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【連載小説】君の消えた日-二度の後悔と王朝の光-41話 交錯する思い4-人と屏風は直には立たず-

前話】 【最初から】 【目次

つばめヶ丘がおかの夏祭りに来ていた永遠とわしゅうは、幼馴染の眞白ましろから『俺のためを思って言わないでほしい』と打ち明けられていた。その時、すぐ近くで怨霊おんりょうの気配を感じて永遠は意識を研ぎ澄ました。
「眞白、神社の本殿ほんでんの裏って何があるか知ってる?」
「本殿の裏・・・確か分社ぶんしゃがあったんじゃないかな?」
柊の言葉にすかさず眞白が答えた。
「そこか・・・」とつぶやいて柊はスマートフォンを取り出すと、素早く画面をタップし通話を始めた。
「本部長、茅野です。つばめヶ丘神社周辺にて対象・・出現。ポイントはつばめヶ丘神社の分社だと思われます。急行し対処します」
柊は眞白に悟られないように怨霊のことは伏せながら通話を終了した。
「・・・仕事みたいだね。残念だけど俺は先に帰るよ。2人の邪魔になっても嫌だしね」
「ごめんね眞白・・・」
柊は申し訳なさそうにしたが、眞白は「気にしなくていいよ、仕事なんだし・・・また連絡するね」と言ってその場を後にした。
「永遠の怪我は万全じゃない。だからここに残ってて」
「有事に備えて、巡回中の警察と連携しておく必要があるだろ?それは3級の俺じゃ無理だ。柊がここに残って対応してくれ。分社には俺が行く」
「神官のわなの可能性もある。万全ではない永遠を1人で行かせるのは・・・」
(今の状況からすれば、何が一番良いかは一目瞭然だろ・・・)
柊が顔を歪ませる一方で、永遠は即断できない柊に苛立ちを覚えていた。
「状況把握は俺より優れているだろ?お前はちゃんと最善を分かってるはずだぞ、索冥・・
「永遠・・・?」
「――お2人とも探しましたよ」
聞き慣れた声がしたので振り向くと、黒い正服に身を包んだ澪が立っていた。
「澪さん・・・!」
「出現ポイントを絞ってはいましたが、まさかお2人がいらっしゃる場所だったとは・・・。間に合って良かったです。まもなく本部長と警察の増員も到着しますが、それまでの間、貴女には1級情報統制官として警察を統率して頂く必要があります、柊さん」
「それは永遠にも言われました」
「現場には俺が行きます。たちばなさん、俺に同行してもらえますか?俺の能力を知ってもらう良い機会ですし・・・ね?」
そう言って澪は柊の顔をのぞき込んだ。
「どこまで術を使うつもりですか?藍眼あいがんだけで倒すとしたら、あれ・・をお使いになるのでは?」
(あれ・・・?柊は澪さんの術を把握してるのか・・・?)
永遠は柊の言葉を聞いて、なぜ把握しているのか不思議に思った。
「今後、一緒の任務に入るなら俺の術を見て頂きたいと思っています。・・・許して頂けますか」
「分かりました・・・永遠をお願いします」
観念した様子で柊が答えた。
「ありがとうございます。では橘さん行きましょうか」
「――澪さん、よろしくお願いします」
永遠と澪はつばめヶ丘神社の分社に向けて走っていった。

永遠と澪がつばめヶ丘神社の分社に近づくと、怨霊の気配がより濃くなっていったので、永遠は朱槍しゅそう石突いしづきをポケットから取り出した。
「橘さんは怨霊の強さが色で判別できることを認識されていますか?」
「色?」
「怨霊は炎の色で強さを判別できます。黄・だいだい・赤・緑・青・紫・茶・黒。赤よりも青、青よりも黒に近い炎を宿した怨霊が強力です」
「そうすると、この間俺が倒した怨霊はまだ強さ的には真ん中ってことっすか・・・」
「特に紫・茶・黒、この三色の炎を宿した怨霊の強さは桁違いです。五麟ごりんであっても、1人で対峙たいじするのは危険が伴います」
澪の説明に、永遠は首をかしげた。
「え?でも、遠足で紫の炎の怨霊と遭遇した時、柊の攻撃を受けてふっ飛んでましたけど・・・?」
「ふっ飛ばした・・・ですか?それは雷刀で?」
「いや、雷刀を発動したのはその後っす。だから殴り飛ばしたのか、り飛ばしたのか・・・俺はその瞬間は見ていなくて」
「・・・橘さん、いくら柊さんが訓練をしているとは言え、高校生の筋力で上位ランクの怨霊をふっ飛ばすのは不可能です。戦闘の後、身体に反動が来ておりませんでしたか」
「そう言えば・・・しばらく体調崩していました」
「おそらく、無理矢理第二解放を使ったんでしょう。限定解除して雷針らいしんを使ったと考えればに落ちます」
澪が珍しく苛立いらだちの声を隠し切れていなかったので、永遠は澪の顔を覗き込んだ。
「澪さん、大丈夫っすか・・・?」
「どうしてもっと早く覚醒かくせいできなかったのかと、俺は悔しくてなりません・・・!遠足での第二解放、体育祭での治癒力の強制促進・・・あの方は生き急ぎすぎています。傍でお守りする人間が必要です」
分社の鳥居が見えて来たので、「橘さん、覚悟はいいですか」と澪が声を掛けた。参道にはすでに怨霊の気が充満していて、永遠は思わず腕で鼻を覆った。
「了解っす」
「きゃぁぁぁ!」
女性の叫び声が辺りに響き渡った後に、子供の泣く声がした。



【次話】42話 交錯する思い5-人と屏風は直には立たず-
※3/29(金)22:00頃更新予定



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碧木マチ
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