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制作余話#4ー2「桃花詩記」2話~3話編

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引き続き自作への愚痴にお付き合いください。
今回は第2話の振り返りからです。

第2話「漢柳二聖」

この話では2人の主要人物が登場します。耀白と鈍灰ですね。この2人には色々苦労させられました。
まずは耀白について。読んでいるとお気づきになるかと思いますが、当初は彼は男性のままで設定していました。実直で真面目な秀才で、命名からして清い人物にするつもり満々でした。
ただ前回もお話した通り、3話以降の展開を考えていく中でてこ入れが必要になり、それを受けて彼の設定も変更しました。素直に彼と詩耽の恋愛を描いても、自分の力量ではいまいち盛り上げられなかったというのもあります。故に恋愛成就の大きな障害として性別違和を入れ込みました。どうして性別違和にしたのか、それは律ではどんな人々も「普通に」暮らしているという事実を示したかった。これが第一の理由です。細かい理由になると、私生活でその界隈の人と関わりを持っていて、「身近な少数派」を考えた時にその方達のことが浮かぶからというのもあります。
かくして設定を変えられた耀白ですが、詩の作風や根っこの真面目な青年といった部分は変更せずに済んでいます。真っすぐさや純粋さ、雅な雰囲気を意識して彼の詩を作っていました。雅やかな作風なのは都に対する憧れも反映されていたり?
本作の構成は前半は耀白、後半は鈍灰の物語になるようにしていますが、それにしたって4話以降影が薄くなっているのはちょっと申し訳ないなと反省。後半はほとんど登場していませんが、本陶らによる天子への献策に向けて暗躍しまくっています。この辺りのあれこれは加筆案件ですね。

次に鈍灰についてです。偏屈な天才、俗っぽい身なりだが本当は高貴な生まれというイメージの人物として描きました。また愚痴になって申し訳ないですが、天才肌な人物なのにいまいちぶっ飛んだ所を出せずに終わってしまったことを悔やんでいます。ただ、彼の詩を作るのはすっごく楽しかったです。高尚な趣きを持つ耀白の詩に対して、彼の詩は主張やメッセージ性を持たせるようにしていました。それが私自身の感覚にマッチしたおかげで個人的には好みの詩を作れました。
彼の設定について、「実は生まれに秘密がある」という点は当初から匂わせています。粗暴な言動にも意図があって、所々芸術への造詣や上品な所作が見え隠れしている……こういうキャラクターがツボなんです。ただこの手の人物って書いてみると作者の教養がバレますね。書いていて楽しいけど扱いが難しい登場人物だなと改めて思います。
出自については当初は柳蒼言・柳家の末裔としていました。しかし、都との対立を描いていくに当たって、都の象徴的な人物にもっと近づけたいと考えた結果、彼を皇帝の異母兄弟に据えました。物語の結末に深く関わってくる人物なので、この点においても扱いに苦しむキャラクターでした。彼はまた別の場所でぶっ飛んだ所を描いてやりたいですね。彼に限らず本作はいまいち賢才を発揮できていない人物が多いので、いずれもっと活躍させてあげたいですね。

人物について一通り語ったし、次は2話のお話の内容について。
2話では前後編合わせて4つの漢柳が登場します。そして漢文にあまり触れない人にも向けて、登場人物に講評させています。自分で自分の作品を批評する、すっごく恥ずかしい回です。この回を読んだ人は間違いなく「うわぁこいつ自画自賛きめぇ」と思うに違いないでしょう。本当に恥ずかしかったので後で解説をつけて、以後の話ではあらましをざっくり語らせる程度にしています。ただ、その場で漢柳の意図を伝える為にどうしても講評させる必要があったりしてさじ加減が難しい。この後も「わからん人にもわかるように」と「わかる人だけわかればいいんや!」の間でずっと揺れ動いています。

第3話「まちびとと語る」

少し箸休め的なお話から始まり、最後に重大な事実が発覚する回です。作品全体の方針転換が明らかに見えますね。
まず市場で「聞き屋の周」なる者、公園で老翁と女性(老翁から見れば息子の嫁)、少年(老翁の孫)という律の住民が登場します。彼らは4話以降は一応ガヤ(詩会や律から都へ出発する際のもの)で登場しています。
ここでは漢柳は誰でも簡単に作れるよというメッセージを込めて、肩肘張らずに詩を作っています。少年の詩なんかはその典型です。また、後編の女性の詩では原文の訓じ方で解釈は変わるという漢文の基本的な特徴について言及しています。これも伏線として活用したかったのですが、そんな高度な詩を何度も作れるはずもなく……。
ここで登場した主要人物が尹詩耽さん、初めは憂いに沈んでおりますが根は活発なお転婆さんです。この子の存在が作品の方針転換に大きく関わっています。
女性詩人を登場させたい!詩と言えば恋!恋愛ポエムを詠わせたい!でも彼女をどう物語に絡ませようか……と、考えた結果、耀白の設定変更を余儀なくされました。だって尹巴さん普通に交際を応援しちゃって、葛藤も障害もなく恋が成就してしまうんだもの。耀白が女になっても変わらず応援してもらっていますが、当人達の悩みや葛藤にスポットを当てられたのは良かったと思います。

3話の後半を改めて読み返すと、耀白の秘密がやたら唐突なのがわかります。一応、細身で色白であることは2話で語られていますが、2話投稿時点ではこれに繋げるつもりはありませんでした。むしろ、鈍灰の方が思わせぶりに描いていたので「そっちかよ!」と思った方もいるかもしれません。
前回でも言いましたが、この回の執筆中に詩会(第4話)以後の展開を練り直していてその煽りがもろに出ています。単なる詩の品評会みたいな作品だと登場人物がただの舞台装置になっているように感じていましたし、出来はともかくとして、てこ入れを行ったのは個人的には良い経験になったと思います。
3話以後、文学は社会にどう関わるのか、漢柳を通じて人々は何を表現するのか、そういった問いかけを発する方向に今後の物語は展開していきます。物語が進むにつれて執筆に頭を悩ませる度合いがひどくなっていくのですが、それについてはまた次回。以上、ありがとうございました。

〈了〉

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