制作余話#2「しずけさやEP1・2」編
作品本編はこちらから。
※ネタばれ等、がっつりしているので本編に目を通して頂くことをおすすめします。
作品の裏話を日誌代わりに徒然と書いていく制作余話、
第2編は「しずけさや」1話2話についてです。
完結した作品について話していく企画なのですが、「しずけさや」に関しては一話完結式の作品なので、各話ごとに述べていければと思います。
作品について
さて、カクヨムの近況ノートでもこの作品について少し述べているのですが、この話メインの2人があまり物語の核心に関わってこないんですよね。
蝉を売る不思議なお店、そこでは店主の魔女(年齢不詳)とアルバイトの若い女の子がいて、やってくるお客さんがもたらす事件を百合百合はちゃめちゃしつつすぱっと解決!って話ではないんですよね。
もちろん当初はそんな構想をしていましたが、自分がミステリー書いたら絶対矛盾が出るし、陳腐になると思って断念しました。
別の話を書いている最中の息抜きで始めた作品なので、がっつり腰を据えて伏線とトリックを考えて……って感じで書きたくなかったんですよね。
いやー意識が低い。
そんな訳で蝉屋の2人ではなく、お客さん自身が「解答」を見つけ出す形にしました。沙夜さん一応とんでもなくすごい魔女って設定だからミステリー展開だと話が薄っぺらくなりますし、その設定を前面に出したら気持ち悪いと思ったというのも理由にあります。人智を超越した存在が普通の人間に対して、手は貸すけど判断は委ねるって話がツボなんですよね。
第1話「導き蝉」について
続いて各話について話をしていきたいと思います。
第1話の導き蝉はカクヨムに投稿してすぐに反応があってびっくりしました。また、初めてコメントを頂けた作品なのでその意味でも思い入れがある話です。
わりかし現実寄りの「桃花詩記」を書いていた反動で、ファンタジックな話を書きたいと思って書きました。だから仮死状態の女子高生、小野玲奈ちゃんが最初の依頼人になったんですよね。
展開をざっと言うと、死にかけていることに気付かず、霊体のまま日常を送っていた玲奈ちゃんがおばあちゃんの助けで自分の状況を知り、どうにか生き返るというお話。
裏事情としては「伏線」を張る練習に書きました。読み進めていく内に「もしや」となって、最後は「やっぱりな」となるような流れですね。「な、なんだって!?」となるようなどんでん返しではないのは、そこまで深く話を煮詰めていないからですね。さらっと書いてさくっと読めるライトなお話です。
しかし決して手を抜いた訳ではありません。読もうと思った方は第1話から目を通すのが普通でしょうし、そこでふぬけた内容だったら最後まで読んでもらえないですし、書くにあたっては現状の全力を込めています(息抜きだの練習だの御託を並べないで初めからそう言えよ)。
この作品、第1話を書いていて舞台や設定が色々気に入ったので、後の話を書くのに困らないように伏線というか取っ掛かりを所々残してあります。ざっと挙げると以下の点です。
・おばあちゃんが買った蝉の能力とその経緯。
・沙夜の過去。
・別の小野さんの話。
・超高価な黄泉蝉が使われた事件。
これらがいつ描かれるかはまたのお楽しみに。
第2話「空蝉」について
続いては「空蝉」編について。
第1話を書いている時点で「空蝉」というキーワードで書くつもりはありました。
ただ、構想はいくつかあって、「一度死を経験したい」という依頼を解決する話とか、「あらゆる物から逃げて別人に変わりたい」という依頼の話とか、色々浮かびましたがしっくり来ず。
その中で「源氏物語にそんな題の話あったなー」と思い出し、検索して読んでみるとこれがまた面白い。すぐさまこれを基にすることに決めました。古典の力は偉大ですね。
話の細かい流れ、主に3人デートの所なんかはざっくりカットしています。この辺りを細かく描写すれば、源君の気持ちの移り変わりや伊代乃と仁紫乃の気持ちもしっかり描けていたのかもしれません。ただ、読んでいてくどそうに感じたのでバッサリ切りました。
この話では沙夜と静羽の出会いや静羽の蝉への思い入れなんかがちょろっと語られています。
「照れ隠しする沙夜さんかわいいよ」「お姉さんな沙夜さんかっこいいよ」「色々ええ加減な沙夜さんやっぱかわいいよ」と愛でながら起編を書いていました(きもい)。
今回の依頼人の源君は幼馴染の姉に恋する男の子。ちょいクズっぽいですけど、怪しいお店に来たら誰だってあんな感じになるんじゃないですかね。好きな子以外の女の子の扱いがぞんざいだったりするのも若さゆえと思っていただければ。
他に登場するのは紀野伊代乃と仁紫乃の姉妹、名前は源氏物語空蝉の章の登場人物からですね。
源君の意識を姉の伊代乃から妹の仁紫乃にどう移させるか、この点に苦慮しました。三角関係を描いた創作は数あれど、自分で書くとなると難しいなと実感しました。
作中では源君が身を挺して彼女達を助ける。その中で姉の伊代乃は身を引く流れとなっていますが、別のパターンも考えていました。いや、仁紫乃とくっつく結末は変わらないのですがもっとコメディな流れでした。
ざっくりいうと、以下の通り。
夜の暗闇で姉妹のどちらかが判別付かないまま無我夢中でマンションの落下物から庇って助ける。
↓
妹の方だった(姉は自力で逃れていた)。
↓
妹「やっぱり私のことを大事に思ってくれていたんだ!」
姉「良かったね!この際告白しちゃいなYO!」
源(えぇ……断れない……)
姉「おめでとう。あ、怪我で擦りむいてるからハンカチあげるよ。それじゃ後はお二人でお楽しみくださーい」
源(とほほ、そりゃないよー)ハンカチクンカクンカ
今思うとむちゃくちゃですよね。でも途中まではこっちの路線にしようかと考えていました。源氏物語の方もこういう取り違いが話の肝になっていましたしね。源君をダメ男寄りに書いていたのはその名残です。
最後の場面については、しんみりしつつもラブコメのような明るい終わり方にしました。
伊代乃のカーディガンについては一見矛盾しているように読める部分がありますが、源君が搬送されてからは血が付着していることに気付かぬまま着ていたと解釈してもらえれば。
「空蝉」を何にするのか、これにも少々悩みました。最終的にはカーディガンにしましたが、ハンカチ、マフラー、コートなどから始まって、シンデレラになぞらえて靴とか、香水や化粧品などの匂いを想起しやすい物まで色々考えました。結局妥当な所に収まったんじゃないでしょうか。
こんな所でしょうか。執筆から少し時間が経ってからの振り返りになりましたが、完全に忘れないうちに思う所を記せてよかった。
「しずけさや」は2話から更新できていませんが、次の構想は浮かんでいます。「桃花詩記」の方が完結してからの執筆になるかと思いますが、またお見かけしたら目を通して頂けると嬉しいです。
以上、ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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