のび太くんは真っ当な人間?人として大事な事[ドラえもん論]
ある入試の国語の文章問題で、杉田俊介さんによる「ドラえもん論」に出会った。
面白そうだったので、ゆっくり読んでみた。
読み終え、驚いた。
今まで自分の中にあった、「こうありたい」という価値観が、作中ののび太くんによって体現されていたという事に。
また、こんな視点でドラえもんという作品について考える事も出来るのかと。
著者は、のび太くんは「1番人間にとって大事な事を見失わずにいられる」
「優しく、他人想いな、真っ当な人間でいられる」と語っていた。
大事な事とは何だろうか?
真っ当なのか?
凄く惹きつけられた。
それらの事は、「ドラえもん」ではっきりと表現されていた。著者はある物語を引用していた。
「ドラえもん」では、大人となったのび太くんが、しずかちゃんと結婚する話がある。
結婚前夜、しずかちゃんのお父さんは、不安になって「結婚をとりやめる」と言い出した娘に、こんな事を言う。
「のび太くんを選んだ君の判断は正しかったと思うよ。あの青年は、人の幸せを願い、人の不幸を悲しむ事の出来る人だ。それが、1番人間にとって大事な事なんだからね。彼なら、間違いなく君を幸せにしてくれると僕は信じてるよ」
要するに、のび太くんは
[人の喜びを自分の喜びにする]
[人の苦しみや弱さを理解し、深く共感する]
事が自然と出来る人だという。
人の気持ちに共感する力や優しさを、生まれながらに持っているというのだ。
それはのび太くんが、誰もが生まれながらにして持っている[弱さ]を、理解し、受け入れているからだと著者は語っていた。
多くの人は、自分の弱い部分…後ろめたい事を隠すようにして生きているのでは、と僕は思う。
それはつまり、[自分の弱さを受け入れられていない]という事。
また、[弱さ]を受け入れられず、拗らせてしまっている人も少なくないと思う。
例えば、自分の非を認められず、常に周りの人や環境が悪いと思い込んでいる人…
自分の意見が伝わらない、また、価値観が合わない人を、「あの人はおかしい」と、相手と自分とを線引きしてしまう人…見下してしまう人…
しかし、のび太くんはどうだろう?
僕はのび太くんが頑張っている姿を見ると応援したくなるし、痛い目にあっていると「かわいそうだな」と思う。感情移入する。
それは、のび太くんが、多くの弱さや困難を抱えながらも捻くれる事なく、真っ当な人間を貫いているからなのでは、と思う。
テストはいつも0点…
運動音痴。泣き虫。喧嘩が弱くて、スケベで…
そういった自分の[弱さ]を受け入れ、[弱さと共に生きていく]覚悟があるから、
[人は助け合って生きていくもの]という事を無意識ながら理解し、人に優しく出来るのだと思う。
自分の[弱さ]を受け入れているから、人の[弱さ]も受け入れる事が出来る。人の苦しみや不幸に共感出来る。
この事は、僕が辛い経験を乗り越え、[弱さ]を受け入れる事が出来るようになって強く思うようになった価値観そのものだった。
自分の[弱さ]を受け入れている人、
また、辛い経験を乗り越えた人は、
他人の[弱さ]や悲しみを理解し、受け入れる事が出来る。
そして、辛い思いに深く共感して悩みに寄り添う事が出来る。
人に寄り添う(仕事をする)上で、[人の痛みが分かる]というのは、大事な事であり、自分の[強み]になる。
自分の[弱さ]を受け入れ、
[人の幸せを願い、人の悲しみに深く共感出来る]
のび太くん。
僕は、彼のそんな人としての真っ当さ…
また、1番人間にとって大切な心を彼が持っているという事に気がつかなかった。
「ドラえもん論」を通して、
改めて「人として大切な事は何か」という事を
考える事が出来て本当に良かったと思う。