幸せな果実を 【小野桃園】
こんにちは、すずです。
先日、果実の一大生産地・山梨県峡東地区の山梨市で、約60年来続く果樹園を営む小野桃園さんの畑にお邪魔しました。
小野産は、およそ25種の桃・光桃(ネクタリン)を主に葡萄、柿、無花果、小梅、梨など様々な果実を栽培しています。
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朝8時半に畑に到着すると、既に収穫作業に取り掛かっている小野さんの姿が。桃の最盛期となる時期は、朝の5時から収穫を始めるそうです。
畑には小野さんの他に甲田さん、ヤットさん、へィンさんの3人のスタッフがいました。この日、様々なことに驚き感服しましたが、皆さんが冗談を交えながら文字の通り和気藹々と働いていることがまず、強く印象に残りました。
今までに尋ねたどの農家さんとも異なる、心地の良い空間です。
皆さん仲が良くて素敵ですねと伝えると、「桃はいつも上から見ているからね。」という返しが。
なるほど、人間も心地よいのだから桃も心地よく育って美味しくなるわけだと1人感心していました。
甲田さんは、農業を志す23歳。小野さんの元で学び始めてそろそろ一年になると言います。若手には桃を触らせないという農園もあるなかで、小野さんの畑では甲田さんも収穫作業に携わっています。
「若手と夢のある農業を作り上げていきたいんです。」と、小野さん。
農業従事者の不足や高齢化が問題視される一方で、若い人が新たに農業に参入するには様々なハードルがあります。
農地を借りるのが難しかったり、農機具を揃えるのに資金が必要になったり。そうした壁を乗り越える手助けをしたいし、若手が農業に夢を抱けるような社会にしたいというのが、小野さんの想いだと教えてくれました。
私自身も、農的な暮らしを目指してあれこれ考えていますが、こうして手を差し伸べてくれる人がいるということはとても嬉しく、頼もしく思います。
甲田さんはお米農家を目指しているとのこと。農薬を使わない栽培や合鴨農法に挑戦したいと話すその姿に、私も頑張らねばとエネルギーをもらいました。彼が育てるお米を食べる日が楽しみですね。
収穫作業が終わると次はシート敷きの作業に。タイベックシートを桃の樹の下に敷くことで、実が太陽の光を受けて綺麗に色づくそうです。
真夏日のような暑さの中、みんなでせっせと作業していきます。太陽に照らされた桃がなんとも美しいです。
午前中の作業はここまで。
午後は、作業場に戻りみんなで出荷作業です。
この時旬を迎えていた白鳳は、とても繊細な品種。少しでも強く握って仕舞えばすぐに傷んでしまいます。一つずつ丁寧に、梱包していきました。
↓こちらは作業の合間にいただいたユメミズキ。
山梨でしか栽培されていない品種だそうです。初めて実をつけた2年生の苗から収穫してきてくださいました。爽やかな甘さでジューシーな、クセになる味わいでした。作業の疲れも吹き飛びます。
出荷作業で、この日のお手伝いは終わりました。
昨年初めて小野さんの桃を食べて受けた衝撃と感動がずっと忘れられず、最後に、なぜ小野さんの桃はこんなにも美味しいのかと質問させていただきました。
「常に、愛情を一番にと考えています。一度立ち止まって、桃を食べて、また頑張ろうと思ってもらえるようなものをお届けしたいなと。」
と小野さん。
この応えが、何よりも真っ直ぐに心に入ってきました。
少し話は逸れますが、一時期ある農家さんにとてもとてもお世話になっていたことがあります。特別な農法ではなかったのですが、彼がつくる野菜は何を食べても信じられないくらい美味しいのです。どうしてこんなに美味しいのかと一度尋ねたことがあるのですが、「なんでですかねえ、自分でも分からなくて。わりと雑に育ててる感じなんですけどね。」と。
以来、なぜ美味しい野菜や果物ができるのかというのは常に考えていて、いまのところ自分の中にある答えは「良い人は良い菌を持ってるから、つくるものも美味しい。」です。
味噌を手で仕込むと、その人の常在菌が混ざって味わいが変わると言いますが、野菜も果物も同じようなことが起こり得るのではないかと。
小野さんの桃はまさにこれであると、持論に更なる確信を覚えるとともに、感銘を受けました。
小野さんの桃は、確かに、食べると元気になります。
それもこれも、心地よい職場づくりに始まり、小野さんの桃に対する愛情や情熱なのだと。
自分の手で作り出したものが誰かの糧になる。こんなに素晴らしいことはないなと思いました。
小野さんの桃、みんなに食べてほしいです。