店が増えていく中、
シャッツは独自路線をひた走っていた。
露出の少ないロングのメイド服、
おかえりなさいませもご主人様呼びもない、
丁寧に作られた手作りの料理、
メイドたちがDIYしたあたたかみのある店内。
中央にはメイドさんの作業台があり、そこで2人のメイドさんが会話を繰り広げ、客はその様子を眺めたり、たまに会話に参加したりしながら時間を過ごす。
他のメイドカフェと違うところはたくさんあるけれど、一番の特徴は店の中心に「物語」が据えられていたことだ。
比喩ではなく、シャッツにはきちんと設定があり、由来とする物語があり、それが日々の運営にきちんと刻まれていた。
シャッツ自体が舞台であり、現実なのか創作なのか、なんともいえない不思議な時間を過ごすことができるのだ。
2004年にオープンした池袋の執事喫茶スワロウテイルをきっかけにコンセプトカフェというものにどハマりしてしまったのだが、
「つくる側、運営側に回ろう」と思ったのはシャッツに出会ったからだ。
シャッツのブログは全て読み、特に第二章へ移行するタイミングで綴られていた新しい物語ができるまでの記事は今でも忘れられない。
少しずつ場ができ、仲間が集まり、その過程を共に体験したかのような気持ちになった。
(もちろんメイドさんに応募したけど、さらっと落ちた)
「物語のある場」の素晴らしさに魅せられ、どうにかしてわたしもそれをつくりたいと熱狂した。
結果、比べるのは到底おこがましいが4年続けた新妻カフェをつくり、
黄色い衣装のおかしなコンセプトカフェで3年働いた。
たかがコンセプトカフェ、と言われればそれまでだが、あのときの経験がわたしの根っこをつくってくれたのは確かだ。
シャッツがなければ、人生のいろんな選択が違うものになっていたと思う。
物語の紡ぎ方、
場から生まれるコミュニティのあり方、
そういうものを教えてくれた先生みたいな場所。
Twitterでシャッツファンの人たちの呟きを読み漁った。
皆、口々にわたしと同じことを言っている。
シャッツがなければ全然違う人生だったと。
社会人になるとき、わたしは世界を変えたいと思っていた。
それは社会のシステムを変革するとか、多くの人々を救うとかそういう話ではなく、
誰か、たった1人でいいからその人の世界を大きく変えたいと思ったのだ。
終わり際になったからみんな語り出したわけではない。
終わらない物語の最中にあってもみんな延々語っていた。
シャッツがなかったら今の自分はない。
シャッツは確かに世界を変えたのだ。
クソみたいな理由で足が遠のいていたのが悔やまれる。
本当に悔しい。
来年の3月閉店予定とのことだが、コロナ次第で早まる可能性もあるとのこと。
「コンセプトカフェは閉店まで含めての物語なので、閉まらなくてはいけない」
などと言っていた時期があったが、まさかこんな終わり方をするなんて思ってもみなかった。
大好きな物語の結末を読者は選べない。
今回の場合は作者だって選べなかった。
閉店までできるだけ行こうと思います…
こんなに悲しみ方面に心がひっぱられるのが久しぶりで、表情筋が死んでいる。
さみしい。
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