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舞台『WHAT A WONDERFUL LIFE 』感想

 はじめに
 作品のネタバレを含みますので、ご注意下さい。


 昨年の12月初旬、私はふとした思いつきでパーマをかけた。が、もともと頑固な直毛なので今現在パーマの面影は何処にもない。私は考えた。もう一度パーマを当てるとして大体一万円前後だろう。そのお金があるなら、何か舞台を観に行ったほうが生産的なのではないか、と。
 そんなわけで『WHAT A WONDERFUL LIFE 』のチケットを購入した。


 SNSで前説があると告知されていたので早めに入場。客層は老若男女全て揃っているという感じ。仕事帰りのサラリーマンがけっこう居て、いつもとは劇場の空気が違った。
今までの観劇歴の中で隣がスーツのおじさんになったのは初めてかも。
席についてからパンフを読んで前説を待つ。私はネタバレが全然気にならないので話の流れを頭に入れておこうと思っていたけど、チケットを買い間違えたかと思ったくらい、ネタバレにならないパンフだった。多分だけど一番外側のデータを左右で間違えたのかな。不思議なパンフ。演者の仲が良さそうでなによりです。

 前説はジャージを着た3人がそれぞれ太鼓や紙袋を手に出てきて賑やかにスタート。私はコロナ禍から舞台観劇にハマったけど、ああいう和やかな雰囲気が劇場に戻ってきたのは良いことだと思う。サイン入りどら焼きを掛けたじゃんけん大会とか平和の極みだもん。
遠方から飛行機で観に来た御婦人と目線を合わせてお話しする南部君は栄養価が高かった。

 冒頭のあたりは群像劇のような印象。
物語はとある事件を追う2人の刑事のやり取りを挟みながら、四季が移ろうように進んでいく。観ているうちに実は全く異なる年の話であり、1人の男の数奇な人生を辿っており、2人の刑事が追いかけているのはその男であると分かっていく。
笑いあり涙ありの物語で面白かった。客観性の少ないパンフから舐めてかかった私は反省した。そのくらい良かった。この演目、この出演者、この小劇場で観て良いの?って思うくらい。
 強いて言うなら演出がちょっとくどいところがあった気がする。
ホステスのお姉さんとカシラがピストルを奪い合うところとか、最後の歌とか、そんなに繰り返さなくても伝わっているんだけどなぁって。
 あとは若い刑事が話す事件のあらましも、一から十まで説明されるので『鬼滅の刃』を読んでいる時と同じ感覚になった。(一応言っておくと、鬼滅の刃を貶める気は無い)
今作に関して役者さんたちの演技に文句は無いし、物語の構成も素晴らしいと思う。
 目当ての南部君はちょこちょこと出ていたし、何より彼がチンピラ役の天才なのは(個人的には)周知の事実なので、それだけでも楽しめた。ダンスやラップが上手なのは百も承知。その上でストレート芝居ももっと観たいと改めて思わせてくれた。
 東さんや浜谷さんの演技は初めて観たけど本当に上手で、バラエティ番組とは違う印象を持った。役の多さからある程度兼役をしているものと思っていたがそんなことはなく、その意味も最後のシーンで意味を成していた。
キャラクターも逐一個性が強いので、アナザーストーリーとか書けそう。矢継ぎ早に出て去っていくには惜しいくらい魅力的な役が多かった。
 ぐだぐだと書いてしまったけど、総じて満足度の高い作品なのは確かなこと。年明けから微妙にツイてない私の観劇初めにはぴったりだったと思う。
 劇場の規模感に対して、チケットが電子だったり、託児サービスを設けていたりして好感を持った。電子チケットの是非はあると思うけど、私は賛成派。有料会員先行で落ちた公演のチケットが高額転売されているのを目にしたことがあるので。その辺りのことはまた機会があれば書きます。

ここまで読んでくださった方、ありがとうございました。

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