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夕山の焼くる灯に笹の葉の影は映れり白き障子に         古泉千樫

古泉千樫の歌です。
伊藤左千夫に師事し、斎藤茂吉や中村憲吉、島木赤彦らとアララギを支えた歌人です。
千葉県安房市に生まれました。

この歌の山は、嶺南山という標高400メートルほどの愛宕山を中心とした山地をさしているようです。

山焼きが行われていたようですが、その火の明るさと白い障子の対比が鮮やかです。

笹の葉の影に着目したことで、夕方の薄暗くなった頃の人さびしい感じがよく伝わってきます。

千樫はこの時、誰か気になる女人がいたようで、別の歌で「家居かなし妹に恋ひつつ」と歌っています。

妹というのは、万葉集などの古い歌詞で、恋人を示すことが多いですから、山焼きの火の勢いに自分の恋心のことを重ねて見ていたのかもしれません。

高野公彦さんは、若い学生らが短歌に興味を持つと、古泉千樫の歌を読むように勧める、と聞いたことがあります。

雄大な歌いぶり、万葉調で自然を歌い込む所が短歌を作っていく時に参考になるのかもしれませんね。
 
この歌も、下句「影はうつれり白き障子に」と倒置法(白き障子にうつっている、を入れ替えている)の技法が光ります。



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