モンスターハンターワイルズに向けたグラフィックボード選び基準・方法の解説

はじめに


 モンハンワイルズをやりたい人向け、グラボ選びの解説です。今月末に発売が迫り、グラフィックボードが秋葉原などにあるPCショップ店頭から消え始めた2025/02/16時点での情報です。モンハンワイルズ発売後、アップデートが重なると要件が変わる可能性があります。

まずは結論から

  • 低予算自作ならRX7600、BTO、既製品ならRTX4060で1920×1080(FHD)モニタでのプレイを目指す。

  • 十分に遊びたい人は自作ならRX7800、BTOならRTX4070搭載機で2560x1440(WQHD)モニタでのプレイを目指す。

  • お金に糸目をつけない人はRX7900XTXを購入し3840×2160(4K UHD)出力を目指す。もし手に入るならRTX5090を手に入れる。

この結論から分かる通り、比較的低予算(40万円以下)向け、かつRadeonがオススメという内容になります。また、5070Tiを待つな、という記事でもあります。

グラフィックボードの性能と選び方

その1.型番から選ぶ

 現行のグラフィックボードはNvidiaのGeforce、AMDのRadeon共に4桁の数字と後続の文字で商品の世代とグレードを表します。IntelのGPU(Arcシリーズ)は3桁ですが、今回は選択対象にしないため割愛します。
 Nvidiaの最新は5000シリーズ、Radeonの最新は7000シリーズとなります。現状では、Geforceは上二桁が世代、下二桁がグレードとなります。

 Geforceの場合はその後ろのTi、Superのどちらかもしくは両方が付く場合があります。Radeonの場合は7000シリーズは上一桁が世代、下3桁がグレードとなります。今後発売される9000シリーズはGeforceと同様に、上二桁が世代、下二桁がグレードです。またGeforce同様XT、もしくはXTXが後ろにつく場合があります。どちらでも、同じ世代、同じグレードであれば後ろの文字付きの方が性能が良いものとなり、かつ上位のグレードの無印よりは性能が低いものとなります。また、SuperよりはTiの方が上位の性能を持ち、TiとSuperが同時に付く場合もあります。XTとXTXではXTXの方が上位です。例えば、RTX4060とRTX4060Ti、RTX4070であれば
            RTX4070>RTX4060Ti>RTX4060 
の性能比になります。おおよその世代、グレードによって対象とするモニタが決まっていますので、ここではそれを基準に選びます。

(1)1920×1080(FHD)モニタの場合
 RTX4060~RTX4060Ti RX7600~RX7600XT は1920×1080(FHD)モニタへのゲーム出力を得られるグラフィックボードです。使用するモニタがFHDのときはこちらで良いでしょう。この中でのおすすめはRX7600です。この場合、自作PCで15万円~20万円程度、BTOだと15万円~25万円程度の選択肢になります。
よくあるゲーミングPC、ガレリアだとこの金額帯の製品です。https://www.dospara.co.jp/TC30/MC17120-SN4750.html

(2)2560x1440(WQHD)モニタの場合
 RTX4070~RTX4070Ti RX7700XT、RX7800XTは2560x1440(WQHD)モニタへのゲーム出力を得られるグラフィックボードです。使用するモニタがWQHDの場合はこの中から選ぶことになります。この場合は自作PCで20万円~35万円程度、BTOだと25~40万円程度の選択肢になります。この中でのおすすめはRX7800XT、もしくはRTX4070になります。
ガレリアだとこの金額帯の製品です。
https://www.dospara.co.jp/TC30/MC17119-SN4727.html

(3)3840×2160(4K UHD)モニタの場合
 RTX4080~RTX4090 RX7900XT~RX7900XTXは3840×2160(4K UHD)モニタへのゲーム出力が得られるグラフィックボードです。使用するモニタがUHDの場合はこの中から選ぶことになります。この場合は自作PCで35万円以上、BTOだと50万円以上の選択肢になります。ですがこのクラスはほとんど店舗に在庫が無く、購入すること自体が困難です。この中でのおすすめはRX7900XTXになります。
ガレリアだとRTX5080が選択肢にあります。
https://www.dospara.co.jp/TC30/MC17300-SN4669.html


その2.グラフィックボードのスペックを見て選ぶ

(1) ディスプレイサイズとFPS
 前述の通り、各社のグラフィックボードはグレードによって対象となるモニタサイズがある程度決まっています。大凡はその範囲内で、予算と相談して選べば大きな間違いはありません。ですがそれを踏まえたうえで、更に細かく似たようなグレード帯の中から適切なグラフィックボードを選ぶためには、グラフィックボードのスペックについて理解する必要があります。以下はそのための知識と選び方の説明になります。

 まず基本ですが、グラフィックボードはプログラムから要求された計算を行い出力を得る機械です。ゲーム利用の場合はその出力結果がディスプレイに表示され、AI利用の場合は文章や画像のような生成物になります。今回はゲーム利用を前提に考えますので、ディスプレイ出力について理解し、必要なスペックを考えることになります。
 ディスプレイとは縦横数千個の点の集合として映像を映し出す機械になります。Windowsの画面の設定で1920×1080などと数字で表されているものが、その点の数となります。この例の場合、1920が横に並ぶ点の数、1080が縦に並ぶ点の数になります。その点一つ一つに対して、グラフィックボードが計算をして結果を出力することで画面が映し出されます。そのため、横のサイズが1920から3840(2倍)になると、2倍の計算が必要になり、縦のサイズが1080から2160(2倍)になるとこちらも2倍の計算が必要になります。つまり、FHD(2K)からUHD(4K)になると、2×2=4倍の計算能力が必要になります。また、1秒間に何回画面を書き換えるかという数値にFPS(Frames Per Second)という基準があります。一般的なディスプレイだと1秒間に60回書き換えるため、60Hzと表記されます。周波数として、Hzが単位に使われます。ゲーミングディスプレイだとこの数値が増えていき、120Hz,180Hz等数値が増えるほど、画面の更新回数が増えるため滑らかな出力が得られます。この数値が増えれば増えるほど、1秒あたりに計算しなければいけない計算量も増えるため、必要な計算能力も増えます。60Hzと120Hzだと2倍、60Hzと180Hzだと3倍の計算能力が必要です。
 ディスプレイ出力に必要な計算能力は、これらディスプレイサイズとFPSによって計算されます。例えば2K60Hzの画面に出力する場合に比べて、4K120Hzに出力する場合では、2×2×2=8倍の計算能力が必要ということになります。これが4K180Hzになると、2×2×3=12倍です。これを理解していただくと、2K60Hz程度でゲームができるグラフィックボードで、4K出力を試みることが以下に無茶をしているのかが分かると思います。
 モンハンワイルズベンチマークでは、一般的なディスプレイのFPSである60Hzが出力できれば『快適』と判定されるようです。一方で、比較的負荷の軽いグラフィックを表示している可能性も指摘されております。特に砂漠の砂のようなオブジェクト数が増える場面では大きくFPSが落ちるため、平均FPSで考えるのではなく、最低値で60FPSを超えるスペックが要求されると考えたほうが良いです。著者の所感では、モンハンワイルズベンチマークの平均FPSから-20~30程度した数値を基準として考えるのがよいと思います。実際にどの程度のFPSが欲しいかは、ご自身で考えて検討されるとよいでしょう。多くの場合は、100Hz程度(10msに1回以内)であれば人間の認識能力的には十分な更新回数だと思われます。

(2)グラフィックボードのスペック
 (1)を踏まえたうえで、グラフィックボードの性能を比較するときに、見るべき項目は主に次の4点です。
①コア数
②クロック
③メモリ
④世代

①は計算を行う装置の数、②はその装置1つあたりの計算の速さ、③は一度に扱えるデータの量、④はそのままの意味で新しいか古いかです。全てにおいて、一般的には数値が高いほどよく、それらのバランスによって総合的に得られる出力が変わります。以下では主にNvidiaを基準として説明していきます。
 この中で、①②については多く高いほど良く、大凡この2つを掛け算した結果が性能として得られる、というところは多くの人に納得していただけると思います。また、グレードが高くなるほど、主に①の個数が増えるため分かりやすく性能が比較できると思います。しかし、最近ではNVIDIA CUDAコア、Tensor コア (AI)、レイ トレーシング コア等いくつも種類が合って分からない、という人もいるかと思います。
 その場合、ゲーム用途ではまずCUDAコアの数を見てください。こちらが多い物の方が性能がよく、個数が増えた分だけ割合で性能が増えると考えて差し支えありません。例えば、RTX4060ではCUDAコア数は3072基、RTC4060Tiでは4352基となります。比率にして約1.4倍のコア数があります。そのため、この2つのグラフィックボードでは単純に計算比較するとRTX4060Tiの方が1.4倍の出力が得られます。
 次に見ていただきたいのがTensor コアです。こちらの性能によって、AI補正のDLSSの性能が変わります。Nvidiaの公式HPではRTX4060シリーズなどでは数値の表記がありませんが、RTCX5000シリーズではGeForceRTX 5070で第 5 世代988 AI TOPSのように記述されています。
 これらを合わせてRTX4060とRTX4060Tiを見てみると、FHD(2K)出力でモンハンワイルズベンチマークのウルトラ設定/フレーム生成あり での結果、およそ平均FPSが75FPSと88FPS程度と出ています。約1.2倍程度の差になります。CUDAコアの不足分を、Tensorコアが補っている形ですね。

 次に③についてです。こちらはPCのメモリと同じで多いほど良い、早いほど良いというところは納得してもらえると思います。サイズについては、全体のデータ量をByte単位で示し、Gの接頭辞がつきます。速さについては、実際に計算を行っているコアとやり取りできるデータ量で表されます。メモリインターフェイス幅、バス幅などと表記され、単位はbitです。これらの数値が大きいほど、多くのデータを高速に扱えるということになります。
 この中で、主に選択肢が多く気になるところはメモリサイズの方でしょう。Nvidiaの製品の場合、ミドルローエンドは8GB~16GB、ミドルエンドは12~16GB、ハイエンドは24GB以上のようなラインナップになっています。メモリは計算中のデータを展開、保存する場所なので多いほうが性能が良く、特にAI利用の場合は速度よりもメモリ容量が重視される場合があります。ゲーム用途で考えてみると、ゲーム内で描画されるオブジェクトがデータとしてこちらの部品に置かれるため、ゲームのグラフィックが綺麗に、かつディスプレイサイズが大きくなればなるほど、大量のメモリが必要となります。
 多くの製品は、対象のディスプレイサイズにおいて、その時代のゲームに必要なメモリサイズを備えるように設計されているため、余り気にする必要はないかもしれません。モンハンワイルズの場合はFHDなら8GB程度、WQHDのなら12GB程度あれば十分に動作可能なようです。そのため、FHDディスプレイへの出力を前提としている、RTX406TiやRX7600XTの16GB版は、多くの場合では必要にならないでしょう。

 ④については、基本は『新しいほど良い』と考えればよいのですが一番判断が難しいところになります。なぜなら、世代によってアップグレードポイントが変わってくるためです。世代の違いによって一番分かりやすく公表され、性能アップが見込める内容としては、プロセスルールのサイズがあります。このサイズは10nm、5nmなどとナノメートル単位の細かさで、年々細かくなっていっています。こちらが小さいほど、CPUやGPUの設計を細かく書き込めるため、高性能化することができます。
 ここで、RTX4000シリーズとRTX5000シリーズでこのプロセスルールを比べてみると、同じ5nmとなっています。当然サイズ以外にも世代が変われば更新がかかるので、RTX5000シリーズの方が性能は上なことは間違いないのですが、プロセスルールからみると性能に大きな変化はないことになります。別の方法でプロセス密度を上げたという記事も散見されますが、RTX4000シリーズとRTX5000シリーズの性能差は、8nmから5nmになったRTX3000⇨RTX4000のアップデートほどの上昇効果は、少なくともプロセスルールに関しては得られていないと考えられます。

(3)スペックを踏まえたうえでの比較検討例
 以上(1)(2)を踏まえたうえで、RTX4060(8GB版)とRTX4070を比較してみます。RTX4060のCUDAコアは3072基・ブーストクロックは2.46Ghz、RTX4070は5888基・ブーストクロックは2.48Ghzとなります。クロックはほぼ変わらないため、コア数で比較をすると、約1.9倍です。ほぼ2倍程度の性能が得られると考えてよいでしょう。RTX4060がFHDで80FPS以上(DLSS込)の出力を得られる場合、RTX4070は約2倍の計算量を要するWQHDで同等程度の出力が得られると考えられます。もう少し性能が上がったRTX4070SUPERの場合は、CUDAコアコア数7168基、ブーストクロック2.48Ghzですので、RTX4070比約1.2倍の性能アップが見込めます。RTX4070でWQHD80FPS程度の出力が得られると考えると、RTX4070Superでは大凡95FPS程度の出力は得られるのではないかと考えて良いというわけです。RTX4070よりももう少しFPSを上げたい場合はこちらのほうが良いですね。世代別で考えると、RTX5000シリーズを待つかどうかという問題があると思います。こちらについては、プロセスルールに変更がないため、余り期待せずにRTX4000シリーズを買っても良い、が今回の結論になります。もちろんDLSS,Tensor コアのアップデートも入るため、確実に性能は上がるのですが、爆発的な上昇は期待できないことと、すでに出ているRTX5090と5080は入手性が悪く、今後発売されるRTX5070番台も値段が高いと予想されるため、無理して待つ必要は無いだろうと考えます。高額のグラフィックボードを購入しても良いならば、むしろRadeonシリーズの最上位であるRX7900XTXを購入するほうが、お得に満足が得られる結果になると思います。
 また、VTuberのように、ゲームとは別にGPUを使用するアプリケーションを動かす場合は、計算能力に余裕を持ったほうが良いと考え、上位機種を選ぶ方がよいと考えられます。こういうときにも、ディスプレイサイズごとにある程度候補のグラフィックボードを絞ったうえで、CUDAコアの数を基本に性能計算をして、使用するアプリケーションの処理も考えて選ぶとよいでしょう。例えば、今使用しているGPUでVTuberStudioなどを動かして、その時のGPU使用率を確認し、そのグラボと新しく購入対象としているグラボの性能比を計算し、その比率から新しいGPUでのアプリケーションの使用率を考えると良いでしょう。面倒な場合は、メインのゲームに対して10%程度の余裕があれば良い、と考え4060,4070といった同じグレードでもSuperやTiなどがついた製品を選ぶ、という考え方でも良いと思います。

GeforceとRadeon

 さて、このようにスペックを比較した場合、GeforceとRadeonでどのように比較したら良いのか、という問題にぶち当たります。下記のRadeonの性能ページを見ていただくと分かると思うのですが、CUDAコアという項目はありません。代替する項目としては演算ユニットになりますが、数もまるで違います。

https://www.amd.com/ja/products/graphics/desktops/radeon/7000-series/amd-radeon-rx-7800-xt.html

 こうなると、単純に動かしたいゲームのFPS値等で比較するのが無難ではありますが、性能で見たい場合は、単精度演算能力の項目を比較します。単精度演算能力とは、コンピュータが1秒間に処理できる単精度浮動小数点演算の回数で、FLOPSという単位で表現されます。最近ではテラ(T)単位のTFLOPSが通常のグラフィックボードの性能単位になります。
 例えば、WQHDディスプレイで選択肢になるRTX4070は29.15TFLOPS、RTX4070Superは35.48TFLOPS等となります。この数値で見たときに、RadeonのRX7800XTは37.32TFLOPS程度の計算が可能となっています。
 また、FHDディスプレイで選択肢になるRTX4060は15.11TFLOPS、RTX 4060 Tiは22.06TDLOPS、RX7600は21.75TFLOPSとなります。
 秋葉原などのパソコンショップにおける店頭価格で、RTX4070>RX7800XT、RTX4060>RX7600 のためスペックを考えるとRadeonを買うのが圧倒的にお得です。RTX4070は特に品薄がひどく、8万円以上の製品しかほぼ残っていません。一方RX7800XTはまだ7万円台の製品も多少残っています。RTX4060とRX7600についても同様です、RTX4060の4万円台の製品は枯渇しつつありますが、RX7600は3万円台の製品もまだ多少は残っています。
 もちろんアプリケーションとデバイスをつなぐドライバによっても性能は上下するのですが、PS5がRadeonを使用していることもあり、昨今はNvidia、AMD共に提供されるドライバの性能は上がってきているため、そこまで大きな変化は無いと考えても良いでしょう。ただし、一般的にはNvidiaのグラフィックボードとドライバを基準にゲーム開発を行う企業が多いという事情もあるため、その点ではRadeonの方が若干見劣りする場合もあります。

以上を踏まえて、最後に締めくくりたい言葉がこれです。

Radeonを買え!!!

以上です。

 また、参考までにRX7800XTとRTX4090のモンハンワイルズベンチマークの結果を貼っておきます。それぞれWQHDとUHDでの結果です。

RX7800XTベンチマーク結果
RTX4090ベンチマーク結果

余談.
 ゲームするだけならPS5で良いんじゃない?という話がよく出ます。全く持って、そのとおりです。グラフィックボードの性能だけで比較するとPS5で約10TFLOPS、PS5Proで約16.7 TFLOPSと、RTX4060程度かそれ以下の性能ということになってしまいますが、特定の性能が決まったゲームハード向けに作られるゲームは、アプリケーションがそれに最適化しているため、汎用のPCに比べるとこの数値以上の性能がでます。そのため、ゲームだけする場合には、安い最適化されたゲームハードを買うのが一番です。特に、最適化されてもそれすらも超えうるハイエンドPCが、製品の品薄で手に入りづらい昨今は、本当にゲームだけするならPS5を買うのが一番良いです。


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