制作余話#4-3「桃花詩記」4話~6話編
前回はこっち
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引き続き「桃花詩記」の後語り。
今回は第4話からです。
4話「告白」
前回か前々回だかで語っていたかもしれませんが、元はこの話で終わるつもりでした。
不思議な秘境へ→そこで人々との温かい交流→別れを惜しみながらバイバイ!→終わり!
というのが元々考えていた展開でした。ここから第6話の後半に飛ぶような感じですね。ただ、それでは本陶らが抱える問題が何も解決していないという重大な欠陥があって、柳蒼言のあれこれや宮廷とのあれこれに触れていくことにしました。当初考えていた明快なストーリーからこのような話に変わったことで、執筆中はかなり頭を悩ませました。すでに途中まで投稿していましたし、現状出してあるトピックをどうにか繋げなければという気持ちからもうてんやわんや。そして加えて今話では4首の漢柳が登場します。5話以降の展開を考えながらの制作がまた重たかった!
元は詩会に出席する各登場人物×2首の8首を作中で出すつもりでしたが、字数との兼ね合い(これを執筆中は1編5千~1万字程度を目安にしていた)でカットしました。詩会の場面ですし、各人がかけ合いしながら講評していく展開が続くと食傷気味になるという理由もあります。
話のメインは耀白と詩耽の恋模様。尹巴さんや周りの者がすでに把握していて陰で応援している時点で障害はあってないようなもの。あとは当人の感情の問題です。個人的にはもう少しうじうじ悩んだり、過去の嫌な思い出に触れたり、二人の葛藤にもっと色々見せようがあったなーと思っています。はい、加筆案件。
あと、性的マイノリティの話はデリケートな話題ですし、この作品は漢柳の話であって同性愛の話じゃないし……ってことであくまで作品の一要素に収まるように描いています。だから耀白と詩耽の合作はごくごく普通の恋愛詩として作りました。
4話全体をまとめると、エロ作品が動作や心身の状況を刹那的に描くのに対して、恋愛物は心の機微を時間を追って描かなければならない。この認識がいまいち足りていなかったかなと思います。
5話「危うい自由」
冒頭で話題に上っている鈍灰の悪行は伏線ではなく、スピンオフ的なお話を考えてのことです。あくまで「こういう話をやろうかな」と思って入れ込んだ物なので書くかも未定です。
いよいよ律の秘密へ……という展開に移り始めるお話です。読んでいる人には「何のこっちゃ」となるかと思います。何分、本陶らが全て想定の元で動いているのでフワフワしているんですよね。それが読者から見ても「こいつら何でこんな切羽詰まっているんだ?」と映る訳で……。もっと都側の印象付け(「あいつらならそんな感じのあくどいことをしかねないな」と思わせるもの)を入れた方が良いなと強く思います。はい、加筆案件。
推理披露パートですがここに関しては数少ないリアルタイム読者を殺しに来ています。更新が遅い上に過去のさらっと書いてある要素も拾って話を繋げているので、まぁ数少ない読者様がさらに離れる要因に……!
この辺りは「わかる人だけついてこい」モードでした。表立って書くべきことではないんですがぶっちゃけ飛ばし読みで良いです。
そしてさらに殺しにかかる古文パート。6話にも続く地獄っぷりです。漢文好きで手に取ってくださった人もおそらくここでリタイアしているでしょう。改めてになりますがぶっちゃけここは飛ばし読みで良いです。何せ次の6話を読めば秘密が明らかになりますから。
ただ、ここも読んでくださった方々は本当にありがとうございます。5話に関しては読んでくださった方には感謝しかありません。
5話についてはこんなものでしょうか。あ、作中に出た「出版印」という慣わしですが、これは現実には(たぶん)存在しない風習です。字の扱い等も含めてそれっぽい話に見せる為にこそこそ腐心しています。あまり真に受けないようにお気を付けください。
6話「送辞」
ついに律の秘密が完全に明らかになるお話。そして煉獄の長文古文パート。
前編の半分近くが古文じゃねえか!と読み返して気付きました。頂いた感想への返信でも触れていますが、過去編として1話使おうとも考えていました。わかりやすさならそちらの方が断然良いのですが、全く需要がないのを承知の上でこのような表現にしています。
というのは漢文を訓読するにはどうしても古文の知識が必要です。ただし、従来の日本古文と訓読の読み方は少し違いがあります。漢文に触れるなら訓読の風味も感じ取ってもらえたら良いなと思って古文パートを入れました。
次に後編について。
時効とはいえ律はまあまあやばいことやってます。本来、時が経った今更どうこう言われるようなことではないのですが、バレた時の都との関係次第では……という万が一の懸念があったから尹巴達も隠してきた訳です。
ここで都に帰ってからどう行動するかというのが焦点になっていきます。そして、それが上手くいくかはわかりません。これまでちょこちょこ語られてきた描写も含め、宮廷がどういう世界かを感じ取ってもらえれば物語に感情移入できるかと思います(他人任せですみません)。
別れの場面では出会った人々が総出演しています。3話に登場した母子が台詞付きでちょびっとだけ、老人と聞き屋の周もガヤで参加、最後には1話の番兵さんも登場しています。一言だけの台詞ですが番兵さんの態度も当初から変わっているのがわかるかと思います。出会った時との変化を感じる場面がツボなんです。それもあって、この場面では各人物の成長や関係の移ろいに焦点を当てています。由殿と鈍灰の作詩なんかはまさにそれですよね。
5話6話は書いていて一番しんどかった気がします(主に推理パートのせい)。読む人にわかるように伝える難しさを非常に感じた話でした。感じすぎて半ば伝えることを放棄して書いていました(愚痴ばっかですみません)。それでも読んでくださった方がいるのは本当にありがたいお話。また別の漢柳のお話で恩返ししたいですね。
〈続く〉